第19話 取り越し苦労②
ミナの目がゆっくりと開いた
俺たちは誰も声を出せず、その様子を見守る
ミナはぼんやりと天井を見つめたあと
ゆっくりと上半身を起こした
そして……
ドサッ!
また寝た
「まだねむい~」
拍子抜けしたナルが笑い出す
イナクも小さく笑った
リンのため息が静かに落ちた
「どうやら、取り越し苦労であったようですね」
リンが続ける
「ソラさん、もうしわけないのですが、ミナさんを起こして頂けますか?」
「お話したいこともありますし、何時間もまっているわけにはいきません」
「わかった」
俺はミナを起こそうと、彼女の肩を持ってゆすった
「ミナ、起きて、ミナ」
すると、ミナの目がぱちっと開いた
肩を揺すっていた俺と目が合う
ミナはしばらく固まったまま動かない
「ミナ?」
「ちょっ、ソラ!? なになに、だめ! だめだよ! だめって言われたじゃん」
すると、俺とミナとの間にナルがにゅっと入り込んで言った
「おはよう!」
「キャアア、ナル!」
驚いてミナは、ベッドから転落する
「まったく、心配して損した!」
ナルが腰に手をおいて、少し嬉しそうに言った
俺も内心ほっとしていた
ミナは変わってなんかいない、いつものミナだ
ベッドの下から、頭を出してミナが言う
「なんで私、こんなところで寝てるんだっけ……」
すると、ベッドの下で寝ていた猫がベッドに飛び乗ってきた
猫はそのまま、ミナの頬にすりよって喉を鳴らす
「あら、かわいい!」
ミナはパッと明るい顔になる
「ミナさん」
リンがミナに声をかけ、ゆっくりと頭を下げた
「手荒なことをして、申し訳ありませんでした」
「あなた!」
ミナが身構える
それと同時に、猫もリンへ向かって身構えた
それをナルが間に入って止めた
「ミナ! まって!」
「なんか、リンにも事情があったみたい、後で説明するから」
リンは淡々と話しだす
「あなた方の実力は良くわかりました、私からも推薦を出しておきましょう」
「わたくしとしては、ミナさん、ナルさん、イナクさん、皆さまに国への士官をおすすめいたします」
ナルが驚く
「し、士官?!」
「はい、それだけの素養が、あなた方には十分にあります」
するとミナが前に出て言った
「私にはラピス・ギルドがあるから、士官なんかしないよ」
「私も!」
「俺もだ」
ナル、イナクがそれに続く
「そうですか、残念です」
「今後はギルドを通して、多くの依頼が行くようになるでしょう」
「あなた方の力を必要とする依頼は数多くあります」
「ほんとに!?」
「やったー!」
ナルとミナが声を上げる
リンは小さな薄い板を三枚取り出し、皆へ差し出した
それぞれに番号が刻まれている
登録の証明なのだと分かった
「あなた方の登録証明カードです。なくさないように」
そしてリンは、少し微笑んで穏やかな声で言った
「あのようなことがありましたが、何かあれば私を訪ねてきなさい、力になります」
それを聞いてミナは少し複雑そうな顔をしたが
「ありがと」
そう答えて出口に向かって皆で歩き出した
出口へ向かう俺たちの足取りが軽くなっていく
本当にいろいろあった……
でも、三人とも無事に登録できた
しかも、みんなすごい才能を持っていたんだ
ついでに、ミナのスキルも隠したまま登録することができた
結果オーライ!
なにもかも、うまくいったんだ
組合の外に出ると、空はすっかり晴れ、青空が広がっていた
「うーーーーん」
ミナが思いっきり背伸びする、足元には先ほどの猫が寄り添っている
「ね! ね! なにか美味しいもの買って帰ろうよ! お祝いしよう!」
ナルがまくしたてるように言う
すると珍しく、イナクからリクエストが出る
「俺たち3人への祝いだ、ソラが作れ」
「異世界の料理を食べてみたい」
俺はそのキーワードに反応した
「異世界の料理!?」
あのイナクからのリクエストだ…俺は応えたいと思った
「えーー! いいね! たべてみた~い」
「ソラ君、おねが~い、作って~」
二人も、キラキラとした目で俺に期待してくる……
これは…やらないわけにはいかない!
「俺に、任せろ!!」
俺は異世界の中心で、高らかに「やすうけあい」した




