食糧危機とビスケット戦争 ~飢えは人を狂わせる?~
嵐が去った。
だが、それは平穏の訪れではなかった。
それは――胃袋に襲いかかる“沈黙の嵐”の始まりである。
------
「非常食カンパン、残り23枚。ただし、そのうち5枚に青カビ、10枚に黒カビ、1枚に“謎の触手跡”を確認」
ノートンが、ほぼ犯罪的なほど正確なカビ分布マップとともに報告したその数字に、全員の血の気が引いた。
「あと残ってるのは……」
「……“あれ”しかない……」
「“あれ”って……」
全員が視線を向けた先、ロッカーの最下層。
そこには、王家御用達と書かれた金色の缶――
『アトラス・プレミアム・ビスケット(湿気済)』があった。
------
「残り、31枚」ノートンの追い討ち。
「……これが我々の運命か」
アンサロップが崩れ落ちる。
------
「だが……まだだ。まだ戦える!!」
マジシーが飛び上がった。
「俺の“カリカリ感復元機Mk-0.3β”が火を噴く時が来たぜ!」
「それ、ただのドライヤーだろ!!!」
(※しかも型番に“未完成臭”が漂っている)
------
ここから始まったのは――
ビスケット戦争(BISCUIT WARS)である。
------
ビスケットをめぐる抗争 ~Sideアンサロップ~
「ビスケットは、秩序の象徴である」
アンサロップ、会議室にて。白板にビスケット分配モデル(VER.132)を投影中。
「身長・体重・筋肉量・過去の労働量・精神的貢献度・風紀違反回数に基づく32段階のポイント制を採用し、配分する!」
「おまえ、数学で仲間割れを起こす気かッ!!」
------
ビスケットをめぐる抗争 ~Sideマジシー~
「くだらねぇ理屈はよせ! 腹が減ったヤツが、早いもん勝ちだァ!」
「いっそ撃てば? ビスケットキャノンで!」
「おうとも! 第2章で温存してた“湿気たビスケット弾頭”をいまこそ解禁――!」
「違う!違うから!!」
------
ノエラの“歌の砲撃”投下
「みんな~! 落ち着いて!
♪サクサクビスケット、心もポッキリ、
争うよりも、お茶にしよ~う♪」
……これが、地味に効いた。
なぜなら歌のラストのメロディが――
「♪ビスケットは~みんなのともだち~(シャララ)」
という、思考を停止させる脳内ループ構造を持っていたためである。
------
トランフォード:「……たしかに……一理……いや一節ある……」
ダリオ:「船長の胃袋に、優しく語りかけてくる……この旋律……」
アンサロップ:「“争いは非効率”……合理的結論か……」
マジシー:「……ぐぅ……(←鳴る腹)……う、歌に負けた気がする……」
------
そして、船長がついに口を開いた。
「各員、ビスケットを3.14159枚ずつ配分しろ」
「……それ、円周率ですけど!?どんな数式から出したの!?」
「(最適配分アルゴリズムの試行中に、私の“プリン欲”と“配分公平性”が干渉して暴走したらしい……)」
------
休戦成立、ただし胃袋は限界突破中
こうして、“ビスケット戦争”は、
ノエラの歌声と船長の暴走数式により、一時的終結を迎えた。
ただし、精神的ダメージは全員に残った。
- マジシー:『湿気たビスケットでも爆発できる説』に未練
- アンサロップ:会議室に“配分公平の詩”を貼り出す
- ノエラ:『サクサクの歌』が地味に人気で調子に乗る
- ダリオ:全員の分配シーンをスケッチ、題名『秩序の中の混沌』
- トランフォード:誰よりも真剣に“非常用プリン”を探している
------
さて、彼らが生き延びるために必要だったのは、ビスケットではなく、
「問いと胃袋のバランス」だったのかもしれない――
いや、それは考えすぎか。
次回、胃袋よりも精神が揺れる嵐が、再び訪れる。




