第16話 家族会議④
俺とイナクは厨房へ入り、夕食の支度を始めた
厨房から包丁や鍋の音が聞こえてくる
それを確認してから、ナルはミナに近づき、耳打ちした
「で!? 本当は、ソラ君のこと、どう思ってるの?」
ミナも小声で返す
「そういうの、分からないよ。恋愛とかしたことないし」
「はい、出た~。ミナはまだ、子どもだからね~」
「……なにそれ」
ミナが眉をひそめた
ナルはからかうように続ける
「だってさ、実はまんざらでもないんでしょ? 態度に出てるよ」
「出てない」
「出てた」
「出てない!」
ミナがむっとする
ナルは肩をすくめた
「まぁ、いいけど。ソラ君って結構よくない? 稼ぐし、嫌なことしないし、わがまま聞いてくれるし」
「……そ、そりゃ……優しくて、いい人だなって、思うけど……」
「ほらぁ~! いい人だってぇ~」
「だから、それ以上は分かんないって言ってるでしょ!」
ミナはむすっとしたまま、逆にナルに問い返した
「……じゃあ、ナルはどうなの!?」
「え? わたし?」
「ナルだって子どもじゃん」
「え~、ミナより大人だよ」
「じゃあ答えてよ。イナクのこと、どう思ってるの?」
ナルが一瞬で固まった
「……は? な、なに言ってんの急に」
ミナは少し、にやりとする
「だって絶対、イナクってナルのこと好きでしょ?」
「はぁ!?」
思いがけず声が出て、ナルは慌てて両手で自分の口を押さえた
「ちょっとミナ! 声!」
「声出してるのナルじゃん」
ミナは嬉しそうに目を細める
「ナル~、顔赤くなってるよ」
「赤くない!!」
そう言ったあと、ナルは少しの間、黙ってしまった
ナルは急にしおらしくなって、視線を泳がせた
「……だって、ずっと小さいころから一緒にいたんだよ? 私のこと、妹みたいにしか思ってないよ。私、ちんちくりんだし」
「そんなことないよ」
ミナが即答する
「……なんで分かるの?」
「分かるよ。イナクって、ナルのことばっか見てるもん」
「……見てない」
「見てる」
「見てないってば」
それからミナはあらためて聞いた
「それで、イナクのこと。本当はどう思ってるの?」
ナルは視線を逸らして、声を落とす
「だって……イナクは、家族だし」
「ずっと一緒にいたし……」
「そういうの……分かんないよ」
ミナがすかさず突っ込む
「分かんないって言った~」
ミナは嬉しそうに言う
「ほら。ナルだって、そういうの分からないでしょ。子どもだよ」
「……っ!」
ナルが詰まって、すぐ反撃する
「ミナのほうが子ども!」
「ナルのほうが!」
「ミナ!」
「ナル!」
俺とイナクは、今日の夕食のポトフが入った鍋を持って、厨房から出てきた
なぜか、ミナとナルが揉めている
「どうしたの? 二人とも」
俺が声をかけると、二人はビクっとして驚いた
「ソ、ソラ、びっくりした~」
「な、なんでもないんだよ、ソラ君」
そんな二人の様子に、俺とイナクは顔を見合わせた
食堂にはポトフの暖かい香りが広がっていた




