2話 『アンハッピー・ウィズ・ディス・フォーチュン』
バリアなどと言っていたが実際のところ吹っ飛んだしゴロゴロ転がって痛い。しかもなぜかこのロリの方がダメージが少ないようだ。
「大丈夫?」
「まあ一応。痛いけど」
「よかったね」
よかったねも何もないのだが。とりあえず離れていただきたいなと思っていると、「うおいしょっと」といいながら少女は立ち上がった。
「んじゃね。また今度」
そう言うとその少女は軽快なステップで、廊下の反対側まで結構な勢いで吹っ飛んだというのにピンピンで、わざわざ爆破された教室跡の方から外へ出ていった。
よくわからないが、とりあえずシェルターに行こうかと考え歩みを進める。そこでふと気づく。
「……また今度?」
◆┃◆┃◆┃◆
いやまあ、深い意味はないのだろうが、何か嫌な縁を感じた気がする。本当にそのうち会いそうな予感。
そんなことを考えつつ、シェルターまで気づけば到着していた。
「兎は月より出でるかな」
確か今日の共通認証ID、まあ砕いて言えば合言葉はこれで合っていたはずだ。生命体証明キーでも問題はないに等しいが、盗難や紛失の可能性を考慮して合言葉なのだ。あとは学生IDの照合を済ませれば、
「よし、開いた開いた」
カツカツカツと無機質な階段を下りる。全体的に白だが、各所に電光掲示板がはりつけてあり、外の情報が分かるようになっている。とはいえ人影は少ない。まだ点呼でもしているのだろう。
地下4階の左手側の3番目の扉をノックする。
「学籍番号と氏名は?」
「S270044、八木有城ですが」
「オーケー。少し待て」
ふと視界に入った掲示板には、《第3棟校舎の理科準備室が、何者かの手によって爆破された》とあった。その辺りが「何者か」のままである限り、結局完全なる犯罪対策は未だ確立されていないことを思い知る。
「入れ」
「はーい」
その後、点呼ややけに遅かった原因を問い質されたりしたが、当然シラを切った。先生は好きじゃない。それと爆破現場にいたなんて言っても面倒だ。しばらくしてようやく解放された。
避難場所に関しては、実は厳密にどことは指定されていない。どこに避難しようが避難できればそれでいい。もっとも安全とされるのが地下シェルターとされてはいるが、現に純恋のように従わない者もいる。
そういえば純恋はどうしているのだろうか。
「おや? あるきセンパイでは?」
「お。ちょうどお前のこと考えてたんだけど丁度よかった」
「へ? やや、さすがに直球は照れますがねー」
語弊だ。
「いやそういう意味じゃ」
「どっちでもいいですけどね。それでなんでしょう?」
慌てて訂正しようとしたこっちが馬鹿みたいにあっさりスルーされた。むなしい。
「ああ、あの時はぐれた後どうしてたんだ?」
「それ知ってどうするんですか? よく分かんないですけど」
「特に何もなかったならいいんだけど」
あのロリっ子と遭遇してるかなと思ったんだが特に何もなかったみたいだ。ひとまず一息。
そしてまた、何の前触れもなく喧しい音が響いた。
《敷地内の安全は確保されました。繰り返します。敷地内の安全は確保されました。シェルターは1時間後に閉鎖しますので、それまでに退出してください》
結局何だったんだ?
何かが不自然で胸の奥につっかえた。
◆┃◆┃◆┃◆
翌日以降は、あっという間に爆破の被害を受けた所は修理され、何事もなかったかのように日々がだらだらと流れた。一つ変わったことといえば、前にも増して純恋が絡んでくるようになった。
まただらだらと学校を終え、帰路に着く。
いつも通り、実はカメラの少ない通りを通っていると……。
これがまた想定外。忘れたころにやってくる。
「おや? キミ一緒に爆発した子だよね? おひさー」
ここでとる選択肢は二つ。
①誤魔化す
②親しげに絡む
①は通用するか怪しい。余計にしつこくなっては元も子もない。②は最近純恋に影響されてきたと思うと複雑な心境だが、顔も見せない相手にとるのは難しい策だ。感触がつかめないから。
無視して通り過ぎることにした。これ一番。大切。
「……」
「いや待ちなよ」
因みに無視しても止められたなら連行確定コースと、なぜそんなことを知っているのかわからないが旧友の山岸が言っていた気がする。抜けてるオタクだと思ってたけどごめん。お前天才だよ。機械系強いしさ。
「お詫びっていうか弁明、いや訂正? まあ話があるからついてきなよ」
「……はぃ」
テロリストの言うことに逆らえるわけ。
◆┃◆┃◆┃◆
なぜかファミレスに居ます。どゆこと。
「なんか頼まないの?」
「あ、金持ってきてないんで」
「へえ」
何なのその反応。怖いって。てかその目ホントにやめてくんないかな。頬杖ついて不満げな声出しときながらその顔なのシュールだから。
「あれ? ていうかそのパネル普段でも使ってる、っていうか着けてるんですか?」
「ん? まあ一人の時以外はつけてるねえ。身元が分からないようにと思ってたんだけど、ま結局これはこれで目立っちゃうしさ。アホらしい」
じゃあなんで着けてるんだよ! という言葉は吞み込んだ。しばらく特に会話もなく、ただただじーっと見つめられていた。なに。怖いって。
そしたら急にソイツはこう質問した。
「ていうかあ。キミはっきり言えばあれ。あの時爆破したの私だと思ってんでしょ」
「ぇ」
はっきりも何も突然ぶっこんでくるもんだから多分顔に出たのだろう。口の表示が「^」になっていた。
「ふうん。んで?」
「で、とは……?」
「チッ」
「え? 今舌打ちしま」
「面白くないなあ一般人かよ」
いやそんなこと言われても一般人ですもの。舌打ち急にされても。
「そもそもお話っていうわりには特に話されてないんですけど」
「あーそうだったね。つまんないから忘れてたわ」
思い出したような口ぶりでそう言ったがつまんないって。人止めておいて。何この人。
「ようこそ『マヒルレンゴウ』へー。キミも今日から共犯者だ」
さして興味もなさそうに、あからさまな棒読みっぷりで意味の分からない妄言をソイツは吐いた。




