↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたデバフ令嬢は、無敵の厄災をじわじわ裁く ~一撃の火力はゼロですが、私の状態異常は罪深い方ほどよく効くようです~  作者: ランダムアクセス
第4章 裁きの終曲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/50

第45話 王国調律者

 厄災の爪痕が癒え始めた王都の朝。


 かつてオズワルド宰相が権勢を誇っていた王城東翼の一角は改装され、新たな国家機関――『王国調律局』の執務室となっていた。

 豪奢なマホガニーの机の上には、王都中の魔導施設から集められた因果測定の報告書が整然と積まれている。


「エルセリア様。王都第三魔導炉の監査報告書でございます。出力バランスの歪みは、先ほどすべて中和術式によって適正値へと調律完了いたしました」


 お茶を運びながら書類を差し出してきたのは、調律局筆頭補佐に就任した老魔導士バルツァーだった。


「ご苦労様ですわ、バルツァー卿。……これで、地下に無用な因果の澱みが溜まる心配はなくなりましたわね」


 私が扇を置いて微笑むと、老魔導士は恐縮したように白髭を撫でた。


「儂のような、かつて真実から目を背けて沈黙していた老いぼれを、これほどの大役に据えてくださるとは……身に余る光栄にございます」


「何を仰いますの。派手な火力信仰に流されることなく、魔導の構造と本質を深く理解していらっしゃる貴方様だからこそ、この調律局の要をお願いしたのですわ」


 私の言葉に、バルツァーは目頭を熱くして深々と頭を垂れた。


 この数週間で、王国の空気は劇的に変わり始めていた。

 王国調律局に与えられた権限は絶大だ。王都の魔導施設のみならず、全地方領の鉱山や炉、さらには神殿の聖光祭壇に至るまで、国家全域の因果を直接監査し、歪みがあれば強制是正を命じる権限を持つ。

 かつてのように「一撃の威力」ばかりを自慢し、裏で不正や事故を隠蔽する風潮は一掃された。

 いまや貴族や魔導士たちは、定期的に調律局へ足を運び、自らの術式や炉の安全性を診てもらうことを「最高のステータス」として競い合っている。


「エルセリア公爵閣下、失礼いたします!」


 執務室の扉が開き、入ってきたのは、かつて貴族院でオズワルドに同調していた財務派閥のクロイツ伯爵だった。

 かつての尊大な態度は消え失せ、汗を拭いながら深々と頭を下げる。


「我が領の鉱山魔導炉の因果検査、どうか優先して閣下に診ていただきたく……! 過去の帳簿もすべて公明正大に開示いたしますので!」


「ええ、順番通りに拝見いたしますわ。……焦らずとも、天秤は誰に対しても公平に傾きますもの」


 私が優雅に微笑んで応じると、クロイツ伯爵は「ははぁっ、ありがとうございます!」と恐縮しきりで下がっていった。


「エルセリア様、大聖堂の各教区から届いた祭壇の調律申請書、すべて精査が終わりました!」


 隣の執務机から、晴れやかな笑顔で分厚い書類を抱えてきたのはミリアだった。

 神殿の改革派と連携し、宗教施設の監査や市民からの陳情窓口を一手に引き受けてくれている彼女は、いまや調律局になくてはならない要となっていた。


「助かりますわ、ミリア。……本当に頼もしいこと」


 チ、チ、チ。

 胸元の銀の懐中時計が、一定の三拍子を刻んでいる。

 誰かを力で脅すのではなく、正しい制度と公正な調律によって、国全体が心地よいリズムで回り始めている。


 バルツァーが淹れてくれた温かい紅茶を一口啜り、私は窓辺のソファに身を預けた。

 幼い頃から孤独に積み重ねてきた重荷が、ようやくふっと軽くなり、自然と吐息が零れる。

 ――ようやく、少しだけ肩の荷が下りましたわね。


 ◇


 午後の執務が一段落した頃。


「お嬢さん、手紙が届いてるぜ」


 調律局の警護室から顔を出したガルドが、一通の封書を差し出してきた。

 封蝋に押されているのは、東部辺境の覇者――ヴァルテン女辺境伯の印章。


「ヴァルテン様からですわね」


 私がペーパーナイフで封を切ると、中から現れたのは、豪快な筆跡で書かれた短い手紙だった。


『エルセリアへ。王都の新しい制度の立ち上げ、見事な手際だったと聞いている。だが、そちらのケリがついたなら、そろそろ戻ってこい。辺境の古代遺跡から、また妙な魔導の狂いが見つかった。お前の精密な調律の腕を、領民総出で首を長くして待っているぞ』


 手紙を読み終えた私を見て、ガルドがニヤリと笑った。


「あの女傑様らしいぜ。王都の連中は公爵様を手放したくねえだろうが……あっちは完全に『うちの調律者を早く返せ』って顔だ」


「ふふっ……ええ、本当に」


 私は手紙を胸元に抱き、窓の外――遥かな東の青空を見上げた。


「王都の制度設計は、もうバルツァー卿たちだけでも十分に回りますわ。……参りましょう、ガルド様、ミリア」


 パチン。

 私は銀時計の蓋を閉じ、晴れやかな笑みを浮かべた。


「私たちが本当の信頼を築いた、あの懐かしい辺境の地へ」


読んでくださりありがとうございます!

少しでも「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の

・【★★★★★】での評価

・ブックマーク登録

で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


次回更新も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。


本作をお楽しみいただけた方は、ぜひ他作品もお楽しみください!



https://ncode.syosetu.com/n7303mt/

後ろで回復だけしていればいいと言われた元受付嬢、孤高の最強剣士を全肯定して伝説になる 〜100万人組んでくれる人がいたって、私はあなたを選びます〜



リアルオンラインを完全解約したい俺、女神の手違いで永久サ終阻止の英雄に認定される 〜カルマ残高ゼロで成仏したいのに、無欲すぎて勝手に徳が振り込まれるんだが〜

https://ncode.syosetu.com/n8256ms/



転生したら全肯定お姉ちゃんでした 〜不遇な妹を甘やかして最果ての村で幸せに暮らします〜

https://ncode.syosetu.com/n8198ms/



『くっ、殺せ!』の感情エネルギーでオーク軍を無双させるマッドサイエンティスト〜学会を追放された俺、敵地で捕虜の姫騎士を最高級バッテリーにして快適なスローライフ(※帝都は灰になりました)〜

https://ncode.syosetu.com/n0071ms/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RANKING
✨ ランキング挑戦中! ✨
ここまでお読みいただきありがとうございます!
「面白かった!」
「続きが気になる!」
と思ったら、
ページ下部の
ブックマーク追加 と ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★
で応援していただけると、
作品のランキングが上がって執筆速度が爆上がりします!
※★1個や2個からでも大歓喜します!
皆様の1票が何よりの励みになります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。