幻視するダリオ ~記憶の奔流に溺れる~
光る水晶柱の間を進むと、
空気が、明らかに変わった。
冷たく、重く、濃い。
それはまるで――問いそのものが、空気の粒子になって漂っているような感覚だった。
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「うっ……」
ダリオが、頭を押さえて膝をつく。
「おい、どうした!」
マジシーが駆け寄ろうとするが、
ダリオの周囲だけ、空気が“渦”を巻いているようだった。
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「……見える……見えるぞ……」
ダリオの瞳が、普段より数段ヤバめに輝いていた。
「無限のプリン! 無限の問い!
ビスケットが裂け、プリンが踊り、
そして、“問いの海”が、ぼくを……――飲み込む!!!」
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「だああああぁぁぁ!!こいつまた“暴走幻視モード”だぁぁぁ!!」
マジシーが叫び、ソーラが泣きそうになる。
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船長は、冷静に観察していた。
「……これは、“問いの記憶フィールド”……
島が、過去の問いの残滓を、ダリオに投げ込んでいるんだ」
ポンデンが呟く。
「つまり、問いのバケツリレーか」
「なにその例えはッ!!」
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そのとき、
ダリオの周囲に、無数の“イメージ”が現れ始めた。
- 「なぜプリンは重力に勝てないのか」
- 「湿気たビスケットに宿る魂の有無について」
- 「どくだみとカスタードは本当に相容れないのか問題」
そして、もっと大きな問いたち――
- 「誰が最初に問いを発したのか」
- 「問い続けることは進化なのか、バグなのか」
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ノエラが、震えながらリュートを手に取る。
「……助けなきゃ……問いに呑まれちゃう……!」
彼女が、“共鳴の歌”を奏で始めた。
音が、空間を満たしていく。
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最初は、拙い音だった。
けれど、ノエラが必死に歌うたびに、
ダリオを取り巻くイメージたちが、少しずつ、揺らぎ始めた。
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「がんばれ……ノエラ……!」
ソーラが手を合わせる。
「問いのサルベージ作戦、開始だァァ!!」
マジシーが叫ぶ。
「頼むぞ、ノエラ!
プリンもビスケットも、全部取り戻してくれぇぇ!!」
トランフォードも腹を押さえながら応援。
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ノエラの歌が、空間に共鳴する。
その音は、問いを整理しない。
答えを求めない。
ただ、
“揺らぎのままに抱きしめる”音だった。
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そして、ダリオが――
ふっと、倒れ込むように意識を取り戻した。
「……はぁ、はぁ……」
マジシーが駆け寄る。
「ダリオ!正気か!?何か見えたか!?」
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ダリオは、うつろな目で呟いた。
「うん……
ビスケットの欠片たちが、
それぞれ“違う問い”を抱えて漂ってたんだ……」
「……?」
「つまり……“バラバラでいい”ってこと。
問いって……ひとつにまとまらなくても……いいんだ……」
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全員が、静かに聞き入った。
ポンデンが、呟く。
「バラバラでも、共鳴できる。
それが、“問いの船”の正体かもしれないな」
船長が、そっと言った。
「……バラバラなまま、進もう。
それが、我々の航海だ」
ノートンは、また一行だけ記した。
> 『幻視完了。
> 問いの海、プリンとビスケットと共に。』




