表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天織り満天 - 交錯する世界を繋ぐ花 -  作者: 天堂 かける
第5章 交錯した世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/77

第65話 ファーストコンタクト

「今更だけんどよ……おめぇ、一体ナニモンなんだっぺよ?」



ケルベロスに向けてクマが放った素朴な疑問は、村の入口に妙な響きを残した。

それを隣で聞いた桃花は、真剣な面持ちでクマへと振り向く。



「ナニモンって……一応言っとくけど、ケルちゃんはデジタルなモンスターじゃないからね? 似てるかもしれないけど」


「?」

「?」



ケルベロスとクマの動きがピタリと止まり、同時に桃花を見た。



「……何言ってんだおめぇ?」


「……あ、あのね桃花ちゃん? コイツはね。アタシのことをそういう意味で言ってるんじゃないわよ?……というかアタシ、“デジタルなモンスター”に似てるの?」



突然、その場に全く似つかわしくないことを口にした桃花に対し、二人は呆れる以前に意味不明といった状態であった。



「え? じゃあポケットに入るモンスターってこと? あ、それともデュエルするモンスターの方かな?」

「いやいや、違うわよ……そういうことじゃなくてね。というか、よくそんな情報知ってるわね。アタシ、なぜか心の奥底に不思議な懐かしさを感じちゃってるわよ」



妙なところで感心し、尻尾を振るケルベロス。


一方、そのあまりに噛み合わないやり取りを目の当たりにしたクマは、呆れ果てたように溜息を吐き出した。



「……あのよ。なんでオラが、ここでいきなりそんなこと聞くんだよ。おめぇってさ……周りから天然って言われたりしてねぇか?」


「ななっ……! し、失礼な! 私が天然!? そんなわけっ、ないでしょぉ!」



聞き捨てならない事を言われた桃花は、ムキになって反論する。



「いや、だってよ。オラはそういう意味で聞いたんでねぇのに、思い込みでいきなり関係ねぇこと言い出してくっからよ。一体なんの話を始めてくんだって思っちまったべっちゃ」


「じゃあ! だったら何よ! どういう意味なのっ!」



まさか、喋るクマに天然扱いされるとは思ってもみなかった桃花は、珍しく語気を強めて詰め寄る。



「は? おい嘘だろ? おめぇ、マジでわかってねぇのか? やっぱしマジモンの天然でねぇかや。なんなら天然通り越して絶滅危惧種まであるか?」


「クマさんにそこまで言われたくないよぉ! それ言ったら普通に喋ってるクマさんの方が絶滅危惧種じゃん! なんならそっちこそ、茶色いクマモンでしょうが! 中に人でも入ってるんじゃないの!? 背中にチャック付いてるんでしょ!? 引きずり出して中身を暴いてやるっ!」



そう言って桃花はクマの背後に回り込み、背中の皮膚を思いっきり引っ張る。



「あいだだだっ!! やめれっちゃ!! 背中引っ張るでねぇ!! 千切れっちまうべさ!! オラは本物の熊だっぺ!! チャックなんかねえっつうの!!」



そんな中、収拾がつかなる空気を察し、黒柴姿のケルベロスが二人の間に割って入った。



「ね、ねぇ、桃花ちゃん。落ち着いて……」

「だってケルちゃん! このクマさんがっ! 私のこと天然とか絶滅危惧種って! ひどくない!? 」



ケルベロスは優しく、諭すような声で桃花を宥める。



「え、ええ……そうよね。でもね桃花ちゃん……コイツの言葉は訛ってるから、 ”ナニモン” とか “マジモン” みたいな、紛らわしい言い方に聞こえるかもいれないけど、言葉を正しく言うとね。コイツはただ、アタシが一体 ”何者なのか” ってことを、ただ聞いてただけなのよ」


「だってナニモンって!……ん? 何モン? え? ナニモノ……ぇ、ぇ?」


「わかる? “ナニモン” = “何者” という意味よ。ついでに言うと、“マジモン” は “本物” みたいな感じね。更に加えて言うと、"バカモン” は馬鹿者って意味」


「……ナニ、なに? もんモン? ばか何、まじ者……?」



一瞬、思考の歯車が空回りし、理解が追いつかなかったが——



「……………………はうあぁっ!?」

「アタシが言ってる意味、わかった?」



そして桃花は、やっと理解した……まるっと全部。

自分の壮大すぎる勘違いと、恥ずかしすぎる発言の数々を……。



「……そっ……そういうことかーーい!! なんで勘違いした私よーー!! 恥ずかしやーー!!」



桃花はその場に崩れ落ち、頭を抱えて絶叫する。


顔を両手で覆っているが、指の間から覗く耳まで、熟した果実のように真っ赤に染まっているのが一目瞭然だった。



「ぎゃははっ! おめぇ一体どうやったら、そんなぶっとんだ勘違いできんだっちゃよ! 想像豊かでオモシロイやつだなオイ! ケケッケ! ってか、背中痛え……。どんだけ引っ張るんだっちゃよ。ホントマジで千切れるかと思ったべ……」


「うぐっ……。そんなこと、喋る熊に言われたくないよぉー!」

「ま、アタシも今は、ただの喋る犬みたいなモンなんだけどね〜♪」



もはや、そこには緊迫したアジトへの潜入感など微塵もなかった。


まるで旅芸人のコントのような騒がしさに、周囲の村人たちが次々と足を止める。

彼らの頭上には、目に見えるような「?」が浮かんでいた。


しかし、その視線が二足歩行で立つ巨躯のクマを捉えた瞬間。

村の空気は一変し、凍りつくような緊張が村人に走った。



ざわざわ……。



一気に刺すような注目が三人へと集まっていた。



「お、おい……あれ、熊じゃないか!?」

「マジじゃねぇか! なんでこんなところにいるんだよ!?」

「大変だ! しかも隣に若い女の子がいるぞ!」

「ほ、本当だ! おい! そこのあんた! 早くその熊から離れろ! あんたの危険が危ないぞ!」



事態を誤認した村人たちは大慌てで、桃花に逃げろと必死に叫び声を上げている。



「……騒ぎすぎたわね」



ケルベロスは小さく舌打ちを漏らす。



「この状況は、ちょっとマズいわよ。熊坂長範に勘づかれて逃げられちゃうかもしれないわ」

「あ、ご、ごめんね……私がうるさくしたから……」

「……オラからしたら、危険が危ないのは、むしろこっちの方なんだけんども」



クマが自嘲気味にぽつりと呟いた……その時。



「……あ、あの……どうか、されましたか?」



恐る恐る、けれど透き通るような涼やかな声が、三人の間に割って入ってきた。



「え?」

「なっ!?」



桃花とケルベロスは、同時に声のした方へと顔を向けた。


すると、そこに立っていたのは——


整った顔立ちで、どこか消えてしまいそうな儚い雰囲気を纏った、可憐な美少女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