案外いいヤツ
* * *
神殿――
長老は、カースと対峙しつつ居心地悪いものを感じていた。
「ケイを刺したんだって?」
唐突にカースがそんなことを聞いてきたもんだから、長老はぎょっとした。
「強力な毒と呪いのかかったナイフで刺したんだって?」
「な、なぜ、知ってる?」
「そりゃ知ってるよ。俺も最高位だし」
「本当に最高位だったのか」
目の前のカースが最高位だと確信が持てると、長老の目の色が変わる。
なんとか取り入ろうと思ったのだ。
「まさか、あの時のナイフと同じもの、隠し持ってたりしてないだろうな」
と言いながら、カースは長老を睨みつける。
「ま、まさか、そんなはずないじゃないですか」
「……だよね」
カースはぷっと笑い出す。
「な、何がおかしいのでしょう?」
「いや、なんだかんだでこっちはそっちがそんな危険なものを持ってないのは承知してるんだ」
「な、なぜ?」
長老に言い知れぬ恐怖が浮かぶ。
「最高位は民を見守ってるものなんだよ。あのナイフも数年かけて呪いを込めたものだろう。簡単に二本も三本も作れるシロモノじゃないってはわかってるんだ」
長老はぞっとした。完全に見抜かれてる。
「しかし、ケイも心が広い。俺だったら俺を殺そうとしたヤツ、真っ先に始末するがね?」
その言葉に長老は震え上がる。
「賭けをしたんだって? ケイはその結果に納得して、覚悟を…… おっと、その話はいいや。俺はケイよりもお前よりも、ミン殿に興味が湧いてね。例えばミン殿の好きな食べ物とか聞いておこうか?」
その質問に長老は素直に答えた。
その他、好きな色、好きなアクセサリー、彼女が喜ぶこと、彼女が好きなタイプ、諸々答えていた。
色々聞きだしたカースは満足げだった。
「案外、お前さんはいいヤツなのかもしれないね」
カースは笑顔を浮かべていた。
カースにしてみれば、仲間を殺そうとした張本人なのだ。だがその殺されそうになった仲間は覚悟を決めたそうだし……




