14話 『星の輝き』
「あわっ、わっわっ、……」
さっきから爆発が多い。ここは四階なんだ、下が揺れるとかなり揺れる。足元がふらつく。
「タウルスが爆弾落としたらどうするんですかね。これ手伝いに行った方がいいですかね」
正直。この場で爆弾をどうにかする方法はあるが、あまりやりたくない。かといってアルキを放置するのも問題だ。シュテルンはどうでもいい。アレは手遅れだ。少なくともタウルスには。
「とりあえず、星が死んだらアルキも死ぬ。だからタウルスは行くことにします」
しぶしぶ、ゆっくり階段を下りる。アルキのサポートとエレミティスの排除のために。
◆┃◆┃◆┃◆
「まさか忘れてないだろうな? 私のは認識阻害だよ。爆風がちょっと掠る程度どうということは」
「ここっ!」
あらぬ方向へ指を構えるシュテルン。「バースト」とまた唱える。
「……なっ」
「流石に当たりはしただろ? ッ。ごほっ。計算は得意なんだ」
なんで当たった? そう考えていると、所々スーツの焦げたエレミティスが煙の中から現れた。
「あっついなあ。なんで当たった?」
ははっとシュテルンが笑った。随分と自信があるらしい。「教えてやらない」と舌を出す。もう一度、バーストを撃つ。今度は当たらなかった。
「まぐれか。まあいいさ。私はチキンだから、精々安全にやらせてもらおう」
カツカツ、と立体感のない、どこからきているかわからない足音が遠ざかっていくのを感じた。目の前のエレミティスはその場に残っているが、認識阻害というより幻影だ。
「20mがあの幻影の射程、まだ近くにはいる。幻影が消えたら連絡、それまではあたりを探してくる。分かった?」
「ああ」
何かあったら呼べ、と言われているが、たぶん何も……
「あ。アルキ君。タウルスです。エレミティスはどこでしょうか?」
何でここにいるんだ?
◆┃◆┃◆┃◆
「ジジイ! そろそろ出なきゃ間に合わねえ。最終調整まだか?」
「30秒」
「長い」
カツカツカツとブーツの踵を床に叩きつける。余裕はない。
「新入りの面倒を見るだけで、んな面倒ごとを拾うたあ困った新入りだぜ。ったく」
どうやら、30秒経ったらしい。
「クランチ整備終…」
「飛ばすぞ」
ヘルメットを被り、ラムジエットエンジンとロケットブースタを主な推力に用いた、オートバイにも似たそれを起動した。
◆┃◆┃◆┃◆
なんでここにタウルスがいる。というか今上から降りてきたよな。なぜ?
「ああ、失礼。覚えていらっしゃらないならもう一度挨拶を……」
「いやいい! いいから! そうじゃなく……」
煮えきらない返事になる。正直この人? この子? のことが微塵も分かっていない。やけに子供っぽい声だが相変わらす顔が見えないせいであまり気を許せないところはある。
「そうじゃなく、なんですか?」
ヒドイ。まあそうなる可能性は理解してた。まあ正直に答えるしかないか。嘘ついて怪しまれるよりは。
「いや。タウルスが(なんでここにいるのか)分かんないなって」
「……!!」
切り取り方ミスったかもしんない。変なスイッチ押した多分っぽいぞコレ。
──タウルスのからだからなぞのやるきがにじみでている!
あーあ。
「タウルスは5月3日生まれ15歳で牡牛座好きな料理は甘めの卵焼き好きな食材はレタス嫌いな料理は酸っぱい系全般でも酸っぱいポテチは大好きですあと嫌いな食材はトマトあの皮の食感がいやです味はいけますあとラム肉は少し苦手で………………………。他にも色々教えられま……アレいつの間にやらいつものテンションになってしまっていますねー、ちょっとお待ちくださーいビジネスに戻りますのでー」
長かった。情報量多すぎてパンクしそう。脳内が。やられる。ていうか途中から一人称私になってたよな。タウルスもやっぱり本名じゃないんだな。そんで思っていたより感情を表に出せるタイプの人間で驚いた。
歳は同じだが、今は7月末だ、一つ学年は下らしい。
それに、全然初めて見たような気がしないというか、なぜだろう。何度も会った気がする。聯合の食堂で会ったのが初めてではないような、そんな懐かしさというには新しい感じがした
しかし白髪の少女を今まで見た覚えはないのだが、どうしてなんだろう。
「s……コホン。アルキ君。それよりもエレミティスの場所をご存じありませんか? このタウルスに教えていただきたく……」
ドゴォォオン! と一際大きな爆発音と、それに付随して大きな揺れが起こった。一応ここはまだ動いているスーパーだということをアイツらは分かっているのだろうか。廃ビルならまだしも。
「いえ。やはりまだここにいるみたいですね。まだそこの置物も消えていませんし」
エレミティスの幻像を指さして言う。効果範囲内にはいるということなのだろう。このレベルの爆発を無意味に起こすことはない、とすれば恐らくは。
「タウルスも増援に向かいます。アレの相手は少々大変なので」
溜め息交じりにそういう。そしてそれに賛同した。
「了解」
しかし。
「いえ、アルキ君は適合者ではありますが座に居ないので今ただの無能です。居ると邪魔なのでしばらく離れていてください」
「なっ」
「では」
ととととと、と階段を駆け下りていく音が、一人置き去りにしていった。
少しして、これまで以上にバカでかい轟音が響いた。
◆┃◆┃◆┃◆
――少し前
「まあどうせ何も起きないだろうけど一応急ぐか」
アルキと別れて、何となく、そこに居る気がして一階の真ん中あたりに来た。エスカレーターに挟まれた、上階まで抜けているため天井が高い。そこそこ広いし、居なくともおびき出せはするだろう。
臆病者を自称するが、アイツは享楽主義だ。どうせすぐ襲い掛かってくるだろう。後ろに軽く跳ねてみた。
「ほいっと」
「やはり、読まれるものか」
上から降ってきたのは想定外だが、避けやすくて何より。そのまま後ろに足をつき、バネを使ってバク宙をきめこみ距離を取る。身軽なのは意外と助かるものだ。
「2nd、バースト」
当たったか?
