3話 『籠の中の鳥は、囚われたからそこにいる』
「はい? 言ってる意味が理解できないんだけど」
「いやいや、こっちだって好きでやってるわけじゃないんだって。消去法? まあ君にとっていい状況とこちらにとっていい状況の折衷案? っていうかさー。文句あんの」
コイツふざけた顔してるわりにテンション低いな。学校の時より明らかに面倒そうだ。今口は~だった。
「いや文句しかない」
はああああと背もたれにガタっともたれかかり大きなため息をつくソイツ。めちゃくちゃだ。
「じゃあなに? なんか案出してくんない? こっちはざっぱに三択だったんだけどさ、君を消すか、放置するか、引き込むかーって」
「いや消すって何ですか怖いんですけど」
物騒なことを平気で言うやつは大抵少しは下っ端よりは上の立ち位置にいる、と例のオタクも言っていた。なんならこんなへんてこな格好しておいて下っ端だったらそれはそれで怖い。
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よくよく見るとコイツは意外と肌がきれいだったり、髪の発色がキレイだったりする。例えは少しいかがかと思うが、平麺みたいな房で、ひねれたりうねったりしているがどうなっているんだろう。
「何じろじろ見てんだよ」
「てか青っ」
髪真っ青。明るめの青いパーカーに濃紺のスウェットパンツに、うっすい水色のワイシャツ。全体的に青。既視感がある。
「言っとくけど自分で選んだんじゃないぞ。文句あるなら井槌に言ってくれ」
目元は固定らしい。永遠に描画が変わらない。口だけ尖っていた。
「あーてかどこかで見たなと思ったら」
「はあ?」
怪訝な声を漏らす。そりゃそうだ。向こうが覚えてるはずない。
「学校で一度会う前にぶつかってきた青い塊だ」
「え? あーあの時か」
そう、一度ものすごい速度で青い塊が目の前を通り過ぎ……ずにさらっと肩をぶつけて体当たりをかましそのままどこかへ消えていった変なのがいた気がする。
「急いでたし」
「いや謝れよ」
「……」
そう言うと顔を俯かせる少女。マズい。つい反射的に反応してしまった。ぶっとばされかねない。まだ死ねない。こんなんで。
「あ、いや、今のはつい……」
慌ててフォローというかなんというか、自己保身に走る。訂正しようと試みる。
「ねえ」
「はい?」
嫌な予感。
「君やっぱり変だね! ちょっと気に入ったわー!」
「はい??」
「いやさあ? やっぱり仲良くするなら変な奴とがいいじゃん? 普通の人間はつまんないっていうかさあ! わかる?」
「いやわかんないっす」
「えー分かんない? いやまそこはどっちでもいいけどさ!」
何コイツ急に元気だな。珍しくパネルに紅潮した頬が描写されているのを見るに、トラッキングで表情が映されているならこいつは本気で興奮している。変人が大好きらしい。正直率直な感想は「お眼鏡にかないたくなかった」。テロリストに口を利くのは常人じゃないらしい。
「あーそだそだ! 名前もまだ教えてなかったっけ? んー、まあルマでやってるからよろ! そっちは?」
「八木有城」
「じゃ君今日から山羊ね」
「ていうかなんで所属確定してんすか。テロリストになりたくなんてないんですけど」
ていうか「今日から君山羊ね」はパワーワードに過ぎないだろうか。
「あーいや。まあ若干テロじみたことはやってるっちゃやってr……。おっほん。言ってないっけ。あれ爆破したの教団だしああいう爆破―とかはやんないよ?」
テロじみたことはやってるんだな。言いかけた言葉を懐にしまっておく。
「……あれ爆破したのあんたらじゃなかったんですか」
「いやまあ状況証拠からそう思われても文句ないんだけどさ。そもそも何? やっぱり口止めかなんかだと思ってたの? 心外だなー」
「普通そう思うでしょ」
そう言い返すとやけに楽しそうな笑い声をあげて尤もなことを言い返してきた。
「いや、それでも実質テロリストみたいな連中なのに急に気を少し緩めてるよね。やっぱ変だねえ君さーあははッ!」
「げっ、そういえば」
するとまたもや愉快そうに笑うルマ。
「言ってもあんまし変わってないじゃんか! あははははッ!」
何なんだろう。わりとコイツと話していても緊張しないというか、イカれているが危険じゃなさそうで、しかも随分と楽しそうにしゃべり続けるものだから、少し気が緩むというか、まあ流石に完全に気を許すほど馬鹿ではないのだが、そんなことを考えているとルマが猫口になっていることに気づく。
めちゃくちゃニヤニヤされている気がする。それとその目と組み合わせているとふざけているようにしか見えない。「てへぺろ」とかそっち系の。
「なんなんすか」
「いやいやあなんでもないよ? そんで? 入ってくれる気はあるのかな? 聯合に」
「いやです」
そういうとまたまた愉快そうに背をそらして笑う。
「君空気読もうよー! ほら、お試し的なのでいいから! ね?」
「ねって言われても。大体お試しとか意味が」
「気に入っちゃたしさー。ていうかまあほら、うちらのお仲間と会ってみてからでも遅くないんじゃん? そんくらいは考えてくれても」
「やです」
絶対ヤダ。会ったらたぶん、断りたいなと思ってもそこまで知ったら引けない気がする。それに急に日常を捨てろと言われても、イマドキどう活動するのやら。
「君も譲らないねー。かわいい子もいっぱいいるのに。主に私とか」
「あんたじゃねえか」
「バレた? いやでも全体的に水準高めだよ? みんなの見た目」
「そんなんで……」
そんなんで譲れるわけあるかと言おうとする。まあ実のところ、多少揺れてはいたのだが、リスクが見合わない。
しかし遮ってルマはこう言った。
「いやねー。なんでかは知らないけど君の入団を猛烈に支持してくる子がいて、まあちょっと押されちゃってこういう状況に至ったんだけどさ、まあ私も君のことは気に入ったしぜひぜひうぇーるかあむだけど? お給金も高めだよ?」
なんでその人は俺如きの入団をそんなに推したのだろう。大した特技も特徴もなかったはずだが。
「二人推してきて~。片方は君が何やら優秀だとかなんだとかで~」
心外だ。そんな訳ないのにこんなことに巻き込まないでいただきたい。誰かとお間違えではないだろうか。
「そんで~、もう片方は君を知っているとか何とかでっでっでっ掴むなよな人が話してるときにー」
「誰だよ!」
「ゆーすーるーなー」
知っている? なぜ? 誰が? そもそもこんなところに居そうなやつに会った覚えも、覚えられるようなこともした覚えはない。それこそ人違いだと思う。
「はーなーせー」
会話多めの回はこれからも偶にあります




