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85話 結論


「———オーフもキーフも、何も変わらないのですね。前聖人が積極的に支配を望んだのは国内に限ります。ですが、もし革命が今の時期に起きていなければ、その魔の手はいずれ各国に及んでいたでしょう。必然的に、キーフと同様に自国対世界の戦争に発展した可能性は限りなく高い。無意味で、無価値。大賢者イブキの最期は、これまで自らが重ねてきた罪を償うべく力を使った結末だと聞いていましたが…ふふ、嘘ばかりですね」


ソフィの一人語りによって静かに告げられた大賢者イブキの真実を前に、沈黙が広がっていた小屋の中で一番初めに重い口を開けたのはオルコスだった。へらりと、諦観の入り混じった瞳で力なく浮かべられた笑みと共に続いた自嘲の言葉は、事実キーフとオーフがこれまで歩んできた道のりが酷似している以上誰にも否定することが出来ず、そんな周囲の迷いを込めた視線を一身に受けたオルコスは苦笑を浮かべて視線の先を紅茶の水面へ落とした。


「大賢者イブキが歴史上語られてきた人物像と大きく異なっている事は理解しました。けれども、一番我々が知りたい真実が未だ判明していません。…大賢者イブキとアオイちゃんの関係性、何より彼女と同じ姓を持っている理由。大賢者イブキがアオイちゃんと血縁関係にある以上、その実際の関係値は後に魔王に至る彼女の複製体に対する有効打を探す大切な鍵となる可能性が大いにあります。因みにアオイちゃんの中で、詳細な心当たりはありますか?」


ゆるりと顔を紅茶に落としたまま視線だけを葵へと向けたオルコスの問いには、葵がその答えを知っているだろう確信がはっきり込められていた。対する葵はオルコスに向けて心底嫌そうな表情を浮かべ、わざとらしいため息を吐き捨てる。それがオルコスの確信に対する答えだった。僅かに周囲の意識が緊張感を高める中、敢えて気付かぬふりを決めつけた葵は肩を竦めて改めて一同を見回した。


それは、自分自身がこれまで継続してきた嘘と数多の共通点を持った同一的思考回路を掘り下げられたくない、という曖昧でありながらはっきりと嫌悪の感情を感じるものだったが、現状を受けても尚説明しない未来は許されなかった。葵は嫌だったのだ。大賢者イブキと自分が同一視されることが。葵は嫌だったのだ。大賢者イブキと自分の思考回路が隠し切れない程似通っている事実を認める事が。葵は嫌だったのだ。大賢者イブキを通して本当の自分を見抜かれてしまう事が。


オルコスへ改めて恨みがましい睨みを向けながらも、小さく深呼吸して自分の中で渦巻く感情を押さえつけた葵はゆっくりと口を開いた。


「大賢者イブキは、一貫して一つの嘘をつき続けていた。それは、自身の名前がイブキである、と言う事。始めは偶然だったのかもしれないし、もしくは親切な誰かから警告を受けた結果なのかもしれない。兎も角、彼女の名前はイブキ、としてしかキーフでも、ましてや世界でも伝わっていない。最終的に彼女自身が自らをイブキだと名乗った以上、嘘をつき続ける事を自ら受け入れたんだろうけど」


そこで言葉を止めた葵は、ちらりと微笑を浮かべたままのソフィに視線を向けた。果たして、このエルフは葵の発言をどこまで理解しているのだろうか。情報として知っていても、その意味までは把握できていないんだろうな。彼女の嘘が見せる真実には、自力で辿り着く事はまだ難しそうかも。そんなことを、葵の発言に顔色を変えないソフィを前に葵は確かに考えていた。


「彼女がついた嘘は、自らの名前がイブキである、それだけ。でもウチの国ではね、常識から外れた空間で他者に真名…所謂本名を知られると、元の居場所に還れないって御伽噺が存在するんやで。名前は個人を識別する上で魂に刻み込まれた大切な情報。それを掴まれてしまえば、自らの意志に反して異なる空間の住民として永遠に囚われてしまう。偶然か必然化、彼女はこの世界に…いや、世界樹に真名を奪われなかった。だから、許されたんじゃない?想定外の勇者召喚者でありながら、世界に在り続ける事を」


