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天織り満天 - 交錯する世界を繋ぐ花 -  作者: 天堂 かける
第4章 反襲撃

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第56話 All Guns Blazing

ケルベロスはキレないよう、頑張って耐えていた。

自分の感情を必死に抑え、耐えていた。

ここまで、耐えていたのに——

  


——ダメでした。



「もうダメッ! もう無理ッ! もう我慢の限界突破ッ! このスケベエロティックマが! 許さん! アタシの桃花ちゃんに、なんてことしようとしてんだコラァ! これ以上はアタシの魂が、”コイツだけは絶対に許すな!”ってやかましく叫びまくってるわ! だから、もうぶっ殺す! ぶっ殺して熊鍋にして食い尽くしてやる! 細胞一つ残ると思うなよーーー!」



一気に怒り爆発したケルベロス。


その足元から、文字通り「爆発」するように黒炎が激しく噴き上がっている。

その炎は巨大な龍のように渦を巻き、天を突く火柱となって周囲の空気を焼き焦がす。


急激に気温が上昇したため、全身毛むくじゃらであるクマは、そのあまりの熱さに慌てふためき、体を激しくばたつかせる。



「あっつう! あつつっ! オラの茶髪(体毛)が燃えちゃうって! なんだべっちゃよ!?」


「なんだじゃないわよ! ムカつくのよ! さっきからなんなの!? そのはちゃめちゃに混ざって訛った方言! バチクソ腹立つのよ! 無駄にイケボなのも気に入らないのよ! なんでアンタみたいなアホがそんなにイケボなわけ!? 勿体無いのよ!」



怒涛のように吐き出される言葉がクマの鼓膜を蹂躙した。

ケルベロスの口から繰り出される言葉の一撃一撃が、物理的な衝撃のようにクマを打ち据えていた。


怒り爆発モードになったケルベロスは、もう止められない。止まらない。

言葉という名の弾丸を全て撃ち尽くすまで、収まることはない。


たった今からこの場は、彼女専用の独壇場となった。



「その上デカい図体のくせに根性なしで偉そうで屁理屈ばっかり! 口は達者に見せかけておいて頭の中はただのバカでバカ頭のバカ! そんで自分のことは棚に上げて、惨めで情けないったらないわ! もう見てられないわ! 消してやるわ! 滅してやる!」



黒炎は更に膨れ上がり、太陽すらも霞むほどの闇を形成していく。



「これ以上じっとしてたら、アタシの血圧が急上昇して血管ブチ切れて死んじゃうわ! アンタのバカでアタシが死んじゃうなんて死んでもありえない! こんなバカのせいで死んじゃうなんてアタシが可哀想! ああヤダヤダ嫌すぎる! このバカ! バカ頭バカクマ! バカ!」


「あ!? なんだと! 誰の頭がバカだって!?」


「はぁ!? アンタよ! アンタ! アンタのバカ頭のことよこのバカ! この距離で聞こえてないの!? マジでバカなの!? 頭だけじゃなくて、とうとう耳までバカになったの!? もはや救いようがないバカね! ちっちゃい脳みそが腐ってトロトロに溶ろけちゃったのかしら!? あらまぁ可哀想〜に! 頭蓋骨かち割って脳みそ取り替える〜!? バカに合う脳みそなんてこの世にあるのかしら〜!? ハッ! どこにもありはしないでしょうけどね!」



三つの首が揃って「ギロリ」と、血走った眼でクマを鋭く睨みつける。

その眼光だけで、クマの心臓は握り潰されそうなほどの圧力を感じていた。


この瞬間から、急激にクマの勢いは弱まっていく。

その表情からは、焦りの色がはっきりと見て取れる。



「さ、さっきからオラのこと、バカバカ言いやがってからに! おめぇの頭はどうなんだってばよ!? そこまで言うからには頭良いんだろうなぁ!? ああん!」


「当たり前じゃない!」



即答。



「アタシは頭良いわよ! 少なくともアンタよりはね! そのバカ目玉しっかり広げてよく見てごらんなさいよ! アタシ頭三つもあるのよ!? バカなわけないじゃない! アンタバカァ!? バカ! クズボケアホカス生ゴミムシバカ!」


