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天織り満天 - 交錯する世界を繋ぐ花 -  作者: 天堂 かける
第3.9章 小休止無双

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第49話 最強の守護者

おじいさんから掛かってきた電話を、思い切り間違って切ってしまった桃花。

だがその後、またすぐに電話が掛かってきた。


その相手は「おじいちゃん」ではなく、「おばあちゃん」とスマホの画面に表示されていた。


「こ、今度は、おばあちゃんから電話だ!」

「次は間違えちゃダメよ」


桃花は今度こそ慎重に、確実に通話ボタンをタップした。


「……あ、あの、も、もしもし?」

『あ、桃花? おばあさんよ。やっと繋がったわね〜』


通話が開始され、電話の向こうから聞き慣れた声が響く。


「おばあちゃん!」

『もう心配したわよ〜? 違う意味で。でも良かったわ〜。元気そうで』


「うん! 何とか元気だよ! でもごめんね。電話もメッセージも返せなくて」

『いいのよ〜。旅先だし、色々あったんでしょ? ぜ〜んぶ、まるっと、知ってるわよ。わかってるか〜らね♪』


「うん。そうなの……って知ってるの? まるっと、全部?」

『あ! いや! うふふ、なんでもないのよ〜ん。気にしな〜いでね♪』

「え? あ、うん……」


「……」


横で聞いていたケルベロスは思った。

GPSか衛星、あるいは使い魔、もしくは他の何かで絶対追跡しているだろうと。


ちなみに、桃花はスマホを耳に当てて必死に話しているが、設定はなぜか「最大音量のハンズフリーモード」になっており、おばあさんの声は、朝の静かな通りに朗々と響き渡ってしまっていた。


その内容は、ケルベロスに筒抜けなのだが、当の本人はその事に全く気がついていない。


『というか桃花。さっき、おじいちゃんの電話切ったでしょ?』

「わ、わざとじゃないよ! 指が滑って間違って切っちゃっただけだからね!?」


『うんうん。わかってる。きっと間違えたんだろうな〜とは思ってたから』

「それで……お、おじいちゃんは?」


『ショックで死んだわ〜』

「死んだ!?」

『きっと桃花に嫌われたと思ったんでしょうね〜。白目向いちゃってるもの〜』


衝撃的なことをサラッと言い放ったおばあさん。

その態度が、あまりにもあっさりとしてるものだから、桃花は動揺を隠せないでいる。


「う、嘘だよね! おばあちゃん!? あのおじいちゃんが!? 雷が脳天に直撃しても気持ち良さそうにしてた、おじいちゃんが……。そんなあっさりと? ただのショックだけで死ぬだなんて!」

