↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/71

第4話 今日はソラの為の日②

ミナの手はまだ少し震えている


「……行こ、ミナ」


俺がそう言うと、ミナは小さく頷く


ミナがようやく離れた


次の瞬間、何事もなかったみたいに俺の手を取って、前を歩き出す


俺は木札を握り直して、指示された通路へ足を向けた


通路は細く、突き当たりにまた部屋があった


扉の横に札がかかっている。俺には読めない


兵士が扉を開けて、顎で中を示した


中は小さな部屋だった

机が一つ、椅子が二つ。壁際に水晶板みたいなものが置かれている


その水晶板の前に、長い三つ編みの女性が立っていた


姿勢がきれいで、目線が落ち着いている


女性は一礼した


「宮廷魔術師のリン・セピアです。能力検査を担当します」


声は穏やかで礼儀正しい


けれど、場がきゅっと引き締まる感じがした


リンは淡々と説明を始めた


「本来、能力検査は十二歳で市民全員が受けます」

「才能に応じた道へ進んでもらうためです」

「転生者の方も同じです」

「いまのあなたには、まずそれが必要になります」


「十二歳で……」


俺はミナを見た


「ミナも受けたの?」


「旧市街ではね。お金がなくて、誰も受けてない」


それから少しだけ声を落とす


「私は、ずっと小さいころにママがやってくれたけど。才能なし、って」


リンの瞬きが一度だけ増えた


穏やかな顔は崩れないのに、目だけがわずかに動く


「……お母様が検査を?」


声は丁寧なまま、確認する音だった


ミナは当たり前みたいに言う


「うん。ママは魔術師だったから」


「失礼ですが、お母さまの所属はどちらですか?」


「ラピス・ギルド」


リンの表情が、ほんの一瞬だけ変わった


驚きが顔に出そうになるのを、押さえたように感じた


「サラ……サラ・ラピスの娘なのですか」


問いというより、確かめるような声だった


ミナは小さく頷くだけ


リンはそれ以上踏み込まなかった


一礼して、話を戻す


「ごめんなさい、話がそれてしまいましたね」

「検査方法は“貸与”です、私が一時的に力を貸します」

「その間にステータスを表示してください」


リンは水晶板の前へ移動した


「立ってください」


俺は言われた通り立った


リンが片手を上げた


空気が急に重くなる


目に見えないものが、体の周りを撫でるみたいな感覚


「……今、貸しました」

リンが言う


「落ち着いて、頭の中で“ステータス”と念じてください」


(ステータス)


視界の端に、薄い板みたいなものが浮かんだ


自分のものなのに、自分のものじゃない感じがする


「……出た」


ミナが俺の肩を押さえつけて身を乗り出す


「出た!?」


板には短い文字が並んでいた


【名前】ソラ

【適正】工作・細工

【スキル】カウントダウン


「やっぱり!スキルがある」

「それに適正が2つも!」


ミナの顔がぱっと明るくなる


リンは淡々と言った


「適正は、向いている仕事の方向です」

「工作と細工ですから手先の作業に向きますね」

「スキルについては、説明を開いてください」


「説明?」


「スキルの詳細です」

「あなたが望めば表示されるはずです」


俺が視線を動かすと、文字が増えた


読めない俺の代わりにリンが読み始める


スキル、カウントダウン

【効果】目を凝らして見た対象物の“残り”が時間で見える


さっきの赤い数字が、頭に浮かぶ


リンが続けた


「使い方は対象を凝視すること」

「慣れれば更なる発展があるかもしれません」


リンが指を下ろした。空気が軽くなりステータスが消えた


「以上です」

リンは机の上の紙に何かを書き、滑らせた


「あなたのスキルに興味を持つ依頼主は多いでしょう」

「私からも推薦しておきます」


ミナが反射で喜ぶ


「ほら! 稼げる!」


リンは表情を崩さず、丁寧な口調を続けた


「依頼は所属ギルド宛に届きます」


リンは小さな薄い板を手に取り、俺のほうへ差し出した


番号が刻まれている。登録の証明だと分かる


「これがあなたの登録証明カードです、無くさないように」


「……はい」


俺が受け取ると、ミナがすぐ俺の手元を確認してから頷いた


落とさないように、って感じだ


「おめでとう、ソラ! 今日は美味しいもの作ってあげる」


ミナが俺の袖を引く


扉へ向かった、そのときだった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。