合意
* * *
ようやく血が止まった。
あとは治癒魔法で怪我を治す。
怪我は跡形もなく消えた。
だが意識のないケイの顔色は悪い。
かなりの量の出血のせいだろう。
クスナは、回復魔法を施す。
顔色の悪かったケイの顔に赤みが戻ったように感じた。
ほっとしたのもつかの間、ケイは息をしていなかった。
ぎょっとしてクスナは、うつ伏せのケイを揺さぶり名前を呼ぶ。
するとケイの目はぱちりと開いた。息を止めていたようだ。
ケイは、クスナの足をつかみ、勢いよく引っ張る。
仰向けに倒れたクスナの上にケイが覆いかぶさる。
「邪眼を僕にかけたのは褒めてやるよ。だがなんで逃げなかった? 合意と見なしていいんだよね?」
――なんで、そうなる!?
「僕、青〇なんて初めてだから興奮するなー」
ケイの手がクスナの服をを脱がそうとしている。
クスナは、ケイを見上げていた。
男とはいえきれいな顔つきだ。
さっきまで、その男の怪我を治すために口で毒を吸い出して、口の中が血の味がして……
毒の威力もあるのだろうか。
飲み込んではいないが、多少は吸収してしまったのだろう。口の粘膜がひりつくような感覚。
口内と鼻腔に広がるような血の味、甘いような、酸っぱいような……
――もしや、媚薬ってこういうもののことか?
以前、媚薬云々でファウをからかったことがある。
その時は媚薬なんて実在するわけがないとすら思っていたのに。
クスナは倒錯的な気分になっていた。
いくらきれいな顔でも、相手は男なのだ。男相手にこんな気持ちになるとは……
クスナは、そんな自分が急に怖くなった。
「待って、怖い…」
クスナは両腕で顔を覆う。
「ノンケなのはわかってたよ」
ケイはクスナの腕をそっと持ち上げる。
「大丈夫、優しくするから……」
クスナの顔を覗き込み笑顔でそんなことを囁く。
その笑顔にドキドキしたクスナは、いよいよ自分がおかしくなったと思った。
その途端、ケイは無表情になる。
「……なんて言うと思った?」
ケイの膝がクスナの鳩尾をめり込む。




