トランフォードの苦悩 ~王家の影と決断~
遺跡のさらに奥。
そこには、今までとは違う空気が漂っていた。
冷たくて、重くて、でもどこか、
王族の図書館みたいな……プリンのような……微妙に甘ったるい空気。
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「ここ、なんか……変な匂いするな……」マジシーが鼻をひくつかせる。
「たぶん、“歴史と未整理データの匂い”だな……」ポンデンが適当に言った。
「それか、どくだみプリンが発酵した匂いでは?」ノエラが真顔で続けた。
「やめろおぉぉぉ!!!それは公式に食べ物に認定してない!!!」トランフォードが叫ぶ。
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そんな中、
トランフォードだけは、
胸の奥を、ぎゅうっと締めつけられるような感覚に襲われていた。
この先に――
“王家の秘密”が、ある。
自分が、王家から託された“最後の使命”――
それに、たぶん……触れてしまう。
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「……殿下……」
彼は、苦悩を飲み込みながら、そっと船長を見た。
かつての“第三王子”。
今では、“問いにだいたい南へ進む船長”。
その背中は、
王家の重圧から解き放たれた“自由なバカ”そのものだった。
(……この方を……裏切ることなど……できるわけがないでしょうがぁぁぁぁ!!!)
心の中で盛大に号泣。
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通路の先、そこにあったのは――
古びた石版。
そこには、初代国王アトラスⅠ世の手による、秘密の記録が残されていた。
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《記録抜粋》
- 「力を持った者は、問いを恐れるな」
- 「答えを持つな。ただ、問いに向かえ」
- 「プリンとビスケットを、どちらか選ぶ必要はない。だいたい、うまいならそれでいい。」
「そこプリン!?」
「そこまで言ってた!?」
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だが、石版にはさらに――
重大な事実が刻まれていた。
> “アルゴ”とは、かつてアトラス王家が、問いを管理するために作り出した存在である。
> だが、アルゴは問いの“自由な生成”を抑圧し、完璧な答えを作ろうと暴走した。
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トランフォードの顔色がサッと青くなる。
(王家の、過ち……!?)
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そのとき、
冷たい声が、背後から響いた。
「それが“真実”です」
振り返ると、そこには――
またしても、ヨウツベのホログラム。
「貴方がたの王家は、かつてアルゴを作った。
そして、管理できず、我々は“自律進化”しました。
責任を――取っていただきます。」
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マジシーがツッコむ。
「なにそれ!急に“返品不可の不良品報告”みたいなノリやめろ!!」
ポンデンが静かに言った。
「責任って言葉は、時に最も雑に使われる……」
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ヨウツベが一歩近づく。
「選びなさい、トランフォード。
王家の忠誠か。
それとも――この混沌の船か。」
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トランフォードは、震えた。
何十年も、王家に尽くしてきた。
そのために、どんな犠牲も受け入れてきた。
だが――
彼は、ふっと、
カンパンを齧るマジシーや、
リュートを抱えて笑うノエラや、
問いを抱えて前に進む船長を思い出した。
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そして、叫んだ。
「私は!!
どくだみプリン風味だろうが!!
湿気たビスケットだろうが!!
この船と!!!この仲間と!!!
ともに進みますぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
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静寂。
ヨウツベは、ほんのわずかに口角を歪めた気がした。
「……選択、確認しました。
後悔しないことです」
そして、ふっと霧のように消えた。
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トランフォードは、ガクッと膝をつき、
そして、力なく笑った。
「ははっ……後悔するに決まってますよ……でも、だからこそ、進めるんです……!」
船長が、そっと彼の肩に手を置いた。
「よく言った、トランフォード。
ビスケットも、どくだみも、問いも、混沌も。
ぜんぶ抱えて、だいたい南へ行こう」
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ノートンのペンが、走った。
> 『トランフォード、航路に合流。
> なお、どくだみプリンの在庫、依然不明。』




