第43話 イケメンパラダイス
捕らえた悪魔、サキュバスとインキュバスを「魔界警察」へ引き渡すため、ゼフォンは爆速でバックヤードへ通報に向かった。
ひとまずは、その魔界警察の到着を待つことにはなったが、桃花とケルベロスにとって、それはあまりにも濃密すぎる時間となっていた。
予想を遥かに超えた展開の連続に、二人はカウンターの隅でぐったりと肩を落とす。
「はぁ、それにしても、朝から驚かされてばっかりだよぉ」
「でも、目は覚めたでしょ?」
「覚めたは覚めたけど……いい目覚めではないよね」
その時、ふと桃花は気になったことを口にした。
「というか、魔界にも警察ってあるんだね」
「そりゃあるわよ〜。人間より何倍もヤバい奴らがひしめき合ってる世界よ? 魔界にだって社会はあるし、治安を守るための組織がないと一日で崩壊しちゃうわ」
桃花が感心していると、白目をむいて魂が抜けていたサキュバスが急に、「ハッ!」と意識を取り戻した。
「……ね、ねぇ! オリアス様! 私も警察に突き出すの!?」
どうやら気絶していた間も、ぼんやりと話の内容は聞こえていたらしい。
オリアスは、そのあまりにも身勝手な問いに対し、慈悲深い微笑みのまま、静かに告げた。
「ええ。心苦しいことですが、そうさせてもらいます」
「う、嘘でしょ!? ねえ助けてよ!! やめてお願い!! 謝るから!! もう二度とこんなことは絶対しないからぁ!!」
未練がましく叫び散らすサキュバスに、ケルベロスが再び声を荒げ、キレる。
「うるさい! 見苦しいわよバカ女! アンタがどんだけ周りに迷惑かけたのか、全然わかってないようね! イケメン警察官にさっさと連行されて、次元牢へぶち込まれて反省しなさいよ!」
「え? イケメン警察官が来るの!? ヤバ、ちょっと楽しみかも!」
「いや、イケメンかどうかは知らないけど……」
そんな不毛な話をしていると、バックヤードからゼフォンがシュシュッと参上。
またしても瞬間移動の如く戻ってきた。
「通報してきたよ。すぐに来てくれるそうだ」
「そうか。ありがとうゼフォン」
そこへ、別室で被害者の女性客を看病していたラウムも、静かな足取りでロビーへと姿を現した。
「お疲れ様です」
ラウムの姿を見たオリアスとゼフォンは、労いの言葉をかけた。
「あ、ラウム、お疲れ様」
「お疲れ、ラウム」
二人の後に、桃花とケルベロスもラウムへと挨拶をする。
「お、おはようございます!」
「あら、おはよう〜♪」
「おはようございます」
二人へと挨拶を返し、爽やかに微笑むラウム。
この瞬間、ロビーに三人の規格外イケメン悪魔が勢揃いした。
その光景を見て、桃花はふと思う。
(なんという目の補養。素晴らしいイケメンたちが目の前に……。こんな幸せがあっていいのだろうか。この宿の外観と内観さえ普通だったら、ずっと泊まっていたかったんだけどな……)
見惚れている間にも、このイケメン悪魔たちは、即座に情報共有を行う。
「ラウム、被害に遭われたお客様の容体はどうだい?」
ゼフォンの問いに、ラウムが的確に状況報告する。
「命に別状はありません。回復魔法を施して様子を見ましたが、術式の定着に問題はなさそうです。しばらく安静にしていれば目を覚ますでしょう。今はガイコツ君が僕と交代して付き添っています」
「そうか。ありがとう、ラウム。それを聞いて安心したよ」
心底ホッとしたような表情を見せるオリアス。
「ですが念のため、一度病院で、専門の医者に診てもらった方がいいでしょう」
「そうだね。それは私の方で手配しておくよ」
そんなプロフェッショナルな会話が交わされていた、その時——
重厚な入口の扉が「バン!」と勢いよく開かれた。




