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29.香山桜子

『スクープ!!Plutoチャーリー(18)・人気モデルmia(16)甘酸っぱい青春デート!!!!』



スポーツ新聞の朝刊一面に載った写真は、仲睦まじそうにマスクで顔を隠しながらあるく2人の姿で、テレビやネットのニュースも全てこの話題になった。


もちろんPlutoの事務所は、いいお友達ですとコメントし、愛梨の事務所も仕事関係でしかないと否定のコメントを出した。二人はもうすぐ始まるドラマの共演者で、キスシーンもあると紹介され、まあ宣伝目的であると普通の人なら分かるようなそんな記事だ。


しかし、ファンはそうは思わない。

学校に登校した愛梨に詰めかけるマスコミと、チャーリーのファン。愛梨のファンももちろんいて、歩いているだけで罵詈雑言が愛梨に浴びせられた。

学校内のチャーリーのファンか、単に芸能人の愛梨が気にくわない子なのか知らないが、愛梨のロッカーは荒らされ、上履きや体操着など私物は盗まれてメルカリに出品された。

愛梨がmiaとしてやっているSNSも批判コメントが殺到し、中には学校の校舎の画像や愛梨の自宅の画像が添付されて個人情報も漏れていることが分かった。


報道初日から、愛梨は隠れることなくちゃんと学校に登校していたが、あまりに学校に関係者以外が押しかけるため、自宅学習を単位と認める提案が教師から愛梨にされた。


「分かってたことだけど。ホント無理・・・。」

嘆く愛梨と私達三人が身を隠しているのは、陸上部の部室だ。

害獣により元々いた部員がい(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)ことになったので、事実上廃部状態でほぼ誰も使わないので、最近は魔法少女関連の話をするときなどはここを使うようになっていたが、今回の件で愛梨は常に動向を監視される状態なので、ここでしかまともに話せなくなっている。


元々あるパイプ椅子にもたれかかり、ストレスで眠れていないのか顔には隈ができている。それでも、気遣って差し出したチョコレートを食べないのはプロ意識の高さだろう。

「でも明日のライブの害獣トウバツは行かないといけないよね。Plutoの人たちが自分たちの話題作りしか考えていないクズでも。」

尚美はポテトチップスを食べながら、Plutoに対する悪口を隠そうともしなくなった。

害獣トウバツの共同戦線が開始されてから、確かに街で害獣を探したり、他の魔法少女と邂逅して同族狩りされる危険性は無くなった。

しかし、こちらが見えているのにあえて無視しているPlutoの面々に、私たちは怒りを抱かずにはいられない。

別にねぎらって欲しいとかではないが、仮に目の前で死んでもPlutoの面々は全く動じないのだろうなと思うと、やるせない気持ちになるのだ。

魔法少女という痛みを知っていながら、それを感じなくて済む彼らに、羨望と怒り、入り混じった感情を私たちは向けているのが現状だ。



それでも、仲間とは思っていたのだが、今回の交際報道である。

あの写真は、打ち上げの後に愛梨がチャーリーくんに挨拶していただけで、それ以上の意味はないのだと説明してくれた。

「でもさ、SNSで、ちゃりみあカップルとか言ってた子達も、本当に交際報道が出たら一転して私を憎むんだなて思ったよ」

愛梨が遠い目でそう話している。

先ほど、教師からの自宅学習の提案を受け入れて、しばらく過ごすことにした愛梨は、学校に来れないことに酷く落ち込んでいる。

それを尚美と明日奈が慰めていて、本人は落ち着いてきたが、私の中の怒りが収まらない。



「桜子。あんたが責めなくていいよ。それはあたしがやるから。」

私の考えが読めたのか、愛梨はそう言ってゆるく笑った。

そうはいっても、この件は事務所も絡んで動いている件で、社長に頭下げられたと愛梨が言っていたほどなので、彼女にできることは何もないのだろう。

それなら、関係者でも家族であって仕事に関係ない私が言うべきだと決意する。

「でもそれで、ジョーさん怒らせたら桜子がいられなくなるじゃん」

愛梨の心配そうな言葉に、大丈夫と今度は私が微笑む。


もうジョーくんのそばに長くいようとは思わない。口にはしないがそう決めている。

今日はジョーくんが帰ってくる日と連絡があったので、話合うと報告すると、3人とも不安げな顔になったが、かける言葉が見つからなかったのか、何も言ってこなかった。






そして夜。

もう深夜の日付が変わる直前に、ジョーくんは帰宅した。

「ただいまー。これダッチベイビーていってドイツのパンケーキだって!!」

何が嬉しいのか笑顔で、リビングのソファに座る私の前に箱を置いた。そのまま食べると言い出して、飲み物を用意しようと立ち上がったジョーくんを私は止める。

不思議そうなジョーくんの表情を見て、私はまず、明日の関係者パスを渡すように言う。

ジョーくんはなぜか不満げに、鞄の中からケースを取り出し、スタッフパス4人分をテーブルの上に置いた。

それを持って私が部屋に帰ろうとすると、

「まだ、おかえりなさいて言ってもらってない」

と引き留められたので、お帰りなさいお疲れさまでしたと挨拶して、部屋に戻る。


ジョーくんは私を追いかけてきた。部屋にある学生鞄にパスを入れて、受け取ったと魔法少女グループラインに送信すると、

「目の前にいる人より、優先することなの?」

と怒りが込められていると私でもわかる口調で責められた。



貴方も、仲間だと決めた人を危険に晒すことをしましたよね。



そう私が言うと、ジョーくんは、何のことかわからないといった表情をしたので、思わず言葉に力が入ってしまう。



愛梨がいまどれだけ苦しんでいるかあなたにはわからないでしょうね!



とうとう私は叫んでしまった。驚くジョーくんの表情に、やってしまったとは思ったが、今回はどうしても許せない。彼女は私を認めて仲間になってくれた大切な子なのだから。

そう考えている間、ジョーくんが何も言ってこないので、顔を上げると、彼の表情は完全に無くなっていた。

「僕は君が一番大切なのに。君が一番大切なのは真名守さん達なんだね」



耳に入って来る言葉が、自分のなかで咀嚼できない。



あなたのその感情は私が洗脳したものなんです。、全部嘘なんですよ。



言葉にして、私はジョーくんにぶつけてしまった。言ってしまったらおしまいなのは分かっていたけれど、それがどうでもよくなるくらい、頭に血が上っていたのだ。



「嘘じゃない」



ジョーくんは短くそう言った。


「一緒にどこか出かけたいとか、美味しい物を食べたいとか、少しの時間でも話したいとか、会いたいとか、他の人を優先させたら嫌だとか、一番に見てほしいとか」

ジョーくんは言葉を切って私を真っ直ぐ見た。

「そう思ったのは僕の意志だ。僕自身の想いだ。」




そして、彼の口からそ(・)の(・)言(・)葉(・)が出ようとした瞬間、私は彼を思い切り突き飛ばして部屋の外に出し、そのままドアを閉めて鍵をかけてドアの前に座り込んだ。


ドアを必死に叩く音と、ジョーくんの声がするが、どこか遠いところで起きている事としか思えないくらい、今の私は混乱している。


彼の言葉は嘘だと否定したい気持ちと、本当に私を想ってくれているという希望の気持ちが、自分の中でごちゃごちゃに混ざって、でも、頭のどこかで冷静に思うのは、彼らの本質と私達の立場は変わらないという事実だ。


やはり、明日決行しなければならない。そう思い、私は、ベッドの下に隠してある。複数の火薬の詰められたパイプを見た。



私は明日。これで体を四散させて、彼の前から消える。


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