12.香山譲
僕たちのマネージャーやプロデューサー、miaの事務所の関係者がその後会議室に到着し、今回のミュージックビデオの打ち合わせが始まった。
ストーリーはこうだ、miaが演じる少女が眠れない夜絵本を開くと、中には違うタイプのイケメン5人がそれぞれ危険で妖艶な方法で誘惑して楽しませてくれる。目覚ましとともにその夢は終わるけれど、その世界にはまたいつでも行けるし、本の中で僕たちは幸せに暮らしていく。
一見、miaを主人公とした少女漫画のような内容だけれど、前回出した曲のミュージックビデオでは、僕たちは閉鎖された学園で互いに傷つけあい、最後には5人で手を繋いで薬を飲み草原に寝転がって終わる。つまり心中を示唆した内容だった。今回のミュージックビデオも、前回の衣装を着たカットを入れたり、僕をめぐるハリーととびおの三角関係も継続して入れるようで、物語が繋がっていると考察できる要素を入れて、ブロマンスを楽しむファンにも配慮した内容なので、新しいことをしつつも今までの売れ筋は守る戦略となっている。
会議室のスクリーン前では、物語やコンセプトを監督が熱く語っているが、僕たちメンバーの視線はmiaに釘付けとなっている。遊び慣れしているはずの飛馬も、説明を真面目に聞きながらも視線をちらちら送っている。
全員見ているのは、miaの顔ではなく上半身、まあ胸だ。本人は標準体型、いや標準よりも腕や足が細いのに胸部にすべての肉が集まったかのような体のつくりをしている。黒縁の眼鏡で隠しているようだが、顔も整っており、内巻きのショートヘアーでトレーナーをだぼっと着こなしてジーンズを履いている。僕の好みのコーディネートだ。今度桜子にもだぼっとしたトレーナー着てもらおう。なんだか変態だと思われそうだったから普通にワンピースとか買い与えちゃったんだよね。
この前一緒に仕事したとき「紹介してほしいレポーターがいる」と、とびおがいっていたのはこの子だったようだ。今も会議中なのに微笑んだり手を振ったりで完全に話を聞いていない。本当に巨乳好きなのなお前。
しかしmia本人は、とびおのアプローチに一切反応せず、真面目に監督の話を聞いている。先ほど挨拶したときも、最低限の言葉を言うと、後から来たマネージャーと一緒の席に移動し、一切こちらと雑談する意思は見せなかった。他事務所に来て緊張しているのはわかるけれど、普段接している彼女くらいの年の女性芸能人は、皆もっとあこがれの視線とか、なんとか話そうと積極的に来たりとか、とにかく押しが強い子が多いので、彼女のリアクションは珍しい。
会議は、撮影日程と場所時間を知らされてお開きになった。
解散と同時にとびおがmiaの席に駆けていき、
「ねーねーお腹空かない?チーズ専門店のチーズフォンデュ食べに行こうよ!!」
と堂々とナンパしだした。
メンバーやこちらのスタッフは、また始まったと気にも止めずに会議室の片づけや次の仕事への移動を開始したが、mia本人とマネージャーは凍り付いていた。
「・・・それは、マネージャーも同席ということでよろしいでしょうか?」
強張った表情でとびおに確認するmia。しかし、
「えーちがうよー。お腹空いたから誘っているだけだよー。」
と仕事以外であると断言するような発言をしたとびおに、miaは困惑した表情を浮かべていた。
これは空気変えないとと思い、僕は、僕も食べたーいと、とびおに後ろから抱き着いてみた。
その様子を見たmiaは、表情のこわばりをやわらげた。
「本当にGさんとジョーさんは仲が良いんですね。2人の邪魔になっちゃうので今回は遠慮しておきます。」
そう笑いながら角の立たない断りの言葉を言った。横でmiaのマネージャーもほっとした表情だ。
とびおはあきらめきれないようで、
「じゃあライン教えて。暇なとき連絡するから。」
とラインを聞き出していた。miaは特に抵抗することなく教えていたので、SNSで話すのは大丈夫なのだろう。仕事の挨拶とかもどうしても会えないときに使ったりするからね。
ラインの交換後のmiaのスマホの画面が見えた。「真名守愛梨」が本名のようだ。すごい名前だな。とぼーっと考えていた僕だったが、miaが画面をスクロールし、知り合いかも?と表示された名前に目を見張る。
「香山桜子」そう確かに彼女のラインには表示され、miaはためらいなく友達登録をした。




