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天織り満天 - 交錯する世界を繋ぐ花 -  作者: 天堂 かける
第4章 反襲撃

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第52話 魔獣の再来

「やっほ〜♪」


黒炎の中から姿を現したのは、三つの首を持つ巨大な魔獣。


それは、変身を解いた真の姿である「地獄の番犬ケルベロス」だった。


その巨大な体から放たれる圧倒的な神話級の威圧感。


変身を解いたケルベロスの姿を間近で見てしまったクマは、そのあまりの迫力に絶句し、まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直していた。



「……」



その表情には、もはや怒りも強欲もなく、ただ純粋な「絶望」だけが溢れている。


無理もない。


自分の数倍はあろうかという巨躯に、首が三つもある化け物が、いきなり目の前に姿を現し「アハ〜ン♡」などと言って、悦に浸っているのだから。



「アハ〜ン♡ この圧倒的な、開・放・感! たまんな〜い♪ 超気持ちいい〜♡」

「……」


「あらあら〜ん? クマちゃんどうしたの〜? お地蔵ちゃんみたいに固まっちゃって〜♪ さっきまでの威勢は一体どこ〜?」



今度はケルベロスが、その圧倒的な存在感でクマを見下ろす。

完全に立場が逆転した瞬間であった。



「ケルちゃん。いきなりそれは、えげつないって……」

「ウフフ♪ それじゃ獣同士、遠慮なくやりましょ♪ 先手はアンタに譲ってあげるわ。どっからでもかかって来なさい。さぁ、どうぞぉ〜♡」


「……」



しかし、そのクマは全く動かない。

というか微動だにしていない。

固まったままである。



「……あ、あれ? クマさん? もしも〜し」



桃花は反応がないクマへと近づき、人差し指でその分厚い毛皮をツンツンと突いた。



「……っがはあっっ!?」



その瞬間クマはビクッと激しく震え、ハッと息を吹き返して、この世に戻ってきた。



「え? もしかして……立ったまま気絶してたの? 器用なことするね」



桃花は純粋に感心してしまった。

そして目を覚ましたクマは、急にしどろもどろになり、喚き出してきた。



「っ……ず、ずるいっぺ! 卑怯だべさ! 急にオラより体デカくなりやがって! しかも首が三つに増えてるじゃねぇか! 一体どういうことだっぺよ! そんなの聞いてねぇべっちゃ!」

「聞いてないって言われても、そもそも聞かれてないんだから言いようがないじゃない。というか、アンタに卑怯なんて言われる筋合いないわ。ま、“能ある犬は首を隠す”ってやつよん!」


「ケルちゃん、上手いこと言うなぁ」



またしても感心している桃花の前で、クマは顔を歪めて悔しそうに拳を握りしめた。



「ぐ、ぐっ……!」



そのクマの様子を見たケルベロスが、勝ち誇ったように畳み掛ける。



「さ、言葉を話す獣同士、仲良く殺し合いましょ♡ ま、アタシが一方的でしょうけど♪ 喧嘩を売ってきたのはそっちよね。それに今日は、ちょうど一粒万倍日らしいし。一万倍で買ってあげるわ♪ ありがたく思いなさいよ〜♪」

「うぐっ、うぬぬ……!」



一気に崖っぷちへと追いやられたクマは何も言えず、ただ唸るしかなかった。



「……まさか、喧嘩売るのやっぱりや〜めた! なんてふざけたこと言わないわよね? アタシは見ての通り、変身まで解いちゃったんだから。今更そんなこと言われても無理よ? ま・さ・か、言わないわよね〜?」

「相変わらずケルちゃんは冗舌だよなぁ……」



その様子を見ていた桃花は、思わず言葉が溢れる。

本来の自分に戻ったケルベロスの逃げ道を塞ぐ、このキレッキレの口撃。


すると、ただ唸っていたクマが、ここで何かを絞り出すかのように小さく呟いた。



「……に、にんげん……」

「ん?」

「人間、相手なら……負けねぇ!」

「なんですって?」

「オ、オラが身包み剥がそうとしたのは……こっちの人間の方だべ! 怪物のおめぇじゃねぇ!」

「あら?」



クマは勢いよく顔を上げ、震える指で桃花をビシッと指差した。



「それに、オラが喧嘩を売ったのも……このちっこい人間だ! おめぇじゃねぇ! 人間相手なら、オラは絶対に負けねぇ!」

「ふ〜ん。そうくるのね……」



ケルベロスは、まるでゴミを見るかのような冷めた口調で呆れ返った言葉を吐き捨てた。



「潔く負けを認めるならまだしも、最初から戦いもしないで、ただの醜い負け犬の遠吠えをかましてくるなんて……コイツ最高にダサいわ。ダサいくせに無駄にイケボなのが、無性に余計に腹立たしいわ」


「あれ? ということは……?」



クマの話を聞いた桃花は、「もしや?」みたいな顔をする。



「そういうことみたいね。この腰抜けクマ、桃花ちゃんに喧嘩を売ったんだって〜」

「……私、追い剥ぎのついでに、喧嘩も売られちゃった……ってこと!? 」


「そうみたい♡ ここはちゃんと相手してあげないと、このクマが惨めで可哀想だわ〜♪ ま、どっちに転んだとしても、このクマが惨めで可哀想な未来は変わらないんだけど♪」

「私、このクマさんと戦うの!?」


「そ♡ 頑張って手加減はしてあげてね〜♪」



そしてクマは「ニヤリ」とでも言いたげに口元を歪め、不敵な笑みを浮かべた。

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