今度は、ソフィの番だった。葵の発言を受けて目を見開いたソフィは、僅かに空中に視線を向け何かを探す様に瞳を激しく上下左右に動かす。そうして見えない何かを押し込んでは流して、複数回続けた結果疲れ切ったように肩を落とした。具体的に何が起きていたのかは分からない、けれども五人には、ソフィがたった今この瞬間世界の調整者として世界樹から何かしらの情報を探し、目的が見つからなかった事を理解できていたのである。


「うーん、そうやって考えたらイブキが本名を明かさなかったのは意図的な様に思えてきたね。ウチが、これまで伊吹の姓を明かしてこなかったように」


ほんの僅かに、チトが傷付いた様な表情を浮かべた。ソフィには辿り着けない、人間心理に辿り着けてしまったのだろう。迷子の子供のように瞳を揺らして、それから全てを諦めた様に視線を落とした。どうやら自己解決に至ったらしい。チトがイブキに浮かべていた感情の正体の大枠を理解していた葵は、そんなチトの様子を暫く無表情に眺めて、それから興味をなくしたように顔の向きを逸らした。


「チト君やソフィまで知らないって事は、イブキは世界すら騙し続けてきたんやね。その点は、あっぱれって所かも?」

「参ったな、葵ちゃんも、イブキちゃんも。本来人類が干渉する事なんて到底あり得ない絶対的な存在、世界樹をあっさりと欺いて、こうも好き勝手やられちゃうと流石のボクも目を逸らし続けられなくなっちゃうよぉ?」

「でも、逸らすんやろ?節穴なその瞳の奥を、どこまでも」


にやりとわざとらしく作られた厭らしい笑みに降参の姿勢を取ったソフィは、疲労気味に紅茶に口を付けた。ふぅ、と一息つくも気分が落ち着く事はなかったらしく、再びカップの縁に口を付けている。そんな忙しない様子に少しだけ荒んでいた気分が落ち着いた葵は、続く言葉を口にしようとして引き留められた。


「アイツとお前は、本当に良く似ている。ソフィを簡単に掌で転がすところも、その在り方も。異なる世界から召喚された経緯も何もかもがそっくりだ」

「…うっわ、チト君ってそういう所気遣いがないんよなぁ。わざわざウチが覚悟決めて話そうとした瞬間、同族嫌悪で自殺させようとしてくる」

「そう言うつもりじゃ…」

「つもりじゃなくても、結果的にそうなってるやん。ほーんま乙女心が分かっとらん罪な男」


悪態をつきながら戸惑った表情を浮かべるチトから顔を逸らす様に机に顔を伏せた葵は、自身の顔を決して他人に見られない様に細心の注意を払って不満げに問いの答えを口にした。



「伊吹 舞代、それが大賢者イブキの正体や。ウチの…、ウチを生んだ人、つまりお母さんやね」


「………は?????」



小屋中が凍り付いた。冗談抜きで、動揺したチトとソフィの魔力によって物理的に氷で埋め尽くされたのである。けれども、ヴィル達だって本来は動揺なり怒るなり叫ぶなり、兎に角何かしらの反応を示すべきだったが、ここにきて突然結ばれた謎の因果関係を前に冷静さどころかまともな視野すら保てなかったのだ。葵の正体を前にどうにか喉奥から声を絞り出してその言葉を聞き届けた事を示せたのは一体誰だったのだろうか。それすら曖昧な中、唯一頭を抱えたまま凍り付いた小屋の実態にも気付かない葵は足をバタつかせて唸った。


