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名無しの悪魔ちゃん  作者: こめっこ
第2章 教育冒険者
15/35

持たざる者

またまた高評価ありがとうございます(*'ω'*)

ブックマークの登録もありがとうございます!


 冒険者組合で一悶着あったが、なんとか無事に身分証を手に入れる事が出来た。

 盗賊の報奨金も全額貰ってしまって、何だか申し訳ないと思っていた所に今度は謎のお金をフィーさん達が渡してきた。


 賄賂ですか……?


 詳しく聞くと、このお金はトロールやファングボアの討伐報酬と素材を換金したものだそうだ。

 それを私に全額渡そうとしたので、これは流石に受け取れないと、しばらく押し問答をした末に今回は授業料として何とか納得してもらった。




 組合を出ると、外は既に日が落ちていた。

 昼間にはいたるところに見かけた出店もいつの間にか見当たらなくなっている。


 酒場や宿屋から漏れ出る光と早めの酔客の喧騒が聞こえるぐらいで、昼間の活気が嘘のようになりを潜めている。


 大通りには、魔導ランプと呼ばれる魔石を利用した街灯が通りをほんのりと優しく照らしている。

 この魔石を使った街灯は魔石に光の魔法を付与する事で光っているそうだ。

 通常は魔力が抜けてしまえば光は消えてしまうそうだが、街灯に取り付けられている板が大気中にある魔素を吸収して、それを魔石に送る仕組みがあの街灯にはあるそうだ。

 ソーラーパネルの魔素版かな?


 この際なので宿までの道中に物の物価を尋ねてみた。

 出店などで売っている串焼きなどの食べ物が一つ鉄貨ニ枚から五枚ぐらいで、高いものでも十枚、つまり銅貨一枚程度だそうだ。

 お金は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨となっていて銅貨十枚で銀貨一枚といったように十倍ずつ価値が上がっていくようだ。

 普通の平民だと大金貨や白金貨を持つ事はまず無いので、高額を表す時は金貨で表すのが普通だそうだ。




 他にも些細な疑問を聞いていると『竜の牙』の皆さんがアベリアの街でよく利用している宿に到着したようだ。


「着いたわよ」

「ここですか……? 看板とか出てませんが……」

「ふっふっふ、ここはね、知る人ぞ知る隠れ宿よ!」

「ナナシさん、ここの宿にはお風呂があるんですよ」

「そうよ、しかも銅貨五枚でお風呂付きの宿なんて他にはないわ」


 ほとんどの宿屋にはお風呂などなく、桶に汲んだ水を濡らして身体を拭くのが一般的でお風呂は贅沢品なのだそうだ。

 中でもこの宿は隠れ家的な場所で、知る人ぞ知る宿屋という事だ。

 私もいい加減お風呂に入りたいと思っていたのでありがたい。


 皆さんに促され中へ入ると、まず目に入るのはテーブルと椅子で、そこで数名の客が食事を摂っている。

 正面にはカウンターがあり、そこが受付になっている。

 受付には多分私と同い年くらいで、金髪をポニーテールにした少女が立っている。


 男性陣は既に手続きを済ませ、二階へと上がって行った。


「おかえりなさい、フィーさん、レイラさん、と……そちらの方は初めてですよね? 森の泉亭へようこそ!」

「ただいまかえりました」

「ミアちゃんただいまー」


 慣れた手つきで二人に鍵を渡しながら、親しげに挨拶を交わしている。


「はじめまして、えっと宿泊をしたいのですが」

「この子はナナシちゃんっていうの、私達の恩人なのよ」

「えっ?」

「ナナシさんは自覚が無いみたいですが、あの場に居たのがあなたでよかったと本当に感謝しております」


 ここまで手放しで感謝されると恥ずかしくなってくる。


「そうなんですね! フィーさん達の紹介なら大歓迎です。それでは説明しますね、一泊が銅貨五枚になります。食事は別料金で注文制になります。あとお風呂がありますが、大体夕方から利用出来ます。これは宿泊料金に含まれてますので利用時間だったらいつでも大丈夫ですよ」

「お風呂はあたしが案内するわ」

「いいんですか?」

「忙しいんでしょ? どうせ一緒に行くんだからいいのよ」

「では、お言葉に甘えてお風呂の案内はフィーさんにお任せします」

「ええ、任されたわ」

「よろしくお願いしますフィーさん。それじゃあ……とりあえず十日間で、えっと、銀貨五枚ですかね、はい」

「はい、たしかに。ではニ階にある五番の部屋を使って下さい。これが鍵になります。」

「ありがとうございます」

「またあとでねミアちゃん!」

「はい! ごゆっくりどうそ」


 部屋の鍵を受け取り、二人に連れられカウンター脇にある階段を上がる。


「ナナシちゃん、荷物置いたらすぐにお風呂いくわよ」

「あ……あの……」

「ん? どうしたの?」

「よければですが……着替えを貸してもらえないかなあ、と……」

「ええ、いいわよ。少し大きいかも知れないけど着れない事はないと思うわ」

「それでしたら、私のを差し上げますよ」

「え?」

「あー、そうね。レイラなら背丈も同じぐらいだしね」

「でもいいんですか? 服は高価だって」

「ええ、ですがお気になさらないで下さい。最近()()胸のあたりが苦しくなってきたので買い換えようと思っていたので遠慮なさらずどうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

「…………」

「ふふ、どういたしまして」


 レイラさん、またって言いましたか……?

 あなたはまだ進化を残しているというのですか!

