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31.香山桜子

控室を出て、姿が見えない利点を生かして、関係者やスタッフさん達が駆け回る中、じっとそれぞれを観察する。


愛梨と噂になったチャーリーくんは、グループの顔と言われているハリーくんやGくんと違って、気だるげでステージや番組内でもやる気の無いように見られることもあるが、彼の真価は、握手会やハイタッチで発揮される。グループ内屈指の神対応で知られ、一度嵌ったら抜け出せないとまで言われている。

そのため彼のファンは、少ないが圧倒的な濃さを持って構成されている。


しかし、神対応ができるということは、それだけ女慣れしているということで、なんだかんだで異性とのスクープ件数が一番多いのも彼である。

まだ未成年ということもあり、マスコミが報道を躊躇う点を有利に生かし、同年代から母親ほどの年齢まで、様々な美女と写真が撮られたり、または女性本人が流したりと噂が絶えないのだ。



そんな彼は、もちろんスタッフ関係者にも手を出していたようで、メイクや衣装担当の女性や、テレビ局の役職持ちとみられるなかなかのお姉さまなど、皆暗い表情で、これは後々害獣発生源になるなと分かりやすい。


そんな中、会場では撮影がスタートしたようで、ファンの歓声と、音楽が聞こえてきたことに気が付き、偵察を終わらせて会場内に入る。一応、皆と鉢合わせしないように二階席から一人こっそりと入った。



会場に一歩踏み出したときから私は顔を顰めた。

中にはすでに錯乱した状態で煙を出す女性が何人かいて、生み出された害獣を尚美と愛梨が叩き割りながら駆け回っていた。

今回の害獣たちには皆明確な敵意があるようで、一斉に愛梨に飛びついて攻撃を行い、愛梨は演技に集中できずにやり直しを繰り返し、その結果、会場の空気は最悪の状況で、あちこちから愛梨への罵声が隠さず発せられるようにまでなってしまった。


これは流石にまずいと思ったその時、愛梨にカラーボールがぶつけられた。スタッフが中断して駆け寄ったけれど、会場内は騒然としながら拍手が起き、取り仕切らなければいけないはずのスタッフ達も、止めないでそのままにしている。


この明確な悪意に、思わずステージのPluto達を見たが、彼らはこそこそ話し合うだけで、スタッフに全てを任せきっている。

私の眼前では、悪意の集合体となるヘドロにより生み出された会場いっぱいの害獣が、耳障りな音を上げながら尚美と明日奈を弾き飛ばした。

思わず一階に降りようとした私だったが、とっさに駆け出てきて、そして事態を収拾しようとするために発言した愛梨のほうが先だった。


会場全ての悪意が自分に向く中、それには感情を示さず、しかし大事な人が傷ついた時に動いた愛梨。

すべてが美しいと思った。

そして、愛梨にそこまでされて尚、動かないPluto達に、もう怒りの感情意外浮かばない自分に気が付いた。



魔法少女武装の、スカート部分を握り締め、これから自分がしようとしていることを思い。正直震える。


彼らの、私の好きな人たちの前では、何時でも正しい自分でいたかった、役に立つ自分でいたかった。

だから、これからすることは、ただの裏切りでしかない。

これによってケガする人もいる。最悪死人が出るかもしれない。

でも、私は本当に、自分の事しか考えられないから、とにかく消えたいから。でも一人じゃ嫌だから、せめて害獣を道連れにして役に立つんだ。いやこの気持ちも、もう詭弁でしかないけれど。


過去に、同じ爆弾を使った魔法少女たちを思い出す。大多数が、自殺だった。

私もいつか同じことをするだろうと、当時から思っていたけれど、ようやくその時が来たようだ。


ゆっくりと息を吸って、ステージをもう一度見る。最後に一目、彼の事を見たかったけれど、彼はいなかった。

これは罰だなと、思わず微笑んでしまう。


そして私は、ゆっくりと箒で上空に上がり、そのまま全速力で降下して、オオサンショウウオの巨体に突撃した。


想定通り、遠心力と、激突時の衝撃で、全ての爆弾が起爆して、私は意識を失い。そしてそのまま、半分以上の身体欠損で、強制消滅した。



これが私の、人生の最後だ。

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