「ほらぁ、だから言いたくなかったんよ!ウチやって、正直頭で理解できても心が納得できとらんの!ウチの母さんは小さい頃から急に語り掛ける様にウチを説き伏せてくる事があったんよ。何の脈略もなく、突然やで!?嘘をつくこと、嘘を貫く事、全てを信用しない事…明るい子を、演じ続ける事。当時は何とも思っとらんかったけど、今思うとこの世界での色んな経験があったからこその言動やったんやと分かる。普通の親が子供に嘘を推奨する訳ないやん?それに、さぁ……その結論に至った理由はもう一個、明確にあって」


顔は机に埋めたまま、片手間に空中に用紙を取り出した葵は一つの魔法陣と、その解説文が書き込まれたものを作り上げていく。それは、イブキの複製体を迷宮に封印している魔法陣そのものの解析っかだった。魔力を込めて作り上げられる魔法陣の複写を前に、意図的に強調された文言とその解説の糸に気付いたチトやソフィは分かりやすく目を見開いて釘付けになった。


「イブキ、マシロ製作…帰りたくない、帰りたい、怖い、キーフなんて大嫌い、戦争なんてなくなればいい、魔法なんていらない…それから、これは…」

「……チト、つまり俺の、ばか…??」


それは、複雑な文言が積み重なった魔法陣の中で意図的に埋め込まれた、魔法陣効果と一切関りがない古代キーフ文字で書きこまれたイブキが嘗て誰にも伝えなかった本心だった。魔法陣が作り上げらえた当時、チトやソフィは一応解読しようと試みたが細部に埋め込まれる様に書かれたこの文言達にまでは気付けなかったのである。そしてそれは、イブキも承知の上で寧ろ解析されないだろうと踏んだ上で書かれた内容だった。


「王様の耳はロバの耳、ってね」

「…ん、どういう意味?」

「簡単に言えば隠したい真実を深い穴を掘って隠したつもりが、その穴によって全て明かされてしまう事。今でいう所の、絶対に解析されないだろうと隠した本音が、未来であっさり最も隠したかった相手に伝わってしまった、って感じかな?」

「便利な言葉だな。アオイは時折そう言ったキーフでいう所のことわざ、に近しい事を言うな。元の世界での文化なのか?」

「寧ろ、元の世界が起点となってキーフで使われるようになった文化、かな?」

「成程?興味深いな。だがしかし、ロバとはなんだ?」

「んぅ…耳、って事は動物?」

「皆さんって危機感があるのかないのか本当に分からない方たちですよね…」


呆然とする長寿種二人組を前に一足先に冷静さを取り戻したヴィル達は、葵のなんでもない呟きを掘り下げ始めていた。葵がチトやソフィに見せつけた魔法陣が普通じゃない事は一目見ただけでも理解できる以上、下手に解析や解読を試みて痛い目に合いたくなかったのである。新たな動揺によって周囲の氷は解けだし、いつの間にか消えている。ようやく平穏を取り戻した空間の中で、ヴィルの問いかけやルシエの疑問、そしてオルコスの呆れはどこまでもいつも通りであった。若干の現実逃避感は否めないが、それでもヴィル達の方がずっとマシだった。


「…これで分かったやろ?本名に続いて隠された本音。因みにこの文言は暗号式になっとったけど、ウチが昔お母さんから殆ど同じ問題を出された事が何度もあったから、嫌でも覚えとった。どう考えてもこの人ウチのお母さんやん。思考回路も一緒、言動も一緒、やることなす事ぜーんぶ一緒!ほんま最悪、何が嬉しくて母さんのポエムとか読まされなきゃいかんの!?」

「ぽえむ?」

「この世界でいう所の…あー、一行日記?みたいな?」

「ふーん…ルシエもやってみようかな」

「ルシエちゃんそこじゃない、そういう話ではないんですよこれは…」


今の葵は、まるで自らの生き写しであるかのような存在の母親を心から愛せる程大人ではなかった。何故なら、自分自身の言動の醜さを嫌程理解しているにも拘らず、全く同じ思考回路の元過去に同様の言動をとった者が居るせいで嫌でも自覚を重ねさせられるからである。


