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15.香山桜子

タクシーは無事にマンションの前に到着した。お礼を言って降りる。

トランクの中の荷物を運ぶのを手伝おうか提案されたけれど何とか自分で持てる量なので断った。

そういえば鍵を貰ってなかった気がしたけれど、見ていたかのようなタイミングでスマホが振動した。

「もう着いた!?鍵は渡した財布の中に入れてあるから(-ω-)/」

今時誰も使ってない顔文字は無視して財布を開けるとお札をいれる部分に鍵が入っていた。

マンションの受付の人に頭を下げて、到着したエレベーターに乗り込む。高層階用なので他に乗る人も降りる人もいないためまっすぐ最上階に着いてくれた。

鍵を開けて、大量の荷物を玄関入ってすぐの場所に置いたままで居間のソファにたどり着く。


大きくため息が出る。今日見た色々なジョーくん。どれが洗脳でどれが本当の表情なのだろうか。どうしても私に向ける表情は全て洗脳に見えてしまう。自分が彼に好かれる要素がどこにも見つけられない。

ジョーくんに帰りましたのラインを入れる。既読がすぐ付かないので別の事をしているのだろう。やるべき報告は済んだのでそのままソファに寝転がる。

スマホの中身を改めてきちんと見る、何件かある電話番号はこの家の固定電話以外では、複数持っているジョーくんの携帯やスマホの番号のようだ。彼の本名の横に(緊急時用)とか(普段はこっちにかけてね)とか細かく登録されている。案外きっちり分けてるんだなと驚く。

もちろんGPSと位置情報はオンになっていた。これをオフにすることで逆に問いただされそうなのでそのままにしておく。魔法少女として出かけるときはスマホを置いていけばいいだけの話だから。


でも出先で他の魔法少女と連絡先交換することになったらどうしよう。

そこまで考えて、私は、尚美と明日奈に連絡を取っていないことに気が付いた。

鞄からメモを出してID入力すると、二人のページが出てきたので友達登録する。尚美も明日奈もBGMにPlutoの曲を流していて思わぬところで後ろめたくなった。


昨日助けていただいた香山桜子です。と一応他の人がみても分からない普通の文章を送る。すると既読がすぐ付いて次の瞬間スマホが電話の着信を知らせた。明日奈の名前だ。

私が電話を取ると

「桜子さん!!明日奈です。連絡待ってました!」

と明日奈の大きな声がスピーカーから響いた。風の吹く音や車の音が混ざっているので外と分かる。

忙しいときに掛けて申し訳ないと伝えると

「全然!私達今パトロール中なんですけど、よかったら桜子さんも来ませんか!?」

と誘ってくれた。

有難く誘いを受けてそちらに行くと伝えると、

「桜子さんここら辺の地理分からないですよね!私達が昨日のマンションに行きます!尚美!飛べる!?」

と近くにいるらしい尚美に声をかける明日奈。大丈夫だったようで、

「では5分くらいで行きますのでよろしくお願いします!!」

と言うとそのまま明日奈は通話を切ったようだ。


その後まもなくベランダに到着した二人に中に入ってもらう。

「お邪魔しまーす。昨日も来ましたけどほんと広いお家ですよね・・・。桜子さんお嬢様とかですか?」

と武装を解いてベランダに靴を脱いで室内に入る尚美。一礼した後無言で明日奈も続く。二人は休日だが制服姿だった。

私はその質問には答えず、デパ地下で買ってもらった紅茶と、尚美と明日奈の魔法少女時の色まであるウーピーパイというドーナツやカップケーキをお皿に並べてテーブルに置く。

目を輝かせながらも動かず確認するような表情の二人に、好きなだけどうぞと言うと

「「ありがとうございます!いただきます!!」」

と食べだした。ジョーくんに家で食べなよと買ってもらったものだけれど、私はさっきのパンケーキでお腹いっぱいなので食べてもらったほうがありがたい。


もぐもぐと無言で食べる二人を見る、前髪が汗で張り付いてそのままだったり、ソファに重心をだらりと預けている姿を見て、二人の疲れを感じた。大きい害獣とでも戦ったのだろうか。私も今日デパートで小さな害獣を倒して、薬効が1日しかないことに気が付いてがっかりしたと話す。

