第30話 ミナの決断①
「ソラ君、ソラく~ん、起きて~朝だよ~」
その声で目を覚ますと、目の前にナルの顔があった
「ナル!」
俺は昨日のことを思い出して顔が赤くなる
それをみてナルがいたずらっぽく微笑んで言った
「またしてあげようか?」
「え!?」
その時、声がかかった
「ソラさん、申し訳ないのですが、お話してもよろしいですか?」
リンの声だった
俺は慌てて起きて周りを見る
そこにはリンが立っていた
「お見せしたい場所があります、少し遠いですから、馬車に乗って行きます、こちらへ」
そう言ってリンは歩き出す
慌てて俺はベッドから降りてリンを追う、ナルも俺の横についてくる
それから組合の外に出て、リンと一緒に馬車に乗り、しばらく揺られた
「どこまで行くんだ?」
「サラの研究所までです」
「サラさんの?なんでそんなところに?」
「…わたくしも信じがたいことです、着いてからお話した方が良いでしょう」
「それよりナルさん、今のミナさんの魔法について、知っていることを教えてください」
「あなたは一度戦ったはず、ならばその魔法を見ているでしょう」
「リンと戦った時とあまり変わらなかったよ」
「ただ、光の矢が大きくて、威力が強くて、速くて……」
「それと、あなたの魔法を真似てた」
「そうですか……」
「ねえ、あなた、何か知ってるんじゃないの?」
「わたしだって魔法使いだから分かるよ」
「魔法って真似ようと思っても真似られなくない? 扉から教わらないと」
「なんでミナは、他人の魔法を真似られるの?」
「これから行く場所に答えがあります、おそらくナルさん、あなたの魔法は真似られなかったのでは?」
「え?……たしかに、私の魔法は真似てなかったけど」
「先にお話しできることがあるとすれば、サラのことでしょう」
「サラさん?」
「私とサラはかつて、同じ師の元で研鑽を積む姉妹弟子でした」
「わたしたちが師から受け継いだ研究テーマは同じ」
「魔法生物の生成です」
「生物?」
するとリンの肩に黒猫が飛び乗る
「そう、この子のような魔猫もその一つです」
「しかし、この研究には致命的な問題があります」
「器を魔法で作り出すことはできる、でも魂を作り出すことはできない」
「そして、魂がなければ器はすぐに自壊する」
「魔猫はその問題を解決した一例です」
「この子には魂はありません、私と魂を共有することで存在を保っています」
「ちょっと、良く分からないんだけど」
「それと……ミナがああなったことって、何の関係があるの?」
リンは静かに答えた
「着けば分かります」
それからしばらくして、馬車が止まった
俺たちはリンの後を追って研究所の中へ入る
通路は長いあいだ放置されていたようで、ひび割れや汚れが目立っていた
人の気配はなく、ひっそりとした空気が奥まで続いている
やがて、俺たちがたどり着いたのは明るい部屋だった
ここだけは別世界みたいに綺麗で、機械のようなものが立ち並んでいる
大きな筒状のガラスが二つあり、カプセルのようになっていた
そのうちの一つには人の影があった
リンがそのカプセルに目を向けて言った
「あれが、ミナさんの本来の肉体です」




