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とある記憶 3


「…なぁ、今度この小屋に俺の…、…ダチ、連れてきてもいいか?」

「んぇ?」


四角に切られたトーストに新鮮な葉野菜、干し肉と焼いた目玉焼き、チーズと明らかな容量オーバーなグザイを強引に挟んだサンドウィッチを頬張るXXXを前に。テーブルに肩ひじを突いてその様子を眺めていたチトは切り出した。目を見開いて間抜けな声と共に暫くフリーズしていたXXXは不意に弾かれたように口の中のものをかみ砕き、ごくりと牛乳と一緒に飲み込んで大きく息を吐いた。


「チト君にお友達…!?」

「クソ失礼な反応だなおい」


青天の霹靂、そう言わんばかりの表情のまま告げられた反応に視線をそらしてチトはため息をつく。事実、チトが友人と呼んでも問題がない存在は目の前のXXXを除いて世界で一人しかおらず、逆に言えばチトにとって世界はXXXとその存在、それからその他と言う対人関係が保たれていることに他ならないのだが、流石にそれ以上突っ込むのは野暮だろう。ここ最近で唐突に距離を詰め友人と呼べる立場を築いたXXXに、チトがそんな唯一だった存在を紹介したいと考えることはある意味自然だったのかもしれない。とは言え、XXXの反応だって間違ってはいない。これまで一度だって二人のやり取りの中でその友人の存在が出たことはなく、チトが完全に孤独な存在だと思い込んでいたのだ。まぁ実際友人と呼べるかどうかは曖昧な関係性であるので、いないと言われてしまえばいないのだが。


「ソイツは世界中を旅してる森のエルフなんだけど、結構変わり者でさ。エルフと言えば基本調査別主義で人間を平気で見下してるけど、アイツはむしろその逆。人間が使う魔法とか技術に興味津々なわけ。俺も偶然魔法使っていたところで遭遇して興味持たれて、なんだかんだで不定期で顔を合わせる関係になったんだよ」

「…へぇ~、つまり人間と魔法が大好きなエルフ、って事?」

「すごく良く言えばそんな感じ。お前も結構珍しい魔法とか使うだろ?相性は悪くないんじゃないかと思って」


小首をかしげながらチトの言葉を聞くXXXの表情は無であり、その思考回路は一切読めない。確かに突然の提案だったとはいえ、何を考えているのかさっぱり分からずどうした者だろうかとチトは頬を掻いた。


「あー…いやだったら別にいいぞ。なんとなく合うかもなー、って思っただけだし」

「……チト君の、お友達だもんね。分かった、会ってみるよ!」

「無理してねーか?」

「んーん、XXXも少しはね、変わりたいってずっと思っていた訳ですよ」

「…そ。じゃ、また次街行くときに連れて帰ってくるわ」

「うん!」


チトは頻繁ではないとはいえ未だ見ぬ書物を求めて街へ降りることが多い。一方でXXXはチトが知る限り一度だって小屋から大きく離れたところを見た事がないのだ。周辺の魔力を解析しても、XXXがこの小屋周辺に縛られているような感じはしない。つまりXXXは自らの意思でこの場所に留まっているのである。初対面の時XXXは独り暮らしが退屈だ、とこぼしていた。チトにとってもよく分からないところが多い例の友人がXXXにとってプラスになったらいいな、そんな思いがなかった訳ではないのだ。どうしてか読めない表情を強引に笑顔に作り替えたXXXに違和感を感じながらも、チトはそれを追求することができなかった。これ以上深く関われば、XXXが離れていってしまうような気がしたから。


皿を洗ってくる、と体の向きを変えたXXXの背中を、チトは暫く黙って見詰めていた。


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