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「そういえばユカナ、聖王国の勇者様とはずいぶん仲良くなられたみたいですけど、どうでした?」
「ん? どうって?」
「もう、言わせないでくださいよ。サディラス様、でしたっけ。とても美しい方じゃないですか」
「はーん?」
「…なんですの? その物凄い顔は。ユカナ、女の子なんですから、ちゃんと可愛い顔してくださいな」
「いいの、変顔しても優姉は可愛いって言ってくれるから」
「今のわざとだったんですの?」
「いや、素だけどさ」
お姫様もお年頃だしさ、そういう恋バナ系に興味を持つのはわかる。わかるし、確かにサディラスは顔はいい。綺麗と言えるくらい美形だ。
でもないわ。あんなドMのめんどくさいハーレム主人公はないわ。
「あいつはないわ。むしろあいつだけはないわ」
「えー、じゃあ、旅をした2人は? ずっと一緒だったんでしょう?」
「ないわー、もっとないわ。しかも片方既婚者だし」
「それもそうですわね。じゃあ、どんな方が好みなんですの?」
「えー…」
好みねぇ。少なくとも冒険中はそんな余裕全然なかった。
うーん、日本でも全然考えなかったしなぁ。まぁ、あえて言うなら、やっぱり優しくて、頼りになって、とかかな? あと私より背が高い方がいいよね。優姉くらいは最低限欲しい。うーん……うーん、というか、私恋とかするか? 優姉以上に誰かのこと好きになる自分が想像できない。
優姉って私にとって母というか、姉時々妹というか、私にとって、全てみたいなものだし。優姉より誰かを優先したりするなんて、考えられない。
「ユカナ、考えこみすぎですわ。まったく、好みの一つもないなんて、女の子としてありえませんわ」
「そりゃまた悪うござんした。そういうお姫様はどうなのさ」
まぁ、恋はするものじゃなくて落ちるもの、なんて言うしね。今は考えられなくても、そのうち落ちるでしょ。気にしない気にしない。
「わ、わたくしは、その……」
「んん? 人に聞いといて、自分も知りませーん、なんて通らんよ?」
赤くなるアリアベルに、こりゃ好きなやついるなと当たりをつけて私は笑いながら促してやる。
「その……騎士様が、素敵だなって、思うのです」
「んん?」
騎士、なんてのは数多くいる。だけど確か、アリアベルが騎士様、魔法使い様というのはそれぞれの部署でナンバーワンのイケメンくそ野郎だったはずだ。つまり私の骨をぼきぼき折ってたくそ野郎。
「えー…」
私が悪く言うと微妙に庇い腰だったのは、そう言うことか。いやまぁ、確かにイケメンではあるけど。
「な、なんですの、その反応は。いいじゃありませんの、騎士様は優しくて素敵で格好良くて、とにかく最高の騎士様なんですからっ」
「はいはい。で、告白しないの? 脈は?」
「……告白なんて無理ですわ。身分違いというほどではありませんけど、私から伝えたら、それは命令と同じですもの。それに……きっと騎士様は、ユカナのことが好きですわ」
「はぁ?」
なにそれ、どこ情報? てゆーか、ないから。まじでそれはないから。だというのにアリアベルはなんか寂しそうにしてるし。なんだよ全く。
「だって、先日、ユカナのことで私が泣いている時に、こう仰ったのです」
「なんて?」
「『そんなに泣かないでください。私まで泣きそうです』って。私が泣いているのを見ると、ユカナのことを思い出して辛いからですわ」
「いやー、どうかなそれは」
素直にとると、アリアベルのことが好きだろ。好きな相手が泣いてると辛い的な。
「そうに決まってますわ。ユカナが来てから彼と何度か話ができましたけど、どれもユカナについてですし」
「あー…」
単に共通の話題だからじゃね? でも思いこんでるのは直すの難しそうだし、まぁいいか。ほっとこう。
「気を落とすなよ。アリアベルも私に劣らず美少女だし、大丈夫大丈夫」
「ありがとうございます」
とりあえずこの話題はおしまいにしよう。
「そういやさ、あの二人って今どうしてんの?」
「二人ですか、ああ、旅の二人ですね」
○
「では……名残惜しいですが、そろそろ」
「そうだね。日があけるまえに出なきゃだから」
「……ユカナ、ありがとうございます」
「なにが?」
「全部です。私と友達になってくれて
、世界を救ってくれて、約束を守ってくれて、ありがとうございます。あなたの行く道が幸多く、希望に満ちていることを、お祈り申し上げますわ」
「ありがとう。アリアベルこそ、ありがとね、その、色々とさ」
「はい。では、また、お会いしましょう」
「うん、またね」
こうしてアリアベルと別れ、私はバルコニーから塀の向こうへとそっと飛び降りた。
よし、誰もいないな。早く帰
「ユカナ」
「……」
さて、誰もいないし早
「こら、無視をするんじゃない」
「……なんでいるんだよ、ハゲろ」
「久しぶりだというのに、相変わらず口の減らないやつだな」
騎士様ことハンサムくそ野郎がそこにはいた。なんだよこいつ、まさか本当に私のこと好きなんじゃないだろうな。しかも魔法使い様こと根暗嫌みくそ野郎もいるし。
「なに? まさか私のこと捕まえにきたわけ?」
「そうだ、と言いたいが、違う」
「ひひっ、チビが結界越えたのはこの俺くらいしかわかってないぞ。腕をあげたな、チビ」
「うるさいぞ、根暗」
どうやら私を捕まえる気ではないだが、なんだ?
「口の悪いガキだ。異世界人てのはみんなそうなのかねぇ。まぁいい。見逃してやる。今回はこいつがお前に用があるんだ」
「……なに?」
「いや、まぁ、用というほどではないが……よくやったな」
「それだけ? あんたまさか私のこと好きなの?」
「そんなわけないだろう。冗談はよせ。お前のように小さな女の子が魔王退治をするはめになったんだ。心配して当然だろうが。まぁあれだけ強くなったんだから、生きてるだろうとは思っていたがな。一応、顔を見ておこうかと思ってな。よく頑張ったな。偉いぞ」
「そりゃどうも」
師匠面すんなよ、と喉まででかかったけどやめておく。かわりに聞きたいことがあるし。
「見逃してくれるってことでいいんだよね?」
「ああ。これからのことは、我々の問題だ。これ以上ひとりの女の子に押し付けるわけにはいかない。自由になれ」
「そ、ところでついでに質問なんだけど、アリアベルのことどう思ってんの?」
「は、はぁっ!? な、なにを、なにを言ってるんだ貴様は!?」
「……ロリコンかよ」
「し、失礼なことをいうな! 姫様はお前よりおおき、ま、まぁそれはともかく、あー、その、なんだ。そもそもだな、一介の騎士が姫様をどう思うかなんて恐れ多い。変なことを聞くんじゃない」
「あっそ、ちなみに姫様、あんたに気があるよ」
「はっ……おっ、おい! 本当か!? 嘘だったら許さんぞ!?」
「本当だよ」
「そうか……」
きめぇ。まぁ、確かに? アリアベルは人形のように整った顔だ。そして久しぶりのアリアベルは背も伸びて体つきもぼんきゅっぼんに近づいてきてる。うーむ、むかつくな。
よし、もうこれくらいでいいか。魔法陣のお礼はこのくらいで十分だろ。
「じゃ、私はこれでもう行くよ。アリアベルのことよろしく。泣かしたら殺すから」
はー、私ってばキューピットまでしちゃって、まじ天使だわー。
○




