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PSIバー×パンク×マッドタウン  作者: あるけー
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1話 『青との邂逅』

 「おはようございマス。八木(やぎ)サマ、起床時刻デス」

 いつもと変わらない雨の日の朝、無機質な真っ白の部屋で、近くに居る犬型ロボットが機械的な音声を発し目を覚ます。

 「おはよ、ハチ」

 「エエ。本日の受講内容を確認いたしマスカ?」

 「いや、いいよ。覚えてるし」

 「左様デ」

 手術しているわけでも病人でもないのだが、手術衣にも似た白い服を着たまま、洗面所に向かう。いつも通りだった。


 さすがにそろそろ変だと思ったかもしれない。そう、今の時代、科学技術は遥かな高みに到達していた。

 比較的技術の発展の遅い日本でもこの通りなのだ。欧米においてはタイムマシーンなんぞ出来てしまったらしい。俺はどうせ、「一秒経つと一秒先へ連れて行ってくれる! まさに地球こそタイムマシーンなんだー!」とかその辺だろうと踏んでいるが、滅多なことは考えすぎても、口に出しても問題になる。

 とりあえず、白一色に染まったこの部屋は、『居住区(タウン)』、まあその名の通りだ。政府が区分した人間の住む場所。どの部屋も大差ないらしい。申請すれば家具等も増やせるらしいが今はこれで十分だと思う。

 それで、この犬公、ハチ(俺が命名した。それぞれ好きな動物の見た目に初期設定でできるし、命名もさせられる)は、一人一つ、一匹と呼んだ方がいいのか、とにかく物心ついたときに渡されるAI、『PAA』、正式名称『Person Assist Animals』通称『パー』。物心ついてすぐなんだ、そんな細かい動物に設定している人はそう多くない。ちなみに今までで一番珍しいと思ったのはオニイトマキエイだ。よく思いつくな。

 あまり他人を否定しかねないことを考えすぎると面倒ごとになるかもしれない。『居住区』では常にカメラによって監視され、警察、とはいってもほとんど発展した防犯システムなどに仕事を奪われ形骸化しているが一応警察の管理下にあるAIに表情や行動から思考をある程度読まれてしまう。怪しければ警戒、危なければなんかやばいことになるらしい。AIに媚びて生きていくなんて馬鹿みたいだとは思うがこういうことも国家謀反だの国際法だので取り沙汰されるのはごめんだ。


 とにかくこういうことをしている間に、着替えも終わったし、支度もできた。流石に一切の外出なしは健康被害が大きいとお偉いさんたちも踏んだらしい。片眼鏡型の『PAAPU』、正式名称『Person Assist Animals-Portable Unit』これまた通称は適当で『パープ』、をグラスコートを耳にかけて身に着ける。そしてドアに生命体証明キーを翳し外に出る。

 「いってらっしゃいマセ。八木サマ」

 「いってきまー」


 高いビル群や無機質な『居住区』ばかり立ち並ぶ通学路をのんびり歩く。しかし、至る所にあるようにしか見えない監視の目の中でどう安心して歩けと。変な気さえ起こさなければどうということもないのだが……。落ち着くわけもなく。まだ慣れない。

 と、前を高速で何かが横切ろうとした。青い何か、が。

 「うわっ!」

 なんか軽くぶつかっていったのだが、止まることなくソレはどこかへ消えてしまった。

 「なんだよ……」

 この時間帯は、というかこの道はあまり人もいないはずなんだが、珍しくはない。というかほんとに何だったんだ。そもそも人なのか?


 ◆┃◆┃◆┃◆


 到着。別に何か変わったこともあるわけではない。普通だ。

 「どうしたんですか? あるきセンパイ」

 「ユウキだ。わざとやってるな、中西」

 八木有城(ゆうき)という名前を『有城』を『あるき』と呼ぶのは見るのは二度目の後輩の姿だった。

 茶髪のそこそこ長い髪を、お下げのツインテールにした一つ年下の後輩。中西純恋(すみれ)だ。

 「私の名前を覚えていただけるとは。えへへ。私そこまで頑張ってないんですけど」

 少しえへへと口許を綻ばせる中西を見やるも、そりゃあ人の名前を特殊な間違え方してしかも自分は分かりやすい名前なのだから覚えるのも無理はないと思っていた。

 「というか、これで私を見るのは二度目とか思ってますか?」

 突然意味深な質問を投げ掛ける純恋。

 「どういう意味……」

 そのときだった。

 ウーウーウー! と警報が鳴り響く。それに反応してあちこちから悲鳴が聞こえてきた。ここは学校だ。突如警報が鳴ったら多くの子供はパニックを起こしても仕方がない。

 「なっ、何が起きてるんだ?」

 「もう! こういう時はそんなのいいから着いてきてください! 普通に避難でしょう!」

 ムッとした顔をして腕を引っ張り走り出す純恋。とりあえずやけに落ち着いたその背を追いかけながら。

 「早く着いてきてください!」

 「待て待てどこに行く気だ」

 「AIによると、皆さんは地下シェルターへの移動を促されているみたいです」

 普通ならここは地下シェルターに行くべきなのだろう。俺もそう思う。でもなんとなくわかる。コイツは違う道を選ぶ。大した理由があるわけでもなく。直感的にそう感じたのだが、期待するだけしてみようと思う。

 「じゃあここは普通に……」

 「裏山のぽんぽこですね」

 「いやどこだよそのファンシーな名前した場所」

 「冗談です。そもそもうち裏山なんてないですし。でもどうしましょうか」

 冗談を言ってる余裕すら中西純恋にはおありのようだ。しかし、地震や火災くらいはAIが予測してどうにかしてしまうはずだ。そういえばさっきから周りのAIがやけにうるさくシェルターへの避難を勧めているが、ん?

 「どうしましたか?」

 「いやハチがびくともしないなって思って」

 「それヤバいんじゃ……わっ。ちょ、落ち着ぃ……」

 突如急に増えた人混みに吞まれ頼みの綱は流されていく。というか足を引っ張っていたようにしか感じないのだが。


 ◆┃◆┃◆┃◆


 「ここはどうだ」

 つい先刻純恋とはぐれてから、絶賛純恋を捜索中だった。放置して今生の別れとかは御免だ。なんというか、寝覚めが悪い。普通の人間ならシェルターに向かうのだろうが、純恋は普通じゃないらしい。

 「ここにもいないっと。次―」

 純恋の影響か、人がいない影響か、はたまたハチがアラートを騒ぎ立てないおかげか、気分はやけに落ち着いていた。次の場所へ向かおうと、理科準備室の扉を出ようとした。

 「おや?」

 なんかいた。どこかでみたような青いのが。

 「うんにゃ、君どこかで見たかな?」

 「きき、気のせいでは?」

 お面のような形をした液晶パネルを顔に着け、口だけ感情に伴って動くが目元は(> O₀)で固定された変な奴(推定ロリ)と会った覚えはないが、どこかで見た気がする。

 「じーっとみつめるーっ」

 「はあ……?」

 めっちゃ見つめてきた。そしてそこからはなんかもう意味不明だった。突然だったし。

 「やべっ! バリアー!」

 なんてことを言いながらふわっと抱き着かれ、ソイツの後方にあった物理実験室が爆発したのはすぐ後のことだった。

O₀の右下の奴は涙です。突然のAAアスキーアート

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