まあそうなる訳もなく。煙の中から忌々しい人影が現れた。
「本体じゃないって。一つしか幻は作れないなんて言った覚えはないな」
「だろうな」
開けた場所は身を隠すものがない。後ろに距離を取りつつ、バーストを乱れ撃ちした。
「無詠唱じゃあ当たっても大して効かないんだよ。当たってないけどね」
「チッ」
無詠唱はすぐ撃てるが威力は元と比べるとお粗末だ。照明がまたいくつか消える。思ったようにはいかないものだ。
まだ撃っていないところに無詠唱を乱れ撃ちし続ける。
「だから当たらないと言ってるだろう? 施設をやたらめったら破壊しないでほしいな」
「いいやぁ? やたらめったらじゃない」
照明は後方にあと一つだけ。躊躇なく破壊した。施設の修理費は全額『秩序の翼』に回そう。
「……何がしたいのかな」
苛立った様子でそう言ったエレミティスに嘲笑を向ける。やはり知らなかったみたいだ。
「あはっ、あはははっ! 『救いのない夜闇に輝きを。終わりない日々に新たなる幕開けを。』」
完全詠唱だろうと、短縮の威力からしても脅威じゃないはずだ。そもそもアイツには私の場所など分らないはず、何が目的だ? って考えてんだろうな
構わず詠唱を続ける。愉快でたまらない。
「『閉ざされし扉を叩く。光るは八つの八芒星。第二の星を我が身に宿せ』くっ。あははっ!」
「待て、そこまで光が収束するのはおかしいだろう。誤差の範囲を逸脱して……」
まだ気づかないバカを見るのは本当に気分がいい。ああ。
「『アストロバースト』ォ!!」
一階にあったすべての通路を張り巡るように光の線が走り、それは爆ぜた。
「あはっ! あはははははっ! あー……」
やばい、意識が……落ちる……。
おまけ
『タウルスの自己紹介全文』
「タウルスは5月3日生まれ15歳で牡牛座好きな料理は甘めの卵焼き好きな食材はレタス嫌いな料理は酸っぱい系全般でも酸っぱいポテチは大好きですあと嫌いな食材はトマトあの皮の食感がいやです味はいけますあとラム肉は少し苦手ですっ! 好きなものはビデオゲームです漫画やラノベもいけますなんならプラモやボトルシップもできますよ! 仕事ない日に髪のセットもせず寝癖ぼーぼーで薄着の状態でダラダラするのがとっても楽しいです! 実は楽器も弾けますアコースティックギターを始めてみましたそれにこれはどうでもいいですが彼氏いない歴=年齢ですあとあと好きな言葉は平穏ですやっぱり平穏が一番です秩序でも平和でもなく平穏がいいんですこれは覚えてくださいね! あとそうですね! 家事は炊事以外できますなんかダメなんですよね少ししかご飯作れないしお菓子なんてパンケーキしか焼けませんしそれにチョコレートって作るより高いの買った方が美味しくないですか私ダメなんですよね私生活はちょっと仕事のときと比べると著しく真面目さが欠けるというか! あーっと座右の銘! 座右の銘ですかどうでしょうねいやあ、さすがに私生活と仕事が違いすぎて決められませんね! 好きなことは概ね言いましたし嫌いなことですね! えと上司の無茶振りとFPSで対戦相手に煽られることとソシャゲで天井までPUゼロ枚とか、で苦手なことも言いましょう! んと、他人の気持ちになって考えることが不得手でしていや考えようとはするんですけどもなんかズレがあるみたいなんですね! 気づけばまわりには職場の秩序大好きばかりでもう息苦しいですよね! いやこの仕事嫌いじゃないですけど友達少ないのが悲しいっていうかですねいや悲しくないですけどやっぱりそんなこともなく悲しいですけどもうなんか仕事ない日が何も考えなくていいのでもういいかなと思っています! 好きな数字は27です一番目はいやですし二番目がいいなというのとラッキーセブンです! 単純ですかねまあそういうところも私ですからねー! 他にも色々教えられま……アレいつの間にやらいつものテンションになってしまっていますねー、ちょっとお待ちくださーいビジネスに戻りますのでー」




