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21.香山譲

もう日付は変わり、深夜であるが気にせずに、帰宅してすぐ桜子の部屋をノックする。

ゆっくりと眠そうに出てきた桜子に、無事に帰宅していたことに安堵したが、それを隠して、帰宅報告の連絡がなかったことを聞いた。


「・・・・お忙しいと思ったので。」


リビングのソファに座り、疑問もなくそう答えられてしまいこちらの状況なんてわからないだろう?と聞くと、


「愛梨が、あの後打ち上げだったて言ってましたから」


と、真名守さんの名前を出されて、打ち上げ中ずっと怯えた表情で僕たちメンバーから視線を逸らしていた彼女を思い出したが、とんだ仕返しをいつの間にかされていたらしい。

今はそれを言うのは愚策と判断して、さっきのことを思い出す。



「分かりました。私達、Plutoさんたちのお手伝いをしていきたいです。よろしくお願いします。」


先ほどの医務室での桜子の言葉だ。今思い出しても、驚きと困惑しかない。


飛馬の説得を聞いていたが、こいつは昔から下の立場の女の子には態度が悪いので、上から目線すぎるとあきれていて、真名守さんが本性を出して怒り出すのも無理はないと見ていた。


生意気な話かもしれないが、今ここまで大人気のアイドルである僕たちに対して、肯定以外の感情を向けてくる女の子たちは本当に久しぶりで、だからメンバー全員対応のさじ加減を間違えていたとは思った。

でも、否定はされないとは確信していて、ことがその通りに動いて僕以外のメンバーは皆何も疑問を持たずに話は終わったと引き上げていったが、短い期間でも桜子と一緒にいた僕は、桜子の目から、どんどん色が消えていくようなそんな気がして、気になってしまい。全体打ち上げを兼ねた食事会後、皆で寮に戻り、着替えてまたタクシーに飛び乗ったのだ。歌番組後は、記者に付けられる危険が格段に上がるのに、自分の行動を省みても本当に冷静でない。


「・・・もう休んだほうがいいですよ?」


考えに嵌っていた僕に、桜子が心配げに声を掛けて、意識が戻った。

いけない、本題を切り出せていないではないかと思い直し、スマホを見せてほしいと話した。


先ほど桜子は、飛馬とラインを交換した。目の前で異性と連絡先を交換することを、止められる立場に自分はあったと思うが、桜子の言葉に動揺していて、それを言い出すことはできなかった。

私情が挟まりすぎている自覚はあるが、権利は最大限行使していこうと開き直ることにする。


しかし桜子は、当たり前だという表情で、

「ピッピさんの連絡先を外部に漏らしたりはしませんよ」

と言った。

桜子は僕の意図など全く思い当たらないようで、悲しいような複雑な気分だ。


桜子には、Plutoのリーダーとして自分が魔法少女関連の計画や行動を指示すると決めたと伝えて、自分に一番に相談するように伝える。

何故か桜子は驚いた。

「魔法少女の事、嫌ってるのかと思ってました。」

そうちいさく呟いた言葉に、内心そうだよと肯定する。


今でも魔法少女なんてよくわからないものは大嫌いだ。それによって、僕の目は見なくていい物をみて、メンバーも苦しんで、そして桜子が傷ついている。しかも肉体や感覚だけじゃなくて、気持ちまで洗脳の嘘と分かって、もう何を信じればいいかわからないのだ。

僕もメンバーに言われたとおりにできれば幸せなのだろうけれど、今はそれをしたくない。

だから今は足掻いてみることにした。それだけだ。


「分かりました。今後はそうします・・・・・・私はお休みの邪魔になるので戻りますね」

桜子が肯定の返事を返して部屋に帰ろうとした。

僕はそれを止めて、付いてきて欲しいと告げて客用寝室に向かう。

困惑しながらも付いてきた桜子に、僕はベッドに寝転がり、桜子が眠るまででいいから話をしたいと告げる。


「ええ!!明日の朝に聞きますから!」

と桜子は出て行こうとしたが、今話したいと告げると、しばらくなにやら唸った後、納得して、僕の隣に恐る恐る寝転がってくれた。顔をこちらに向けてくれないけど、まあ今はそれでいい。

「寝なくて大丈夫なんですか?明日のお仕事は?」

と桜子が心配してくれるが、今したいのはその話じゃないと言うと、

「・・・怒ってますよね。当然。」

「あんなに大きな会場なら、私のことなんか気が付かないだろうと思って言いませんでした。」

「愛梨たちといると、嫌な顔させてしまうじゃないですか。それが嫌だったんです。」

桜子はぽつぽつと、そう話してくれて、僕は自分の真名守さん達への態度で予想以上に気を使わせてしまっていたと反省する。

「ほんとは・・・・すごくショックでした。新聞の写真」

また考えに陥っていた僕だったので、危うく聞き逃すところだった。

桜子を見ると、反対方向に顔を向けてしまっていて、表情は分からない。

ただ一言、僕は桜子に謝罪する。

「必要な事だとわかりますよ。ただ、反応を電話で聞かれたのがちょっとだけ嫌でした。」

こちらに顔を向けてくれないが、言葉は続いた。

以前の僕なら、こんな話は一切交際相手とすることはなかったし、めんどくさいと少しでも感じたら早々に切っていた。

でも、こんな話をすることも悪くないなと、過去の彼女たちとも話したかったかもしれないと気づき、いや、これは桜子相手だから楽しいんだろうと思い直す。


何か言おうとしたけれど、桜子のほうが眠ってしまったみたいだ。おとなしく僕も寝ることにする。


確かに魔法少女からの愛は身勝手な洗脳だ。メンバーたちが思い出せなくても気にしないのも分かる。

でも、それに自分の気持ちが惹かれているとしたらどうなのだろう。僕にとっては今の状況が割と楽しいとも思えてきている。


そんな希望を膨らませていられたのは、僕だけがなにも知らなかったからだと。この時の僕はまだ知らない。


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