 見てください……フィーさんの瞳から完全に光が消えてしまいましたよ。

 悲しいけど、これが持つ者と持たざる者の現実なのだ。



 荷物を置くために部屋に入ると、ベッドと小さな机があるだけのシンプルだが、綺麗な部屋だ。

 私の荷物は盗賊のアジトから持ってきた肩かけカバンとショートソードだけだ。

 カバンには食料を詰め込んでいるので正直なところ邪魔でしょうがなかった。


 コンコン


「ナナシちゃんお風呂いくわよー!」

「はーい!」


 ドアを開けるとフィーさんとレイラさんが着替えを持って待っていた。

 レイラさんから服を貰い、お風呂セットも借りて三人でお風呂のある離れに向かった。


 離れは二つあり、ちゃんと男性用と女性用で別れているようだ。

 ドアを開けると目の前に衝立があり、中が見えないよう工夫されていた。


 今は私達以外の入浴客はいないみたいですね。


 この世界に来てからは川で水浴びをしただけだから、あったかいお湯が待ち遠しいな。

 さっそくと今や着慣れたボロボロのドレスを脱ぎ、浴場へ向かおうとすると、これでもかと主張する二つのメロンさんが視界に入ってしまった。


 まさかこれほどとは……フッ、世界は広いぜ……。


 気をとりなおし浴場に向かう。

 浴場にはそこそこ広い洗い場があり、浴槽は五人位なら一緒に入っても余る程に十分な広さがあった。

 洗い場には魔石がはめ込まれたが設置してあり、ボタンに触れるとお湯が出た。

 桶にお湯を溜めて、濡らしたタオルでひと通り全身を洗う。

 さっぱりしたところで念願のお風呂に向かい、足先をちょんっと湯船につけて温度を計る。


 うん、いいお湯加減です。

 では失礼して……。


「あ゛〜〜〜」


 生き返るううう!

 風呂は命の洗濯とはよく言ったものです。

 私は今この瞬間の為に生きていると言っても過言ではないでしょう。


「ちょっとなんて声出してんのよ」

「ふふふ」

「すみません、つい……」


 乙女にあるまじき声が出てしまいましたが、異世界に来てから初のお風呂だ。

 気が緩んでしまうのも仕方ない事なのです。


「フィーさん、レイラさん、今日は何から何まで本当にありがとうございました」

「何よあらたまって、さっきも言ったけどあたし達も助けられたんだから気にしないでいいわよ、それに凄いものも見れたしね」

「凄いもの……ですか?」

「そうよ。トロールは殴り飛ばすわ、木剣で壁を壊すわで今日は驚きの連続だったわよ」

「お恥ずかしい限りで……」

「そうですね。私もナナシさんが素手でトロールを倒した時は夢でも見ているのかと思いました」

「ほんっとよね、私も夢かと思ったわ。まさかトロールを一撃で殴り倒すなんてどんな冗談よ。あんな事ローランドやドラガンでも無理だと思うわ」


 うっ……これは反省ですね。


「それだけナナシさんが身体強化を極めていらっしゃるという事だと思いますが、あれ程の強化でも見た目や魔力にも特に変化も見られなかったので……不思議です」


 まあ、身体強化どころかほぼ肉体性能だけで殴ってただけですし。

 この世界の人は魔力を感じ取れるみたいだし、魔力を抑える練習をしていて良かった。

 私は悪魔状態で魔力の扱い方を感覚で覚えていたから人間の姿でも比較的簡単に魔力を操作出来るようになったんだろうな。

 感覚が分かっていても何か抵抗があって上手く出来ないんだよねえ。

 つまり、それだけ魔力操作が難しいから普通の人は身体強化も自由に出来ないんだろうな。


「にしても、あたし達より若いのに達人級の身体強化が使えるなんて。はふぅ……よっぽど凄い師匠にでも教えてもらったの?」

「いえ、一応は独学で色々やってたら何となく出来るようになったので」

「独学で? しかも何となくなんてそれこそ驚きよ……」

「あ……あはは。え、えーっと、あの」


 ど、どどどどうしよう。


「はぁ、いいわよ。深くは聞かないから安心してちょうだい」


 助かったー!


「ナナシさんはこれからどうなさるのですか?」

「あ、はい。しばらくはゆっくりしようと思います。それで落ち着いたら組合の依頼も受けてみようかと思ってます」

「私達も暫くは休暇ですので一緒にいられますね。分からない事があったら何でも聞いて下さいね」

「はい、その時はよろしくお願いします。あ、どこか文字を教えてくれる所はありませんか?」

「それでしたら私で良ければお教えしますよ」

「いいんですか!?」

「ええ、構いませんよ」

「ありがとうございます!」


 明日から次の依頼に出るまでの間、レイラさんに文字を教えてもらえるようになった。


 これで一つ問題が解決したね。

 生活雑貨も必要だし明日はとりあえず買い物に行って街ブラでもしようかな?

 仕事用の道具? も必要だろうし。

 うーん、お金大丈夫かな……。

 今はまだお金に余裕があるから問題ないけど、使えば当然無くなるからねぇ。

 これは早めに依頼を受けて仕事に慣れておいた方がいいかな。

 あんまりゆっくりも出来なそうな気がしてきた……。



 少し長湯しすぎたみたいで、二人とも若干のぼせてしまったようですので、そろそろ上がりましょう。

 それに、この大きなお胸様が私達の何かをすり減らしてくるので、これ以上は危険だ。






はしたない声出すのは止めなさい\( 'ω')/


ここまでお読み頂きありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)

良ければ感想、レビュー、ブクマ、評価など辛口評価、辛口コメントもお待ちしております。

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