表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

第3話:【ガンロックではないゴーレムだ】

 ガンロック先生――もといゴーレムが、氷を砕きながら再び立ち上がる。


『ォォオオオオオ……!!』


「いや生きてんのかよおおおおおお!?」


 叫びながら、ナナシは反射的に後ろへ飛び退いた。


 バキバキと音を立て、砕けた氷が雪原へ散っていく。


 だが――おかしい。


「……ん?」


 違和感。


 凍り付いていたゴーレムの身体、その亀裂の奥。


 黒い何かが、蠢いている。


 じわり、と…まるで岩の内側から滲み出るみたいに、黒い筋が広がっていく。


「……黒い?」


 ナナシが目を細める。


 だが次の瞬間。


 イリスの声音が、鋭く低くなった。


「……アレはもしかして“メルム”か…?」


「めるむ?」


 聞き返すより早く――


 バキッ!!


 氷が、内側から砕け散った。


 ゴーレムの身体を覆っていた氷が無理矢理押し広げられ、砕けた隙間からドロリと黒い液体が溢れ出す。


「っ……!?」


 粘ついた黒。


 液体のようで、液体じゃない。


 生きているみたいに蠢きながら、岩の隙間を這い回っていく。


 そして、ゴーレムの全身へ、黒い筋が走った。


 ドクン。


 ドクン。


 不気味な脈動。


『……ォ……オォォォ……』


 唸り声が変わる。


 さっきまでの単純な怪物の声じゃない。


 ノイズ混じりの、歪んだ音。


 まるで別の何かが、中から喉を使っているみたいだった。


「うわぁ……絶対ヤバいやつじゃんアレ……」


 ナナシの頬が引きつる。


 目の前のそれは、もうただのゴーレムじゃない。


 岩の隙間から黒が滲み、ところどころ溶けたみたいに歪んでいる。


 動きはぎこちない。


 なのに――妙に生々しかった。


「下がってろ」


 イリスが一歩前へ出る。


 淡い銀髪が、雪風に揺れた。


「アレはもう普通のゴーレムじゃねぇ」


(そうか……アレ、ゴーレムっていうんだ……)


 そんな事を考えてしまった、その瞬間だった。


 ゴーレムの頭部が、ゆっくりこちらを向く。


 同時に、黒い筋が脈打った。


「……っ」


 ナナシの背筋に寒気が走る。


 理由は分からない。


 だが本能が告げていた。


 ――アレはダメだ。


 視線を合わせてはいけない何かだと。


「……なんなんだよ、それ」


 思わず呟いた、その瞬間だった。


 左腕に、違和感が走る。


「……ッ!?」


 ドクン。


 鼓動。


 心臓とは違う。


 もっと奥。


 もっと深い場所から、“別の何か”が脈打っている。


 視界の端が、わずかに歪んだ。


 左腕が、熱い。


 いや、違う。


 熱いのに、冷たい。


 矛盾した感覚が、腕の奥を駆け巡る。


「……なんだ、これ……」


 思わず左腕を掴む。


 すると、黒い筋が、脈打った。


 まるで――呼応するように。


「っ……!」


 その瞬間。


 世界が、反転した。



 燃えている。


 空が裂け、大地が崩れている。


 黒い“何か”が、世界そのものを覆い尽くそうとしていた。


 絶望みたいな光景。


 その中心に、一人の影が立っている。


 左腕には、異形の籠手。


 禍々しく、黒紫色に脈打つ装甲。


 そして右手には――白い鍵。


 影が、ゆっくりと鍵を掲げる。


 籠手の一部が、スライドする。


 現れた鍵穴へ、白い鍵が差し込まれ――


 光が、溢れた。



「――ッ!?」


 現実へ引き戻される。


 荒い呼吸――雪の冷たさ、目の前には――イリス。


「……おい、どうした」


 警戒した声。


 ナナシは答えられない。


 左腕が、熱を放っていた。


 ドクン。


 再び脈打つ。


 次の瞬間――


 黒紫色の籠手に、赤い光が走った。


「っ……!?」


 装甲の隙間から、まるで血管のように赤い線が浮かび上がる。


 籠手が、低く唸った。


 ギ……ギギ……


 内部で、何かが軋むような音。


 まるで――


 “目覚めようとしている”みたいに。


「……なんなんだよ、お前……」


 ナナシが息を呑む。


 その瞬間。


『ォォオオオオオオオ!!!』


 メルムに侵食されたゴーレムが、大きく咆哮した。


 同時に。


 左腕の籠手が、さらに強く脈打つ。


 まるで――

 “敵”を見つけたみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