11話 『警告と桎梏』
桎梏と読みます
「そうです『秩序の翼』です。タウルスは秩序の翼に所属しています。『the Wing of Order』です。まんまです」
まあなんとも、物騒な名前の組織だ。実質テロリストの根城に秩序を混入させるのはいかがかと思う。いまだに説明されていないが、実質テロリストとはどんなことをやっているのか、これがまた分からな……。
「こんなのがいるから説明できないってわけ。排除排除されるのは面倒」
「失礼ですね。tWoOは根拠もなく制裁を加えることはないです。そのためにその娘をスパイにしたというのにあっさり引き込まれちゃったら世話ないです」
この顔でも口だけで器用に不満を表現するルマに、フォルツァを指さしながらそう言うタウルス。
「おかげで一つ席が空いたんです。というか元々はあなたは適合者の中でも異例だったんですがこっちにも適合するのはさらに異例なんです。チカラでしたか?」
「あなたに背くのは得策ではありませんが、私は私の正義を実演するだけです」
あーそういえばコイツも敬語口調だったなと思い出す。フォルツァはその通り『力』だったはず。ピリピリするのは勝手だが、周りのことも考えていただきたい。
しかしちらと周りを見やると大して興味もなさそうに退屈そうな顔を浮かべていた。それもほとんどが。
「それと、私とてあなたと互角に戦える『力』はあります。お忘れなく」
「……まあ抜けた団員を引き留めていい規則はありません。タウルスとてそれは知っています。それよりほかの用件なのですが」
天井のシミの数を数えようと思ったら一つもなかった。この高さでどう掃除しているのだろう。
「あなた、あなたですよ。そこの上の空の少年。タウルスは少年に用があるのです」
高い。あと照明がイマドキに見合わないなとふと思う。ランプやシャンデリアが吊るされているのは本当に何なんだろう。
ん?
「……俺?」
「あなたです」
「なんで直接来るかな……」
ぼそっとルマがつぶやく。気怠げ。
言い分から推測しよう。封筒関係だなこれ。嫌な文言が書かれていた気がする。あまりいい意味で使われないような言葉が。
「貴君の処分です。この組織の人間に封筒を渡してもどういう理屈か反応が消えてばかりなので、直々に」
ほえー。
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「と、いった感じです。ご理解いただけましたか? 今のあなたの立場」
どうやら、だいぶ面倒なことになっているらしいです。
一つ目、俺に限らず、『適合者』には例の封筒が届くこと。また、適合者でもこちら側(?)にいなければ封筒は届くことはないということ。それと本来は水色封筒らしい。
二つ目、適合者でなくとも、こちら側の人間にどのような形であれ接触した場合は茶封筒が届くこと。その場合、接触の仕方により内容は変わるが、不意の接触であり、軽度なものであれば公的機関を装いこちら側への接触を自然に絶たせる、こちら側への介入が見受けられる場合、秩序の翼として警告を行うこと。
三つ目。基本適合者は先天性であり、細かいことは言えないが条件を満たしたいずれかの組織の誰かと接触することで発覚すること。よって一般的な生活を送る適合者には適合者だろうとそれが分からないので一つ目のように封筒を送ることはそもそもできないこと。
四つ目。以前ルマと校舎で接触したときは発覚しなかったのに、なぜかファミレスでの接触の時には発覚していたこと。
五つ目。『大いなる術』と名乗る組織が最近姿を現し始めその注意喚起もあったこと。
そして要は、「今こっち側に入るのは危ねーからやめとけバカ」って話らしい。処分らしき処分もなく、警告のみらしい。適合者には自由意志を与えているようだ。大いなる術以外にも色々と事情が込み合っているようで今は非常に不安定で危険なのだ、と。入るのは構わないがこの状況に適応してしまえばもう戻れなくなる、と。
普通の暮らしにまだやりたいことがあったり、楽しめているならこちら側に入るのは強く否定する、と。
「……そういうわけで、タウルスはやるべきことはやらせて戴きました。帰還します」
そう言い残してタウルスはその場を後にした。
◆┃◆┃◆┃◆
出て行ったのを確認すると、ヨハンナさんが口を開いた。
「あんまり。真に受けない方がいいと思うけれど」
「はい?」
どういう意味だろうか。
「細かいことは言えないが、秩序の翼も完全なる正義の味方にはなれないんだ。何もかもをうのみにする必要はない、というだけだよ」
「あたしだって全部把握してるわけじゃないけど、全部真実を語るほど馬鹿じゃない、ただその嘘を『嘘』として捉えるのはちょっと安易すぎるかな」
「つまりどういう……」
この人達分かりやすく言う気はあるのだろうか。
そんな時にフォルツァが意外にも助け船を出してくれた。ありがたい。
「あの人は悪い人じゃないです。いい人でもないです。でも今のお話は全部君のためです。思惑も、策略も、上層部の指示だとしても、あれはすべて君のためなんです。嘘も方便といいます。秩序の翼は……っ。……秩序の翼は、平穏を守るためにある。そこは覚えといてください」
比較的わかりやすくなった。濁し方が話せないから話せないってはっきり分かる。何を言わんとするかとても分かりやすい。むずかしい言い回ししかしないあの二人は見習うべきだ。
「んで? アルキはどうするわけさ」
「……今更入団取り消せるんですか?」
「そうなると『君は知りすぎた』することになるね」
じゃあ聞くな。
「お前覚えてないのか。いや説明してないのかもしれんが元々活発に活動する必要はない。働きたい奴が働きたいときに仕事を拾う。うちは基本そんなもんだ」
ここでようやくマグスさんがしゃべった。あー確かにそんなことも言われたような。
「急に日常なんて捨てられないだろ。緊急じゃなければアルキに頼ることはないと思うよ」
じゃあいいか。もう。
◆┃◆┃◆┃◆
太陽が真上に上って世界を照らす中、街区をひたすら駆け回る。
絶対におかしい。緊急じゃなければないって言ったのに。
「くっそなんで俺が……っ」
ふと手元のスマホを見る。画面が暗い。明るさをあげた。
『トーキョー52のサイトC2のどこかに爆弾仕掛けられたらしいよ☆ 近くでしょ。きんきゅーです、探して見つけたら要連絡 forアルキ』
ふざけた文面で物騒な話をしてくる。因みにトーキョー52は東京都八王子市だった場所。そこのC2は中央付近の二区目だ。因みに俺もそこにいる。
「なんでだよっ!」




