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第18話 魔法の扉①

ナルが落ち着くのを待って、俺たちはノアの面談室を通り、廊下へ出た


扉の横にいた兵士が、低い声で言う


「次、能力検査に進め!」


ナルは泣き止んだが、イナクの服の裾を握って離そうとしない


イナクは少し困った顔でナルを見る

その目線に気づいて、ナルは少し怒ったように言った


「イナク、あれ……楽しかったでしょ」


イナクは頭をかきながら、困った表情のままだ

ナルは裾を握ったまま続ける


「あんなことしてたら、いつか大けがしちゃう。二度としないで」


イナクが黙っていると、ナルはじーっと見つめ続ける


その視線に耐えられなくなったみたいに、イナクが答えた


「わかった」


それを聞いて、ナルはようやくイナクの服の裾を離した


するとミナが、思い切ったように足を止めて皆に言った


「あの!!」


俺たちはその声に振り返り、ミナを見る


「みんなに相談したいことがあるの」

「もっと早く言うべきだったんだけど……」

「どうしたらいいか分からなくて……言い出せなくて……」

「実は私……もう知ってるの。自分の能力」


俺たちはお互いの顔を見合わせた

ナルが問い返す


「どういうこと?」


ミナは思いつめるように言った


「昨日の夜、ソラの能力検査を思い出してたら、なんか……出来ちゃって……」


「できちゃうって、なにが?」


そう問われて、ミナは小さく唱えた

「ステータス」


ミナの前に、薄い板のようなものが浮かんだ


「あのときの……能力が書いてある板だ」


俺は思わず声を上げた


「うん。ソラがやってるのを思い出して、まねしてみたら……できちゃって」


ナルが身を乗り出す

「ええぇ!すごいじゃない。じゃもうミナは検査いらないんだ」

「っで、どんな能力だったの!?」


「それが…」


ミナは自分の能力板を皆に向けて見せてきた


【名前】ミナ

【適正】魔力、魔力操作、魔力容量

【スキル】結晶 王の血統


「うわぁ! すごい! 魔力の適正が3つも!」

「それにスキルが二つもある!」

「これって、絶対すごいやつだよね!?」


ナルが歓声みたいな声を上げる

それを聞いてミナが慌てて、口をおさえる仕草をした


「し、シーッ!」


俺は能力板の文字を見たまま、嫌な汗が出た

ナルとイナクも、同じところを見ている


「……このスキル、王の血統?」

これは絶対やばいものだと俺は直感した


ミナが小さく言う

「うん……これって、どう思う?」


「……やばいと思う」

俺が重い声で答える


ナルが息をのむ

「……文字通りなら……王様の親戚ってことだよね?」


イナクが短く言う

「そうなるな」


俺は喉の奥が乾くのを感じながら言った

「もし本当にそうなら……きっと知られないほうがいい」


ナルは不安そうに目を伏せた

「うん、きっと、どこかに連れていかれちゃうよ」


俺とイナクが黙って頷いた

ミナは秘密を共有して気が楽になったのか、ほっと息をついて、照れたみたいに頭をかく


「どうしよう?」

ミナが助けを求めるように言う


俺はふと思い出す

検査を受けた時、スキルは名前だけじゃなく、望めば説明が表示された


「ひょっとしたら……スキル名が紛らわしいだけで、意味は別かもしれない」

「説明、出せないか? 俺の時みたいに」


ミナはきょとんとしてから、すぐに目を輝かせた


「そっか! よーし」


ミナが能力板をじっと見つめると、文字が増えていく


スキル 王の血統

セルレア王国の王位継承権を持つ者に与えられる神の祝福

全ての能力を強化する


空気が固まった

疑いは、確信に変わった


ミナは俺たちが読み終えたのを確認すると、慌てて能力板を消した


そしてイナクが口火を切った


「帰ろう」


ナルが続く


「うん、いますぐみんなで、帰っちゃおう」


ミナが言う


「ええ~、それじゃ、二人とも登録できないじゃない」

「それに、勝手に帰ったら怒られるよ」


俺は苦し紛れに言う


「俺とミナは、体調不良で……帰った、ってのはどうだろう?」


ナルとミナの声が重なる


「それ、いいね!」


その瞬間だった


「なにがいいのですか?」


ふいに、俺たちの後ろから声がした

俺たちはビクっとして、そちらを向く


そこには、姿勢のきれいな女性が立っていた


長い薄い紫色の髪を三つ編みにしている

リン・セピア、 俺の能力を検査した宮廷魔術師だ


「あまりに遅いので、様子を見にきました」

「ミナさん、体調がすぐれないのですか?」


ミナは、目が泳ぎながら答える

「う、うん、ちょっと、今日は朝から体調が悪くてー」


……なんて嘘が下手なんだ


思い起こせばミナは嘘が下手だった、 すぐに態度に出る


俺が割って入る

「そうなんです、俺がミナを連れて帰りますから、今日は二人の検査をお願いします」


俺はミナの肩に手をまわし、二人で帰ろうと通路を戻る


「お待ちなさい」


呼び止められて、俺はどきっとした

ナルとイナクも、心配そうにしている


リンは淡々と続ける

「体調が悪いのなら、今日は見学だけでいいですよ」

「今帰ってしまうと、登録料が無駄になってしまいます」

「椅子を用意します。座って見ていてください」

「今日は私の都合で、判定を延期したことにいたしましょう」

「能力は保留となりますが、登録自体は行えます」

「あとは好きなときに、私のところへ遊びにきなさい」

「いつでも検査して差し上げましょう」


そう言われてしまうと、断るのもおかしな話だった


ミナと俺は、少し目を見合わせて、彼女の提案に従った



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