新しい技
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今朝も宿でゆっくり朝食を摂って外出の準備をする。
緊急性の高い依頼を除いて通常の依頼は、翌日の早朝に張り出されるらしく、冒険者達は割りのいい依頼を取るために早朝の組合内は冒険者でごった返すのだそうだ。なので、敢えて時間を遅らせて組合に向かう事にした。
新品の革鎧を装備するのに少し手間だったが、何とか上手く出来た。剣を提げてバックパックを背負えば、何とか冒険者らしく見えると思う。
そして、装備を整えて冒険者組合へと向かった。
私はまだ文字が読めなくて依頼内容が分からないので、前回お世話になった受付のお姉さんこと、ゴメスティーヌさんに私でも受けれる依頼を見繕ってもらおうと思う。
組合に着いたけど……あれ? ゴメスティーヌさんが見当たりませんね、今日はお休みかな?
まぁいつもお姉さんが居るとも限りませんからね、休日だってある筈だろうし。
初対面の人に頼むのも気が引けるけど、やむを得ないか。よし!
「おはようございます」
「おはようございます。あら、あなたは……確かこの前の」
「はい、ナナシと言います」
「ナナシさんですね。私はクレアと申します。よろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします」
クレアさんは金髪ストレートの髪を肩まで伸ばした美人さんだ。年齢も私とそうは変わらないように思うが、口調も丁寧で落ち着いていて、優しそうな女性だ。
「それで、今日はどうされたんですか?」
「実はお願いがありまして……」
「私に? ええ、私に出来る事ならもちろん構いませんが」
なんだか緊張してきた。
「あの、良かったら私でも受けれる依頼を見繕ってもらえないかと思いまして」
「ふふふ、そういう事でしたか。そうですね、早朝の他の冒険者の方が多い時は難しいですが、今ぐらい落ち着いていれば依頼が重なる事もありませんので大丈夫ですよ。少し待っていて下さいね」
「すいません、よろしくお願いします」
よかった、なんとか依頼は受ける事が出来そうだ。
どんな依頼があるか楽しみだな。
「お待たせしました。そうですね、Dランクで初依頼ですと……ホーンラビットの納品などはいかがでしょう?」
ホーンラビットは初耳ですね。
「この依頼は今の時期ですと常時依頼となっていますので、もし獲物を狩れなくてもペナルティも有りません。報酬は、一羽銀貨一枚ですね。ホーンラビットのお肉は食材として需要がありますので、主に食用となるんですよ。ただ、注意して頂きたいのは現地で最低限の下処理をして頂く必要があります」
「下処理ですか?」
「はい、上手く解体出来ていれば査定額が上がりますが、下手にやってしまうと価値が下がってしまいますので、殆どの冒険者の方は血抜きだけして持って来られる方が多いですね。角や毛皮にも利用価値がありますので。その辺りも難しい要因の一つですね」
血を見るのは大分慣れたし、この前ファングボアの血抜きしているところを見てたからやり方は何となく分かるけど、実際にはやった事ないからなぁ……どうしよう。
でも、このくらい出来ないと冒険者としてやっていけないか……。
「分かりました。ではその依頼にします」
「ありがとうございます。ホーンラビットは割とどこでも生息してはいますが、最近は北門から出て北西に三十分ほど進んだ先に見える森の周辺でよく確認されているようですね。何か質問はありませんか?」
とりあえずホーンラビットの特徴や習性などを一通り聞いてみた。
「――そうなんですね、分かりました。色々と教えてもらってありがとうございます」
「いえ、これも仕事ですので。素材の納品はあちらのカウンターで買取していますので、よろしくお願いします。くれぐれも無茶だけはしないで下さいね」
「はい、行って来ます」
北門を出ると、行商と思われる人や馬車が入街を待って列をなしていた。
街道を外れて、北西の方向にのんびりと歩く。
特に何か面白い物がある訳でも無いけど、こうして自然の景色を見ながら歩くのも新鮮な感じがしてワクワクする。
そうして暫く歩いていると、少し先の方に森が見えてきた。
あの森がクレアさんが言っていた森だろうと当たりをつけ、周囲を見渡してみるが、草原が広がるばかりでホーンラビットらしき生物は見当たらない。
まあ、そんなに簡単に見つかれば誰も苦労はしないか。
三十分程歩いて探してみたが獲物は見当たらなかった。それどころか周辺には三組の若い冒険者パーティがいたので彼らも同じ獲物を狙っているとみて間違いないだろう。もしかしたらこの辺のホーンラビットはもう狩られてしまっているのかもしれない。
ホーンラビットは臆病な性格で色んな所に穴を掘って身を隠す習性があるとの事だった。それなら身を隠せる場所が多い森の方が多く生息していそうな気がするので、今度は森の中を探す事にした。
森を少し散策して分かった事がある。
それは、隠れられる場所が多い分、見つけるのも簡単じゃないという当たり前の事だった……。
ここの森は魔の森とは違って食べられそうな、というか食べられる木の実や果物、綺麗な花など森の恵みに溢れているので、時間を忘れて楽しめる。
そう、私はいつの間にか当初の目的を忘れてフルーツ狩りを楽しんでいた。
いやいやいやいや、何やってんの私! このままじゃ手ぶらで帰る事になっちゃうじゃん!
