有り得ない
「……ぐ」
クスナは咳き込んだ。
口から唾液か胃液かわからないが吐きだしていた。
唇から垂れる液体が、地面に落ちる感触。
ケイが指先でそのよだれをすくい取る。
「どういうこと?」
と、ケイの声。
「血を吐いた?」
ケイの指先には血がついていた。
咳き込んで唾液を吐いたと思ったが、唾液には先ほどのケイの血も混じっていた。
* * *
泉に入れずにいるキョウの、後ろにいつの間にかファウが立っていた。
「キョウ?」
――そうだよ。
と返事するが、ファウには聞こえていないようだった。
キョウの声が聞こえないのなら、目の前のロボットがキョウかどうかもわからないだろう。
だが予想に反し、ファウには環境維持ロボを操ってるキョウだとわかってるようだった。
「水を浄化していたの? 水を浄化するってどういう気持ち? 今度聞かせて」
ファウの言葉を聞きながら、キョウはそんな話もしたなと思い出す。
――水が怖くて、今は水に入れない。
キョウのそんなつぶやきも、ファウには聞こえていなかった。
近いうちに人間の姿の時にその話をしよう、とキョウは思った。
「今ね、導師様が謁見に行ってて、わざわざ指名されたみたいでなんか心配になってね」
ファウは謁見に行った舟が帰ってくるのを待ってるようだ。
それで謁見の舟にクスナも乗ってたのか、とキョウは納得した。
キョウも、ファウの傍らで待つことにした。
* * *
その時、ケイとクスナのすぐ横の地面がぼんと爆発のように弾けた。誰かの魔法攻撃だ。
「もうやめておけ」
現れたのは金髪の男。
「3人でしたいの? ロイ君、でも僕そういう趣味ないから」
と、ケイが金髪の男に言う。
「今はあんたの冗談に付き合う気分じゃないんだ」
ロイと呼ばれた男は怒っているようだ。
きっとケイを睨みつけている。
「さっさと離れろ」
ロイは強引に、ケイを立たせた。
「邪魔しに来たってわけ?」
ケイも怒り出す。
「そうだよ! 人として有り得なさすぎるだろ」
ロイも怒っている。