「なんだとっ! オラのことなんだと思っ……」


「というか見てわからないわけ!? アタシとアンタの差なんて一目瞭然じゃない! マジでわかんないわけ!? これ以上、アンタと話してると本気でバカが伝染ってバカになりそうなんだけど! だからお願いもう死んで! アタシの前から! そして桃花ちゃんの前から! この世界から存在ごと消え失せて! というかアタシが今から消してやるわ! はい御愁傷様! はいさようならーー!」



クマに反撃の隙すら与えないケルベロスの激しい連続口撃。

大爆発した怒りが一気にクマを絶望の淵へと追い込んでいく。



「ク、クソ! バカバカって、言いたい放題、言いやがってからに……!」


「だって本当のことじゃない。バカにバカって言って何が悪いわけ? アンタのバカ頭を最大限使って考えて一秒以内に答えてごらんなさいな! 早く! ほら早く!」


「おめっ、一秒は無r……」



言いかけていたクマの言葉は、彼女の猛攻によって一瞬で掻き消されていく。

この程度でケルベロス怒りの言葉は、まだまだ止まらない。

ここまでが準備運動、そしてここからが本番という勢いだ。



「おい! なんで答えないわけ!? アンタにバカって言っちゃいけない理由や憲法があるなら一秒以内に答えろって言ってるの! そのバカ頭の中に入ってる腐って溶ろけたバカ脳みそ使って必死に考えて捻り出してみなさいって言ってんのよ! ほら! 早く! ほら早くさぁ! 言え! 言ってみろ!」



ここで一瞬、ピタッと間を置いて……。



「……あ、そっか、バカには無理だったわね。というか、バカ耳だし聞こえてすらもいないのかな〜? アタシったらついうっかり〜テヘ♪」



この嵐のような、超がつくほどの猛口撃にクマは全くついていけていない。

精神的ダメージは確実に蓄積している。


その様子をそばで見ていた桃花はというと——



「す、すごい……なんて凄まじい破壊力のある口撃なの……しかも次々と、一度も噛まずにあんなにスラスラと早口で……まるでガトリングガンが三門あるかのようだ……お、恐ろしや」



まるで無限弾薬ガトリングガンの如く。

一生喋っていられるのではないかと思ってしまうほどの迫力。


桃花は、また別の意味で涙目になり、プルプルと小刻みに震えていた。

自分に向けられた怒りではないというのに、なぜか彼女も精神的ダメージを受けているという謎現象。


もはや立ち昇る黒炎ですら霞んで見えてしまう。

この「圧倒的な言葉の暴力」に本能的恐怖を感じずにはいられなかった。 


そしてノリに乗ってるケルベロスは、獲物を捕食するような冷徹で残忍な笑みを、三つの口で同時にニヤッと浮かべる。


どうやら、そろそろトドメの一撃をお見舞いしてやるようだ。



「ハッ! アンタに遺言なんていらないわよね! バカには必要ないもの! というか最初から言わせる気なんてサラサラないんだけど♪ は〜い! それでは! 今からこのバカクマを使った熊鍋三秒クッキングを、か・い・し、いたしま〜す♡ それでは〜♪ 神への祈りなんぞは無視してっ! くたばりなさい!」



ある程度の怒りを発散したからか、多少ルンルン気分となっているケルベロス。

だが、だからといってここで終わる彼女ではない。


最初からクライマックスと言わんばかりに、三つの首がクマへと一斉に向けられ、口がガバッと大きく開かれる。

その喉の奥には、全てを無に帰す地獄の黒炎が勢いよく渦巻いていた。



「ヒィィィィハァァァァーーーーッ!! ぶっ殺されるぅぅぅぅぅーーーーー!!」



それを真正面から見たクマは、後退りした拍子に足をもつらせ、尻餅をついて地面に倒れ込んでしまった。


なんとか立ち上がろうとするが、恐怖で足元がもたついて上手く立ち上がれない。

それでも転がりながらでも、必死に逃げようと這いずっている。


情けなく嫌味ったらしい断末魔の悲鳴を上げながら、死という名の絶望を全身で浴び、壊れてしまったロボットのように、激しくガタガタと震えていた。


クマのビビり散らす様子を目の当たりにしても、ケルベロスは攻撃を止める気など微塵もない。


激しく噴き出す黒炎は、確実にクマへと目掛けて渦を巻き上げていた——

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