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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第1章 街を目指して
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謎の五人組

ブックマークの登録ありがとうございます。

とっても励みになります(*´ω`*)

これからもお読み頂ければ幸いです。


 徹夜で準備を済ませ、あとは出発をするだけという段階になって問題が発生した。


 マリーが朝食を摂っている間に、ナナシは盗賊達を起こして今日の日程を男達に説明する。

 街まで案内すること、そして街で出頭すること、と。

 目覚めた盗賊の半数は、ナナシをみた途端にぶるぶると震え、怯えていてとても会話にならない。

 その男達の顔面はどれも腫れ上がっていた。

 ここの盗賊団の頭領を含む半数は、誰が案内などするものかと彼女を罵倒し、喚き散らしている。

 それも当然である。

 堂々と街など行って自首などしようものなら、よくて過酷な場所での労働奴隷、最悪縛り首は免れないのだ。

 さらに六名は足を骨折している。まともに歩く事など出来ないのだ。

 それなら歩ける半数で肩を貸してはどうかと提案するが、ふざけるなと一蹴される。


 早朝に出発する予定だったのだが、盗賊達はゴネて梃子でも動かないとといった始末だ。

 時刻は既に昼に近いだろう。これでは埒があかないと、彼女は一計を案じる。


「……じゃあここで、死ぬ?」


 言いつつ、剣を引き抜いた。

 その感情を感じさせない瞳に、先程まで騒いでいた者達も静まり、ごくりと誰かが息を呑む。



 正直なところナナシとしては盗賊をここで殺す事に躊躇いはない、が殺人という行為にはやはり抵抗がある。

 どれだけの魔物を殺そうとも、その辺りの倫理観は残っているようだ。

 だが、現にこういった盗賊と真面目に話し合いをするというその考えは相手をつけあがらせるだけだとも分かった。

 

 マリーもナナシも運が悪ければ凌辱され、最終的には殺されるか、どこかへ売り飛ばされるという最悪の結末を辿っていただろうことは想像に難くない。

 偶然攫われたナナシが力を持っていたから無事であったに過ぎないのだ。


 ナナシとしては手段を選ばなければ道案内はどうとでもなると思っている。

 記憶にある倫理観を捨て、一人ずつ拷問していけば、そのうち素直になるだろう、と。

 平然とそんな事を考えてしまう辺り、彼女の倫理観は最早この世界に染まっていた。

 だが、マリーの手前あまりそういった事を見せるべきではないとも考えているし、そんな事をしなくて済むに越した事はない。

 しかし、彼女の何より最大の懸念は、盗賊達を野放しにしてしまう事だ。

 そんな事をしてしまえば間違いなくまた被害者がでるだろう。

 だからここで中途半端な甘さを見せて解放するくらいなら、一思いに殺す覚悟を決めていた。

 これは最期の警告であり、これで駄目なら彼女は盗賊達を人間とみなさなくなるだろう。


「ま、まってくれ! わかった、街までの道は教える。それでいいだろ!」


 何も分かっていない、お前達が来なければ意味が無い、この期に及んでお咎め無しなどあり得ないだろう、と。


 ナナシは剣を振り上げる。

 男にはそれが自分の魂を刈りに来た死神のように映った。


 ヒュッ


 男は泣き叫び、懇願する。死神の鎌はすぐそこに迫っている。


「待ってくれ!」


 洞窟の入り口から制止を促す声が聞こえる。と同時にスッと剣先が止まる。

 ナナシは振り向き声の主を確認する。

 そこには、武器を携えた五名の男女がいた。

 だが、明らかに盗賊達とは毛並みが違うことから盗賊の仲間でない事は一目瞭然である。




 むむっ!?


 誰だか分かりませんがナイスタイミングです。

 見せしめにしようと思いましたが、気が進まないのも確かでした。

 自分で止めるよりも第三者の介入で止めたと思われた方が舐められる心配もないでしょう。

 下手をすると、勘違いして調子に乗りそうですからね。


 後はあの人達が上手く説得してくれれば完璧なんだけど、どうなる事やら。

 偶然とはいえ、これはいい良い警官と悪い警官の出来上がりだ。

 それにしても狙ったかの様なタイミングでしたね。

 正直この後どうしようかと思っていたので助かりました。

 盗賊のお仲間ではないと思うけど、用心に越した事はないし、警戒だけはしておきますか。


 ……それにしても大きな人ですねぇ――




 ナナシに制止の声をかけたこの男、ローランドは燃える様な赤毛を短く刈り込み、目付きは鋭く体全体もがっしりとしている偉丈夫だ。

 鎧の隙間から見える無駄のない鍛え上げられた筋肉と、見上げるような巨躯も相まって、まさに歴戦の戦士といった風格だ。

 最も驚くべきは本人の背丈に匹敵するかの様な金属の塊ともいえる巨大な剣である。


 ――この人なら真正面から熊と殴り合っても勝てるんじゃね?


 などと自分の事は棚に上げて、失礼な事をぼんやりと考えているだけなのだが、その表情には何も写しておらず感情を読取る事は出来ない。

 それがまた不気味さを煽る。


 ローランドにしてみれば、自身は何度も修羅場を潜り抜け、自分に一対一で勝てる人間は数える程しか居ないだろうし、それでも良い勝負に持ち込めるだろうという自負があった。

 それは傲慢でも何でもなく、事実この国にローランド程の戦士はそうはいない。

 だがそのローランドをもってして勝てない、それどころか勝負にすらならないと思わせる。

 立ち姿こそ剣を下ろし、無防備にぼうっと立っている様にしか見えないが、こちらが斬りかかった瞬間に自分が死んでいる未来しか見えないこの黒髪の少女に彼は恐怖を覚えた。




 黒髪の少女の後方、洞窟中心部に焚火の跡があり、そこにアッシュグレイの髪を左右で三つ編みにしている子供がいる。

 保護対象のマリーとみて間違いないだろう。

 状況から察するにあの黒髪の少女が救出して、盗賊共を捕らえたのだという事は分かる。

 だが、ご丁寧に縛り上げた盗賊共をわざわざ殺そうとしていたのはどういう事だ?

 いや、盗賊共がどうなろうが知った事ではないが、()()と敵対する様な事だけは避けたいもんだな……。

 一見隙だらけで、ただ立っているだけの様にしか見えんが……くそっ、まったく隙が見当たらねえ。


 勢いで声をかけたのは失敗だったか、奴らの仲間だと思われていなければいいが……。






こやつ……できるっ!?


ここまでお読み頂きありがとうございました(๑˃̵ᴗ˂̵)

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