9話 『仲間になってくださいますか?』
「あんまり人前でそんな隠しもせずに『はあ』って顔するのはよくないよ、折角集まってくれたんだからさ」
「いやこの人たちも皆俺のこと変だのおかしいだのイカれてるだのどうかしてるだの言う気がして」
「まあ変だしね」
ルマが言った。
「安心しろ。君は普通じゃない」
こないだの長身の男が言った。
「あたしもイカれてると思う」
さっきの車輪のちびっこが言った。
「一言目がソレってのはおかしいんじゃない?」
青いマント? ローブ? を羽織った三つ編みの人が言う。
「僭越ながら私も貴方はどうかしていると思います!」
制服の高校生くらいのポニテが言った。
なんか酷くない?
「……どこがだよ」
「性格かな」
「デザインナイフであそこまでやるのが普通とでも」
「適応力バカ」
「持ち腐れ」
「精神性です!」
なんかあの男の人が優しく見えてきた。まっとうな指摘。そんで初対面にこっぴどく言う後半は許さん。なんかおかしくない? 意味分かんないもん。適応力バカはギリ合理性はあるけど持ち腐れって何? あと性根を2人に否定された。
おかしい。
「……もういいよ。俺は八木有城、高一。特徴なし。入団は希望しない、以上」
「ねえ入団しないって言うなら私名乗らなくていいの?」
「私も名乗る必要がなくなります?」
「んーーーー」
どうやらルマは納得いかないらしい。気に入ったとか言っていたし入ってほしかったのだろうが、なんかもうアホらしい。皆酷いこと言うし。
だがそれだけじゃなかった。
「あれ? あたしもまだ名乗ってない」
「ああ、俺もか」
「いやー名乗ってんの一人だけかあああ」
なんでそこ残念なのかはちょっと良く分からなかった。
必死にセールスしてくるルマ。
「あのね! 言ったって活動はそんなしないよ? 楽チンだよ??」
「じゃあ俺入る必要なくないすか」
「なっ、あと雑敬語やめて距離おかれると傷つくよ」
なんかヤダ。ここ入りたくない。
「い、いやでもでも! しないって言っても全くしないわけじゃないし! やりがいもあるよ!」
「どんな」
「それは……自分で見つけていただくスタイルでしてぇ」
あわあわしている。ものすごくあわあわしていて冷や汗の描画が出てる。そんなのあったんだ。あと口が「 v 」だった。意外とパターンはあるみたいだ。
そこで『ポニテ』が言った。
「結局まだ片足すら突っ込んでないんですし、引き留める必要もないのでは?」
「いやでも」
そんで急に『三つ編み』がこっちをチラッと見て聞き捨てならないことを言った。
「ほら、あの切り傷だらけの子の仕返しする勇気もないみたいだし」
「は?」
切り傷だらけで俺と関係あるのは多分純恋のことなんだろうが、なぜそうなる? 純恋をああしたヤツはそこの長身の人と戦ってたはずだ。もうどうにかなったはずだ。いや。
「バカ敢えて俺が言わなかったことを……」
「ん? ダメだったかな……」
そもそも長身の人は、相手を倒したなんて一言も言っていない。俺が勝手にそうだと満足していただけ。なんとなく、『ポニテ』と『三つ編み』に罵倒するに値する人間と判断された理由は理解した。
なんで隠していたのかは大体察しはつくが後で聞いてみるとして、ただ訂正させていただきたい。
「……ある」
「ふむ?」
興味深そうに顎に手を当てる『三つ編み』に、威勢よく吠える。
「俺にだって、やり返すだけの勇気ならある!」
そう言うと『三つ編み』は、にっと口角を上げて続けようと口を開いた。そして気づいた。
「じゃあ入ってくれるのかな?」
なんともまんまと嵌められた。もういいのだが、なんか気に食わない。
「まあ。一応」
ルマの画面が満面は不可能だがすごいニコニコしているのは伝わった。目があれ固定なのどうにかなんないのかな。
「よし。なら、まあ一気に話すのは面倒だし、君から好きな順に話しかけていって」
無茶振りー。
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特にこれと言った理由はないのだが、三つ編みの人に話しかけてみる。落ち着いた感じの人だ。クマがあったり肌が青白かったりするわけではないのだが、何か疲れたような雰囲気を纏っている。
「ん? あー私からなの? 変だね」
「また変って……」
この人達優しくない。人が嫌がっていることくらい把握すべきでは。痛い。
「そんなのはどうでも良くて。私はほら、『Ⅱ』のヨハンナね。よろしく」
どうでも良くはない。『Ⅱ』ってなに。長身の人は『Ⅴ』だったしどういう意味なんだか。
「ほら、次行きなよ。私と話してもそんなに楽しくないでしょ」
「え」
しっしっ、と追いやられた。
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次はなんかめちゃくちゃ見てくるポニテに話しかけた。
「お次は私ですね! えっと、番号もですか? 『Ⅷ』のフォルツァです! よろしくお願いします!」
「よろしく。っていうかその番号ってなんなの?」
「ウェイト式タロットです! アルカナって言うべきでしょうか。皆本名じゃないですよ? 説明されてないんですか?」
ルマを見やる。
「……えへ?」
「おい」
適当すぎる。多分大事でしょこれ。服がローブやマント多いのそういうこと? なんか変なアイテムつけてんのってウェイト式のに則ってたわけか。あー。
「いやあ私って適当なところあるからさ」
雑。ただ、堂々とブレザーにチェック柄のスカートで白のワイシャツにリボン装備はタロットにもない。おそらく強制ではないのだろう。Ⅷって『力』だよな。小柄でそういう風には見えない。
「まあ私の紹介は済みましたし、一旦残りのお二人に話しかけてみてください」
「はいよー」
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長身の人。もう少しは話しているので話はしやすい。
「身体の調子は?」
「普通ですね」
「そりゃ良かった。まあ知ってるとは思うが『Ⅴ』のルパップだ。変な名前だが覚えやすいだろ?」
確かに、これが本名だったら日本語ペラペラなのも少し違和感はある。
「さっき倒したわけじゃないのを隠していたのについては君が知ったらこっち側に入ってしまうと思って伏せていたんだ。悪いね」
「それくらいはいいですよ」
あと一人かー。
「あまり善良な組織ではないし、まあ色々と君がいるべき場所じゃないと思ったんだが……」
「何か言いましたか?」
「聞いていないならいいんだ。ただウチに過度な期待はしない方がいい。ヒーローじゃないことだけは把握しておいてくれ」
「……?」
こちらが「はて?」といった顔を浮かべると苦笑いするルパップだったが、つまりどういうことだろう。
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「あたしは『Ⅹ』のロタな。フォルトゥナあたりでも良かったけどフォルツァと似てるし最終的にロタになった。よろー」
「よろしく」
何言ってるか分かんない。
「知ってるか? ルマって正しくはルマットが正式なんだ。こっちのがかわいいってルマにしてたけど」
へー。でルマットって何。再びルマを見やる。
「あー私? 『0』のルマね。『愚者』だからフランス語では『ル・マット』が正しいはず」
なるほどねー皆別言語でアルカナを言い換えてるのか。ほへー。道理で愉快な名前の人もいたわけだ。そういえば確かに、ラテン語で『運命の輪』は『ロタ・フォルトゥーナエ』だったはず。ラテン語は少しかじったことがある。
「あれ? じゃあ俺は?」
「保留。コードは『アルキ』ね」
純恋が関係したわけではないのにまたアルキと呼ばれるらしい。山羊とか何とかこの間言っていたのは何だったのか。いいのだが、もう。




