未来への道標(たぶん)~地平線の向こうは、どっちだ?~
嵐は去った。
だが、甲板に立つクルーたちの表情には、「嵐より面倒な何かが始まる」という予感が、うっすらと貼りついていた。
なぜなら、目の前には――
ビスケットの破片が落ちていたからだ。
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「船長! 見てください、この……破片!」
ダリオが、恍惚とした表情で拾い上げたのは、湿気って反り返った一枚の――もとい、“元”ビスケット。
「……見える……このひび割れと焦げ目……これは“道標”だ……!」
「いや、お前それ、床に落ちてたやつじゃん!!」
「しかも俺がさっき素足で踏んだやつ!!」マジシーが叫ぶ。
「ふむ……」ポンデンはビスケットを見つめて唸った。
「焼き菓子の表面にこそ、宇宙の秩序と混沌が同居している……これはまさしく、問いの地図だな」
「もう誰も止められねぇ!!」
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そして極めつけは――ノエラの歌だった。
「♪カンパンが足りない、ビスケットが湿った♪
♪でもそれは、きっと、神の問いィィ~♪(シャウト)」
「そのメロディが一番“危機的状況”を伝えてくるわ!!」
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だが――
そんなバラバラの情報たちを、誰よりも真剣に受け止めたのが、我らが船長だった。
彼は、湿気たビスケットの破片と、ノエラの歌声と、ソーラの「さっき光ってた方角」報告と、トランフォードの「お腹空きすぎて幻覚見ました」発言などを高度に意味不明な形で統合し、一つの仮説を導き出した。
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「皆、聞いてくれ!」
船長が高らかに言った。
「このビスケットの破片と、歌声の周波数、そしてダリオ君の幻視を複合解析した結果――我々の次なる目的地は、“黄金ビスケット島”であると断定できる!!」
「できるの!?!?!」
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「待ってくれ船長! そのビスケット、さっき俺が踏んだ――」
「静かに。これは単なる“ビスケット”ではない。“問いのかけら”だ」
「くぅぅぅぅぅぅぅ!!(←謎の感動)」
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「私は、ここに宣言する!」
船長は甲板に仁王立ちし、まるで世界の真理に触れたかのような(たぶん気のせい)瞳で言い放った。
「次なる航路は、黄金ビスケット島!! 我々の問いは、まだ終わってなどいない!」
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トランフォードはそっと、記録帳に記す。
> 「第二章、完。
> 到達したもの:特になし。
> 得られたもの:湿気たビスケット、プリンの消失、友情(?)
> そして、“問い”の再燃。」
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シー・チキン号は、ふたたび舵を取る。
向かうは、ビスケットか、それとも新たな問いか。
いや、もしかすると――プリンの在処かもしれない。
海の向こうに、光が差している。
たぶん、それは希望。もしくは間違って落とした反射材。
でもいい。
問いがある限り、航海は続く。




