嵐ときどき内輪揉め ~決断?いや、ただのパニックです~
空が曇ったのは、昼食を食べ終えた直後だった。
カンパンとビスケットと、“どこか酸味のあるプリン”(※マジシーの自作)の供給により、胃袋は満たされつつも、胃薬が足りない者もいた。
それはトランフォードのことだ。
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「雲が……怒ってる」
「え?誰が怒ってるって?」
「空がさ、“問い”にツッコミ入れてる気がする」
「ソーラ、それ観測じゃなくてポエムだよね!?ね!?」
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ビュオォォォ――!!!
風が、吠えた。
船が、軋んだ。
ノエラのリュートが、ビブラートで自壊した。
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「殿下!嵐です!!避けられません!」
「む……前回の“フィーリング舵”と同型か……」
「いや、そんな前回の再利用みたいなノリで言わないで!!今回は!マジでやばいです!!」
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そのとき、ダリオが遠くを見つめて言った。
「見える……プリンの表面に、波紋のような……暗い影が……」
「それ波じゃん!?しかもプリンじゃなくて“現実の海”の話してぇぇぇぇ!!」
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ポンデンは、相変わらず哲学していた。
「“嵐”とは……世界の問いそのもの……それに抗うという行為が……“解”なのか、“沈黙”なのか……」
「誰かポンデンの哲学を一回“黙る”って解にしてくれ!!」
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ノートン、記録中。
> 『船体の傾き:右に14°
> 歌の残響:ノエラ氏の高音がマストに共鳴
> マジシー:何か作ってる。たぶん危険。』
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「よぉぉし!!今回は“気圧感知型・風力対応・自己犠牲モード搭載・スーパー肩たたき自爆機”でいくぞおお!!」
「その“肩”に一体何を背負わせてるんだよぉぉ!!」
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そして。
船長は――やはりトイレにいた。
「この揺れ角、先日のケースよりも…うっぷ……傾向は……一致……!」
「殿下!?またもトイレで“気象分析”してるの!?というか、出てきてぇぇぇ!!」
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ようやく、船長が姿を現した。
青白い顔で、眉間にシワを寄せながら、静かに、まるで悟りを開いたように言った。
「――進行方向、未定」
「出たァァァァァァ!!未定宣言!!」
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「だが、今回は……“直感”ではない」
「え?じゃあ何なんですか!?」
「これは……“問いの読解によるフィーリング”だ」
「ほとんど変わってないじゃん!!!」
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一方、船内では、内輪揉めが勃発していた。
アンサロップ(秩序系クルー)がついに主張する。
「このような混乱の中で、フィーリング舵に未来を委ねるなど――統計的に破綻しています!」
マジシー、真っ向から応酬。
「逆に聞くけどよぉ!この嵐、“統計”で抜けられるのかぁ!?俺は信じてるぜ、直感舵!!」
ポンデン「混沌の中にこそ、答えがある……」
ソーラ「雲の形、ハートに似てきた……」
ダリオ「プリンが“溶ける夢”を見た……」
ノエラ「もう一回歌えば“嵐も納税する”と思うんだけど……」
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トランフォードは、叫んだ。
「まともな人はいないのかぁぁぁぁぁぁ!!」
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そのとき。
船長は静かに、舵を握った。
「“問い”とは、時に、誰かの迷いの中に現れるものだ」
「今の我々の混乱こそ、“問い”の姿……ならば、それに向かって進むことは、――“答えに向かう”ことと同義だ」
「殿下……それ、良いこと言ってるようで……」
「――“フィーリング”で行くぞ」
「やっぱりぃぃぃぃぃぃい!!!」
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ズオォォォォッ!!!
嵐の中、シー・チキン号は突き進んだ。
問うように。叫ぶように。歌いながら。爆発しながら。
それでも。
問いがある限り、彼らは止まらない。