『即死だったわ〜。ここでバカみたいに面白い顔して死んでるわよ〜んって、あはっ☆ この顔超ウケる〜☆ 最高にバチクソ笑える傑作変顔だから、写真撮っとこ〜っと♪』

「おじいちゃん。ごめんね。私のせいで、そんな最期を……」


桃花が絶望に打ちひしがれ、今にも泣き出しそうになっていたその時……。


『うふふん、もう冗談よ〜♪ おじいさんがこれくらいで、くだばるわけないでしょ〜?』

「……冗談……? え、冗談!? もう! おばあちゃんやめてってば! 笑えないよ! 本気で心臓が止まるかと思ったじゃんっ!」

『ごめんね〜ん。だって桃花は揶揄いがいがあるんだもの〜。楽しくて、ついやっちゃうのよ〜♪』


冗談で即死させられていたおじいさん。


ケルベロスは横で呆れ果てていたが、同時に「桃花は、揶揄いがいがある」という点については、骨の髄まで同意せざるを得ないと思う発言であった。


「……ホッ。でも安心した。おじいちゃんに何事もなくて良かったよぉ」

『あら? でも電話を切られてショックを受けてたのは本当よ。今も転がって呑気に気絶してるわ。バカみたいな顔してね♪ この変顔、写真に撮ったら後で送るね〜』


「……気絶してるんだね。そのおじいちゃんの変顔、気になるから送って」

『ふふ♪ 桃花の元気な声が聞けて安心したわ〜。この後も体には気をつけてね。そして、楽しい旅を♪』


「うん! おばあちゃんありがとう! おじいちゃんには後で、ごめんねってメッセージ送るね」

『そうしてあげてね。それと、今後はスマホにも気を配りなさい。でないとおじいさん、心配し過ぎて、今度こそ本当に死んじゃうかもよ〜?』


「う、うん。気をつけるよ……ごめんね、心配かけちゃって」

『いいのよ〜。あ、それとね、後で元気な桃花の写真を撮ってチャットで送って見せてね〜』


「わかった! たくさん撮って送るね!」

『お願いね〜。そして、桃花の隣にいる“ケルベロス”……いや、“お友達のケルちゃん”と一緒にね〜♪』

「「!!?」」


その瞬間、桃花とケルベロスは同時に硬直した。


「お、おばあちゃん!? なんでケルちゃんのこと知ってるの!? 私、そのこと、まだ言ってなかったよね!? まだ話してないよね!? ね!?」

『うっふふ〜ん♪ おばあさんは、な〜んでも知ってるのよ〜ん☆ イケメン悪魔のいるホテルにも泊まったんでしょ〜。羨ましいわ〜』


「……なんってことっ!!」


それを聞いたケルベロスは、氷水を浴びせられたような寒気に襲われ、全身の毛をゾワッとさせて本気で震え上がった。


「こ、このじじばば……!! 本っっ当に、恐ろしいわ!!」


『それじゃ、また連絡するわ〜。おじいさんにも、桃花は心配ないって、起きたら言っとくから〜。そんじゃ〜ね〜バ〜イ♪』

「え!? あ、おばあちゃん! ちょっ、待っ——!」


ツーツーツー……。


一方的に通話が切られた。

無情にも通話終了の音だけが、耳に鳴り響いている。


「……切られちゃった」

「……あの、じじばばぁぁっ!」


ケルベロスは己の肩を抱き、ガタガタと震えながら叫んだ。


「ア、アタシ、久しぶりに肝が冷えたわ! 一気に血の気が引いたわよ! 前にボコられた記憶が鮮明にFLASHBACKして、トラウマが完全復活しちゃったじゃない!」

「私は……少し安心したかな。ホッとしたというか……。でも、おじいちゃんとは話せなかったけどね」


「絶対にGPSや盗聴器、そして凄腕のエージェント、果ては衛星やどこぞの秘密道具とかで追跡・尾行・盗聴・監視されてるわよ! 間違いないわ!」

「え〜? いくらなんでもそこまではしてないよ〜」


桃花は、ケルベロスの大げさな反応に苦笑いした。


「でも、もしそうならさ……超強力な“守り神”が付いてるみたいで、安心じゃない?」

「守り神!? いーや! アタシからしたら守り神じゃなくて! ただの“最恐最悪の死神”よ!」


ケルベロスは本気で青ざめている。

全身の毛が更に逆立っており、通常よりも一回り体が大きく膨らんで丸く見える。


それを見た桃花は、「あ、フワッとしてて可愛い……!」という不謹慎な感想は敢えて言わずに、そっと心の中で呟いた。


「……もし、この会話も……じじばばに聞かれてるかと思うと、ゾッとしちゃうわ! 震えが止まらないもの! これから何一つ自由に話せない、喋れないなんて……そんなの耐えられない! アタシ死んじゃうわ!」


西へと続く道は、朝の光に照らされてどこまでも伸びている。

今はまだ、平和な石畳の感触。


今回は、ほんの小さな出来事だった。


けれど、この先の旅はまだまだ長い。

今はただ、二人は西を目指して歩き続ける。


鬼の営業所がある街——武神街へ。


「最強の戦士じじばば」という、見えない「守護神(死神)」に見守られながら、二人の旅は再び動き出した。

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