この世界に降り立ったその日からずっと見せつけられ続けていた呪い様な夢。その本来の役目は、恐らく自らの誓いを破る上で後継者に情報を与える為一心であった筈だ。けれどもその全ては確かに葵の精神や共感性羞恥を抉り続け、疲労の日々を送る羽目になっていた。だって、葵には理解できてしまうのだ。彼女が話す言葉や意志の殆どが嘘だらけで、時折厭味のように気付かれない前提で挟まれる本音が女々しくて、全てが阿保らしい事だと。


彼女がチトと永遠に在れる立場に在ったにも関わらず、自らの罪悪感や帰還願望を優先した結果チトを置いていく結論を選択した事が、腹立たしい。


今だってほら、迷子のように現れた単語の意味を考え込んで瞳を揺らすチトを見れば、自らの意志でこの世界を去って全てにキリを付けた人間の癖に、未だチトの中に何かを残そうと藻掻いている様に見えて惨めが過ぎる。不公平じゃないか、あんまりじゃないか。諦めた?好きだった?そんな話を嘗てどこかで母親から直接聞いた記憶がある。チトを愛そうとしたならば、例えその本心が敵わずとも責任をもって愛するべきだった。チトの過去を知ったならば、だからこそチトの為に動く事が出来る立場に在った筈だった。何もかもが身勝手で、それでいて自分が同じ状況なら同じ結末を望んだだろうと理解できてしまう現状が嫌で嫌で仕方がない。


何より、母親によって生まれた自分、という存在が憎たらしくて堪らなかった。


「……そう、か。アオイは、アイツの娘だったんだな」

「勇者召喚における正しい召還方法は二つ。一つは召還専用の魔法陣を利用する事。もう一つは、召喚先の世界で死を迎える事。…イブキちゃんはこの世界での死を経て、元の世界に還ったんだろうねぇ。葵ちゃんは、言うなれば忘れ形見に近い存在かぁ」

「…確か、オーフに向かう途中の話を聞いた限り既に亡くなってるんだよな?アイツは…イブキは、元の世界で幸せだったのか?」


煮えたぎらない感情を抱えたままの瞳で、葵を真っすぐに射抜いたチト。逸らす事を許さない、そんな意志が強く込められた瞳を向けられた葵は、涙目のまま勢いよく立ち上がってチトに向けて感情のまま魔力弾を放った。


「ウチの記憶がある限り、一回もこの世界の情報や魔法の話をした事はない人やったからね!少なくとも、この世界での経験が最悪だったって気持ちはあったんじゃないの!!」

「うわ、なんでそんな不機嫌になったんだよお前、」

「うるさいうるさい!もうチト君なんて知らん!!」

「はぁ…??」


悔しいと思った。結果は全てが明かされてしまったとはいえ、本音をこの世界に残した母親。それ以上に素直になれないままのいつまでも子供な自分が、嘘に囚われた自分が、嫌で仕方がなかった。チトの関心を記録となっても尚引き続けられる母親がずるいと思ってしまう自分が、もっと嫌いになった。葵の内心を渦巻く負の感情はどれもこれもが、葵自身の弱さからくるものばかりだ。どうする事も出来ない、今更変えられないものなのだと理解して呑みこむには、葵はまだ幼かったのである。


困惑するチトから勢いよく体の向きを変え、ヴィルの膝の上に強引に乗り上がった葵はわざとらしく息を吐き捨てた。困惑気味のヴィルの手が、行き場をなくして宙に浮かぶ。慌てた様にオルコスが紅茶が零れない様に茶器を移動させ、ルシエはヴィルが不埒な事をしないか鋭く睨みつけていた。その視線に理不尽!と文句を目線だけで訴えながらも、戸惑ったヴィルの掌はようやく葵の頭上に納まった。