「東京の害獣は倒してもだいたいそんな感じですよ。昨日の渋谷の害獣が珍しかった方で、今日夕方からさっきまで私達もパトロールして倒して回ったんですけれど、5日寿命が延びただけでした。」

カップケーキを手にして慣れた様子で笑う尚美と頬張ったまま頷く明日奈。二人は学校のない休日も短い時間でも外に出て数を稼ぐしか今方法がないのだと説明してくれた。

「でも害獣の発生しやすい場所は必然的に他の魔法少女もいるわけで。そっちのほうが害獣より怖いですね。」

と何かを思い出すように苦い顔をして言う尚美。

二人の制服に既視感を感じて学校名を聞くと、なんと私がこれから通うことになる学校と同じ名前だった。

その件を、ジョーくんのことは隠して説明すると、

「え!本当ですか?やった!!」

と喜んでくれた様子の二人を見て安心する。

二人は中等部だけれど、一貫校なので校舎はほぼつながっているそうだ。これでお昼にトイレごはんになる心配が消えてくれて安心する。前は一人で食べていただけで髪の毛引っ張られたりしたのでトラウマなのだ。


転校先のことで一番初めに知ったのが魔法少女事情というのがなんだかおかしいけれど、これから過ごす上で知っておかないと命に関わるので詳しく聞くことにする。

確か、最初は学校の害獣をトウバツしていたけれど、増える魔法少女による縄張り争いや、トウバツ後の魔法少女を付けて行って変身後の身元を特定した魔法少女の出現で、二人は身の危険を感じて学校から離れたとまでは話を聞いている。

「はい、私たちの学校は元々歴史あるミッション系女学校だったんですけれど、最近少子化で共学になりました。でもまだ女学校時代のイメージが強いのか男子生徒は少ないですし学校内で権力を握っているのは元々の名家の子女や社長や芸能人の娘など女子です。だいたい仲良しなんですけれどまあ、女性同士なんて結局突き詰めれば敵なところありますし・・・特に異性関連とか」

そう説明してくれる尚美に頷く私。結局異性関連で同性は全て敵になるよね女って。と言いたかったけど言わなかった自分偉いと内心自画自賛する。


しかし、共学化で彼氏が欲しくて奪い合いでもしたのだろうか?繁華街も近いし、元々モテる子は校内にこだわらなくても学外で彼氏つくるよなぁと疑問に思う。今はSNSもあるし。

「いや、彼氏とかじゃなくて・・・・。桜子さんPlutoてアイドルグループ知ってます?」


驚いて思わず声が出そうになったが、飲んでいたアイスコーヒーのコップに口をつけて誤魔化す。

なんとか頷きだけ返すと尚美は話を続けた、

「旧校舎でPlutoがプロモーションビデオ撮影したことがあったんです。今より人気なかった頃なんですけど。向こうのスケジュールの都合で私たちの授業中に撮影が行われて、みんな休み時間や授業をさぼって芸能人のイケメンを見に行きました。」

思い出すように話す尚美と見つめる明日奈。きっと二人も見に行ったのだろう。

「私達の学校にもデビューからファンの子が何人かいて、その子たちはこのチャンスになんとか近づきたいって思ったみたいなんです。それで無理矢理校舎に侵入して撮影現場に入り込んでスタッフに取り押さえられたんですけど、引き下がれなくなって抵抗した子がいて、スタッフを押しのけてハリーくんに抱き着こうとした時に機材に引っかかって、その子は無事だったんですけど、」

尚美は言葉を切った。


「それでハリーくんとピッピさんが怪我したんです。特にピッピさんは大きな火傷が残ったそうで・・・。『その時怪我をさせた子を殺したいと願った魔法少女』と、『殺されたくなくて力を望んだ魔法少女』が今学校内でずっと戦い続けているんです。」

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