表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

第11話:【胡散臭い案内人】

 リガンが軽く背を向ける。


「はあ…まあいっか!それじゃあ〜俺と一緒に――」


 その言葉が終わるより先に、イリスが踵を返した。雪を踏みしめる音が、乾いた空気に小さく響く。


「行くぞ」


「え、ちょっとイリス!どこに――」


「決まってんだろ。ここにいても面倒しか増えねぇ」


 ぶっきらぼうに言い捨て、そのまま歩き出す。迷いのない足取りだった。


 ナナシは一瞬遅れて、慌てて後を追おうとする。その背中に――


「イリス〜〜!キミも一緒に来てくれないと困るんだよぉ〜〜!」


 間延びした声が森に響いた。


 イリスの足が止まる。わずかに肩が揺れ、ゆっくりと振り返る。


「……あ?」


 低く、明らかに機嫌の悪い声。空気が、ほんの少しだけ張り詰める。


 だがリガンは気にした様子もなく、ひらひらと手を振りながら近づいてくる。


「いやいや〜ほんと〜に!困るんだって〜!」


「何がだ」


「取り敢えず俺が困るのよ〜!」


「そうか、行くぞナナシ」


「え?え?…どういう事!?」


 ナナシが思わず声を上げる。リガンは足を止め、少しだけ肩をすくめた。


「じゃあこう言えばわかるかねぇ。俺はダンに頼まれて来たんだよ?」


 その一言で、空気が変わった。イリスの目が、わずかに細くなる。


「ダン・オルグレスト」


 名前が落ちた瞬間、周囲の空気が一段冷える。


「……チッ。めんどくせぇ名前出しやがって」


「頼まれてるんだよ。迎えに行けってさ、心当たりあるでしょ?」


 リガンはニヤニヤと笑う。


「ほら、あの件。ダンがお怒りだよ〜?」


「………チッ……アレは借りただけだ……あとで返そうと……」


「はいはい〜」


 軽く流す。


 イリスはしばらく黙る。雪が静かに落ちる音だけが、その間を埋める。やがて――


「……はぁ……わかったよ。どうせ断っても面倒になるだけだしな」


「助かる〜!」


 パン、とリガンが軽く手を叩く。その音が妙に軽く響いた。


 ナナシは二人のやり取りを見ながら、完全に置いていかれていた。


(どういう流れ……?)


 理解が追いつかない。リガンがこちらを見る。


「で、そちらさんは?」


「え、自分?」


「だってどう見ても一人でどうにかできるタイプじゃないでしょ〜?」


「ぐっ……」


 図星だった。ナナシは思わず言葉を詰まらせ、イリスを見る。


「自分、ついてっていいのか?」


「好きにしろ。ただし、ついてこれないなら置いていくだけだ」


「厳しい!」


「事実だろ」


「自分の体力の無さを否定できないのがつらい!」


 ナナシは頭を抱える。リガンがくすっと笑い、そのまま歩き出した。


「んじゃ、いこうか〜。いざ、“ヴェルザン自由連邦”へ!」


 迷いのない足取りで進み、イリスがそれに続く。


 ナナシは一瞬だけ立ち止まり、振り返る。焼けた地面、崩れた痕――ついさっきまでの戦いの名残。だが、もう何も動いていない。


「……ま、いいか」


 小さく呟き、胸の奥に残る違和感を押し込める。


「おい、本当に置いてくぞ」


 前からイリスの声。


「あ、待って!」


 ナナシは慌てて駆け出した。二人の背中を追い、雪を踏みしめながら走る。


 前を行くのは、軽い調子の男と、仮面の少女。そのどちらも、まだよく分からない。


 だが――ナナシは、足を止めなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