第29話 ミナとナル②
「いいよ、はやくかかってきなよ」
「最初に一撃当てた方の勝ち! じゃ、いくよ!」
ナルの周辺に赤い砂が現れ、波打ちだす
その上には、沢山の赤い針が浮かんでいた
ミナの周辺にも、大量の光の矢が現れる
前に見たものと同じだ
でも、その数は前よりさらに多い
俺は不安に思って言った
「これ……大丈夫かな……」
すると二人の魔法の激突が始まった
物凄い音と衝撃が響く
空中で赤い砂と光の矢が、轟音をたてて打ち消し合う
地面が削れ、二人の周りの地形まで変わっていく
「ちょ! ちょっと、二人とも! やりすぎだよ」
俺の声は届かない、俺の周りの地面まで削れて、土が飛び散った
見ると、俺の前に座っていたムギが、炎を出して俺を守ってくれていた
するとミナがナルに向かって走り出した
ミナは一瞬で間合いを詰め、光の鎌でナルに切りかかる
ナルがにやりと笑って言った
「それ! やると思った!」
そうナルが言うと、ミナの前に赤い柱が立ち上がる
ミナはその柱を鎌で両断した
そのとき、柱の中から小さな赤い球がミナの前に浮く
ッパン!
次の瞬間、その球は破裂し、周辺に針が飛び散った
咄嗟にミナは光の盾を出してガードした
止められた針は、そこから煙のように飛び散り視界を奪う
ナルはミナに向かって、右腕を地面すれすれから大きく振り上げた
ミナが反応して言った
「それ、知ってるよ」
ツララみたいな太い針が突き上がりミナを襲う
ミナが左腕を薙ぎ払うと、その場に再び光の盾が現れる
二人の魔法が衝突し、両方が壊れた
次の瞬間、ミナがナルに向かって飛び込む
そして光をまとった右拳を、ナルの顔面に向けてねじ込んだ
咄嗟にナルが言った
「やば!」
その拳に向かって、ナルの前に紫色の口のようなものが現れた
紫色の口は、拳にまとっていた光を飲み込む
だがミナの拳は止まらず、そのままナルの顔面を殴りつけた
ナルの体が大きく吹き飛ぶ
だが背後に赤い砂の塊が現れ、クッションのように受け止めて、その勢いを殺した
「いったーーーい! ひどいよ! ミナ」
「ごめーん」
「しかも、魔法でパンチ強化してたでしょ!」
「まともに貰ったら、私の頭なんか無くなっちゃうじゃん!」
「ナルだって、さっきの目潰し、ガードしなかったら私の目、潰されてたじゃん」
「顔には当たらないようにしてたもん!」
何やら……恐ろしい言い争いをしている……
周辺一帯は削り取られたように土がむき出しになっていた
俺の周辺だけは、先ほどまでの状態で、無事だった
ムギが俺の方にきて、ごろりと寝転ぶ
こいつが守ってくれなかったら……
そう思うとぞっとした
「ありがとう……ムギ」
ムギはちらっとこちらを見て、そのまま寝てしまった
二人がこちらに歩いてくる
何が面白いのか……ミナはにこやかに微笑んでいる
「ただいま~、私の勝ちだったよ~」
ナルは自分のほほを指差し、俺に訴えた
「みてよソラ君、これ! ミナが殴ったんだよ、酷くない!?」
「二人とも、お願いだから、練習は……対決じゃない方法でやろうね」
「え? なんで?」
「わたしの負けっぱなしになっちゃうじゃん」
あんな恐ろしい激闘なんか二度と見たくない……
「怪我しそうで心配だから」
「ソラ君がそう言うなら……」
「ナルじゃ、わたしには勝てないもんね」
ミナがナルを挑発する
「なによ! もう一回やろうか? 奥の手があるからね」
「わたしにもあるよ、使ったらナルなんか、すぐやっつけちゃうから」
「ま、まって! 二人とも、仲良くしようよ、怖い話しないで」
「とにかく、対決練習はこれっきりにしてね、危ないから」
「ナルが怪我したら可哀そうだからね~」
「しつこいなー」
あれ……この二人、本当は仲が悪いんじゃ……
「少し待ってて」
俺はそう言って近くにあった川まで行って水を汲んできた
その水で手ぬぐいを濡らしてしぼり、ナルに差し出す
「これで、ほほを冷やした方が良いよ、赤くなってるから」
すると俺の方をきょとんと見てからナルがにやりと笑う
「わたし、どうしたらいいかわからな~い」
「ソラ君……やって」
「え?」
「おねがい」
「わ、わかった」
俺は手ぬぐいでそっとナルの頬を冷やす
「わー気持ちいい~」
「冷やした方が治りがいいはずだよ」
「うん、痛かったのも落ち着いてきた、ありがとう、ソラ君」
「ミナって馬鹿力なんだもん、本当に痛くて」
「ナルが貧弱なんでしょ」
ミナの言葉にナルが反応し、二人の視線がぶつかる
あれ……この二人って、こんなに仲悪かったっけ……と俺は思った
「と、とにかく休憩しようよ、そろそろお昼だし、お腹すいたろ?」
「うん、ペコペコ~」
俺はバスケットを開けて中身を見せる
「わー! なにこれ~」
「サンドウィッチだよ、俺の世界でよく食べられてたんだ」
「そのまま食べられるよ」
「いただきま~す」
ナルは大きく口をあけて頬張った
「おいし~」
「具が違うのもあるんだね」
「うん、本当は食パンってので作るんだけど、この世界には無いみたいでさ、大きめの白パンを切って作ったんだ」
「食べやすくて美味しいね~、幾らでも食べれちゃう」
ミナがサンドウィッチを食べながら言った
「ほんと、違う具材を同じパンで挟んでるんだね~、わたしみたいだな~」
「え?」
意味が分からず俺は聞き返した
するといつもと違う声色でミナが言った
「ねえ、ナル」
「ん? なに」
「これ食べたら、決着つけようよ」
「ソラ君にダメって言われたでしょ、もうやめよ……」
ナルはミナに目を向けると、驚いた顔で固まった
「あなた、だれ?」