それは何だか恥ずかしい。何かいい作戦はないものかと考えてみた。
うーん、魔物探知機みたいなのがあればいいんだけど。そんなの都合良くある訳ないしなぁ。
今まで自分から魔物を探すなんて考えた事なかったもんな。魔力を一気に放出して警報機なら出来るんだけど……。
魔の森にいた時に、自分の魔力量を調べる為に魔力を放出して実験をした。
その結果は無限に湧き出てくるというよく分からない結論になったのだが、それよりも魔力を一気に放出したせいで、魔物達が驚いて逃げ回ってしまった。その時はまさに警報機だった。しかも、一気に解放すると悪魔に戻っちゃうし。
お陰でしばらくは魔物と出会わなくなったけど、威嚇以外には使えないし、威嚇に使うとしても対象に魔力を向ければいいだけだしね。
あと、多分生態系にも良くない気がする。ローランドさん達もトロールをあの辺りで見たのは初めてだとか言ってたし、絶対とは言い切れないけど何らかの影響があった可能性だってある。
んむぅ……何考えてたんだっけ……あ、探知機か。
魔力で探知できたら良かったんだけど、そんな便利機能付いてないし、魔力に感覚でも無いと……ん? ああ、感覚はあるか……。
試しに手刀の先に魔力で形成した刃で物に触れると、確かに感触があった。
……あるんだけど、これ手にくっ付いてるから分かるだけだよね……いや、ちょっと待って……という事は、逆に考えたら身体から離れなきゃ問題無いって事なんじゃない……!? ヤバい私天才かも!?
身体から離れないように魔力を放出したら遠くの物に触れるって事だよ! てことは、えっと……一気に放出するとダメだからゆっくり魔力を広げて、相手に気付かれてもダメたから極限まで薄くすれば魔力量も抑えられて姿が戻る心配もなくなる……!?
早速意識を集中して、魔力を全方位に薄く伸ばすように広げていく。
ふぁー!? しゅごいー! 何これえ!
せいぜい一メートル程度しか広げていないが、触れた物を全身で包んでいるような感覚で、触れている物の形状や些細な動きが目で見るよりも事細かに分かった。そのお陰で私の言語野はまたしても死亡した。
なんて余計な事を考えていると――
あ、切れた。
はぁ……やっぱり人間状態だと魔力の扱いが難しいな。この状態を維持するだけでこんなに難しいのか。
もう一度、今度はもっと集中してもっとゆっくりやってみよう。
ゆっくーりゆっくーり、うすーく薄く。
あ、何かいけそう。
だけどまだニメートル程度だ。最低でも十メートル程度は欲しい。
ゆっくーりゆっくーり、うすーく薄く。
三メートル。
ゆっくーりゆっくーり、うすーく薄く。
四メートル。
いい感じです!
あっ、高さはこれくらいで充分かな。あとはこのまま周囲にだけ広げていけば……ん?
魔力探知の範囲が五メートルに差し掛かろうとしたところで、私の後方に五つの人型の反応がある事に気付いた。
この感じは……あぁ、ゴブリンがこんな感じだったかな?
少しずつこっちに来てるように感じるけど……なるほど、木の陰に隠れて来てるんだ。
そのまま少し待って、残りニメートルとなったところで後ろを振り返る。と同時に先頭のゴブリンが厭らしい笑みを浮かべて棍棒を振りかぶり、私に殴りかかって来た。
「ギャギャギャッ」
素早く剣を抜き、振り上げた腕ごと首を叩き斬った。そして、残る四匹のゴブリンも同様に一太刀で首を落とした。
胴体と別れ、ボトリと落ちたその首は未だ笑った表情のまま徐々にその瞳から光が失せていった。
戦闘は一瞬で片付いた。
依頼は受けてないけど魔石は売れるし、魔物の討伐証明にもなり、昇格ポイントにも加算されるので悪い事は無い。あとは死体から魔石を抜き取るだけなのだが……正直やりたくない。
これまでは倒して終わりだったけど、私は冒険者としてやっていくのだから我儘も言ってられない。
意を決し、ゴブリンの胸部にナイフを突き立て、ぐりぐりと肉を削ぎながら魔石を探す。
「うっぷ…………はぁはぁ。危なかった……。これ結構キツいなぁ……」
しばらく探っているとナイフの先に硬い感触を感じたのでそれを抉り出すと、淡い紫色に輝く小指の爪程の大きさの石が出てきた。
魔石だ。
血肉に塗れているけど確かに魔力を感じる。
ちょっとした達成感を感じるが、たった一つ魔石を取り出すだけでも結構な時間と精神的ダメージを負った。
軽く汚れを拭き取り小袋に入れ、一つ深呼吸をして次のゴブリンに取り掛かった。
そこでふと魔力が視える事を思い出して、ゴブリンの体内で最も魔力が集中している箇所を抉ると簡単に魔石が見つかった。
正確な場所が分かるようになった事で、作業時間が大幅に短縮され、私の精神衛生にも少し優しくなって思っていたよりもかなり早く終わらせる事が出来た。
この子殴ってばっかりだから新技覚える過程でもう少し賢くなって欲しかったのですが、読み返したらアホの子みたいになってて泣いた…
久しぶりの戦闘なのに一瞬で終わらせてごめんなさい。ほんとに苦戦する姿が見えないんだ…
ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)
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