表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/35

11話 逆転?


最早本当にやばい己以上に慌てふためくオルコスの姿に逆に冷静さを取り戻した葵は、無意識で親指の爪を噛みながら考え込む。元より、薄々可能性があるだろうと考えてはいた事なのだ。チトの説明からすれば魔法学校は実技試験だけを突破すれば入学できると言われていたが、果たして学校の入学試験で筆記試験が存在しないなどありえるのだろうか、と。


一度ここで言い訳させてほしい。葵はこの世界に来たばかりの頃、何度かチトに進言していた。文章が良くわからない、読めないとはっきり告げていたのだ。しかし残念ながら、チトは葵の発言を正面から受け取る事ができず内容がわからないのだと誤解していた。だから、その内容を読み上げ説明を交えることで解決したと判断してしまっていたのである。その意図を察していた葵だったが、当時小屋の世界だけで過ごしていたため文字の読み書きが一切できなくとも日常生活が送れるだろうと判断してしまった結果習得を後回しにした。チトの書斎を探しても、流石に文字の読み書きに関する本や簡単な絵本などは配置されていなかったことも原因の一つである。


後に、文字が読めないなりに前工程をすっ飛ばして魔法陣に必要な言語だけを理解してしまった葵は、半ば自分自身が文字の読み書きができない事実を忘れつつ日常生活を送ってきた居たわけだが…こうして人里に降りたことで話が変わった。当然ではあるが、至る所に表示される看板や旗、書面には当然文字が書かれており、ある程度読める前提で表示されていたのだ。流石にまずいだろうか、とは思っていたのだ。言っていなかっただけで、マジで。


そんな過去回想を冷や汗と共に終えた葵は、相変わらず声音だけで慌てふためくオルコスを眺める事しかできない。


「ど、どどどうしましょう!筆記試験内容は確か、魔法陣作成だったはずです…!」

「おっと?」


話が変わってきた。葵は共通言語など一切読めないが、魔法陣に関していえば図形的な観点から理解している。何もわからない素人が気合で象形文字を暗記した理論に意味は近い。それに、新規の魔法陣作成など葵がこれまでずっと行ってきた暇つぶしの内容そのものなのだからお手の物だ。



「ふっ…勝ったな」

「ふぇえええ???」



真っ青だった表情を一転し、勝利を確信したどや顔を浮かべた葵にオルコスは首を傾げる事しかできなかった。



―――



「なーなールコちゃん知っとる?」

「はい?」

「水魔法と風魔法で水流を超高速回転させると、炭酸水ができるんやで?」

「なんと、あのしゅわしゅわした水が…!すごいです!」

「知らんし多分ウソやけど」

「な、一体何故…!もう、からかわないでください!」


二人で中身のない会話をしながら試験会場へ戻れば、一気に視線が集まった。横目でオルコスの様子を確認した葵は、彼女が一切それらの視線を気にしていない事に気付く。仕方なく合わせて素知らぬ顔で空きスペースに向かい立ち話を続けた。


「なーなールコちゃん」

「はい、なんですか?」

「ウチこの前おもろい魔法陣を家で見かけてな?下から上に向かって風を起こす魔法っぽいんやけど、これって夢があると思わん?」

「…どうしてですか?」

「だって、考えてみて?女の子のスカートを一瞬で…」

「待って待って、待ってください!!そんな不純な事してはいけません!!」


葵の発言一つ一つを最後まで聞き届け、素直に反応を返してくれるオルコスが面白い。チトを相手にした場合は大抵流されるか適当にあしらわれてしまうので、こういったくだらない本当の友達みたいなやり取りに葵は素直に気分が良くなった。


「ルコちゃんってほんま喋ってて楽しいなぁ」

「アオイちゃん絶対わたくしで遊ばれていますよね…。確かにこういったお喋りは久方ぶりでわたくしも楽しいとは思いますが…なんだかフクザツな気分です…」


困ったように、それでも楽しそうに返事をしてくれるオルコスを見て、葵は再び笑ってしまった。二人顔を見合わせてくすくすと声を零しながら、穏やかな時間は過ぎていく。そんな中で来訪者。


「オルコス、新しい友人か?」

「楽しそう」

「あら…ヴィルちゃんにルシエ先生」

「先生呼び、ダメ、絶対」


葵が先ほど試験の為の説明を受ける時に観察対象となった黒焔の人と、白焔の人が二人セットで話しかけてきた。二人の姿を視界に入れたオルコスはふわりと判り難い表情を明るくし、小さく手招きで迎え入れる。


「えっと…ルシエ、先生?にヴィルちゃん…。変わった呼び方やね」


小首をかしげる葵の様子に一瞬黙り込んだ三人は、ふと息を吐いて穏やかな笑みを浮かべた。


「いや、違う。ルシエの名前はルシエ。こっちの赤色がヴィル。貴方は?」

「葵!ウチ思い出したよ!貴方ってさっき黒い焔出しとった子やろ?あれってどうやるん?めっちゃかっこよかった!」

「……ふむ、君、わかってる。あれの良さに気付けるとは、見る目がある証拠。ルシエの事はルシエって呼んでいい。特別」

「葵、俺のはどうだ?俺の白焔だって悪くはなかっただろう」

「ヴィル君のやつ?あれも面白かったで!」

「お、おもしろ…???」

「なんと、二人は一体どんな魔法を発動させたのでしょうか。わたくしも直接見たかったです…」


自信満々に平らな胸を張った圧倒的に小柄なルシエ。堅物染みた容姿からは予想もつかないほどそわそわと落ち着かない様子で、葵の返答に嬉しそうに表情を輝かせるどこか幼い雰囲気を感じるヴィル。そして、金髪碧眼と言う約束された美少女の容姿を持ち無表情から飛び出しているとはとても思えない表情豊かな声音と共に全身からぽんこつ感があふれるオルコス。一気にその場の人数が増えた結果騒がしさが何倍にも増した。葵にとって三人はまるで初対面である筈なのに、旧知の仲であったかのように親し気に、言ってしまえば懐かれてしまったらしい彼らからは一切壁が感じられなかった。


「葵、ルシエの魔法が知りたいなら交換条件。試験で使った水魔法を教えて」

「もちろん!ウチ、派手な魔法はあんま知らんから、めっちゃ憧れとるんよ!」

「…ルシエ、控えめにな?」

「聞こえない」

「いや滅茶苦茶聞こえてるし」

「一番大切なのは気合」

「おいルシエ控えめにな??」

「聞こえない」

「聞こえてる聞こえてる」

「ふふ、皆さん仲良くなれた様で良かったです。でも、何か忘れて…」


ぱちりと両手を合わせて僅かに口角を緩めたオルコスの言葉に視線が集まる。緩やかな笑みとは裏腹な不穏な発言に小首を傾げた葵はその忘れ物に辿り着いてなるほどと瞳を瞬いた。


「次は筆記試験だな、その話だろうか」

「内容は魔法陣作成。ルシエよりヴィルの方が得意」

「まぁ、理論派で売っているからな」

「…は、そうでした!アオイちゃん、本当に大丈夫なのですか!?」



「心配しないでルコちゃん、ウチ…共通言語が全く分からん状況でも魔法陣作成ならいけます!」



「「……は??」


「もぉ…さっきから一体何が大丈夫なのですか!!」



☆評価やブックマークで応援して頂けると励みになります。次回も是非御一読下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