「えぇ…っと、アオイさん?」

「ヴィル君今だけ特別に、ウチの事愛でてくれてええよ。今日だけは許したるから」

「なんと、それは真か…?ならば遠慮なく」

「ルシエちゃんも、ヴィル君の監視なんかやめてウチの事甘やかしてくれてえんやで?」

「んぅ?…正直、ルシエには今の話の殆どが理解できなかったし、するつもりもないけど…アオイが酷く追い詰められている事だけは分かった。寧ろ、よくこれまで諸々の考察に辿り着いていたのに吐き出さずに呑みこめてたね。アオイ、えらい」

「ふふーん!あ、ルコちゃんも勿論来てくれてええよ!チト君とソフィはあかんから」

「えっ」

「なんでぇ!?」


真顔で葵の頭を撫で始めたヴィルと、素直に葵の言動を褒め始めたルシエ。そんな素直な二人を前に気分を良くした葵は、ふとそわそわと落ち着かない様子のオルコスを近くに招いた一方で指先を世話しなく動かしながら視線を向けてくる長寿種二人をあっさり切り捨てた。素直に絶望するチトと、喚くソフィ。いつもとは全く異なる状況だ。


「はい!ありがとうございます、教えてくれて嬉しかったですよアオイちゃん」

「うん、ルコちゃんはいっつもキラキラして眩しいなぁ~」


嬉々として飛び込んできたオルコスを抱き留め胸元に抱いた葵は、未だこちらに近付く機会を窺っている長寿種二人からわざとらしく顔を逸らし、ヴィルの掌に頭を意識的に擦り付けた。そもそも人類が理解できていないソフィ、自滅させられた直接的な要因であり大本命のチトは今、この瞬間の葵にとって敵以外の何者でもなかった。本当はオルコスも葵に追及を行った半敵対勢力だったが、ここで仲間外れにすると後が怖かったので妥協したのである。


子猫のようにヴィルから撫でまわされ、ルシエから褒められ、オルコスに抱き着かれる葵は、時折二人から向けられる困ったような、それでいて生暖かい視線を睨みつけながら物理的な精神の回復を図って瞼を閉じた。



―――



「…あー、アオイさん?いい加減落ち着いたか?」

「むっ……ま、そうやね。そろそろ話を戻さないと、ほんま魔王も復活してまうやろうから落ち着いたって事にしとく」

「アオイ、もう少しだけ堪能させてほし、」

「ヴィル君きもい、離して」

「何故だ!!!!」


暫くして、淹れ直した紅茶が再び完全に冷めてしまう程の時間が経った頃チトが恐る恐る切り出した。相変わらず掌と葵の頭上を交互に見詰めていたチトだったが、本人からよしが出なければ動き出さなかった限りまるで忠犬の様である。それに気付いた葵は少し笑っていた。兎も角、現状に埒が明かない事を察していた葵は渋々ため息を零して抱き着いたままだったオルコスの身体を押し出し、ルシエに差し伸べられた掌に自らの手を重ねてヴィルから離れた。それでも厚かましく葵の頭上に乗せられたままだったヴィルの掌はルシエによってあっさり払われ、がくりと項垂れるヴィルは冗談抜きで本気で落ち込んでいるのだろう。絶妙に空気が読めないというか、読む気がなさそうな男である。


改めて椅子に座り直した葵は、何事もなかったかのように完璧な笑みを浮かべる。若干やけくそ感は否めなかったが、それでもあっという間に空気は真剣な物へと切り替わっていった。



「さて、ウチの正体を隠し続けた嘘の話題も終了したところで…具体的にどうやって魔王を討伐するのか、作戦会議を始めようか!」


「……魔王討伐ですか、まるで世界戦争時代の再来ですね」

「ルシエ知ってる。それふらぐって言って、言葉にすると本当になっちゃうやつ」

「つまり本当に世界戦争時代のように未来が混沌としているってことかなぁ?面白い話だねぇ、ルコちゃん!」

「へ!?な、そんなつもりで言ったわけでは、」

「へー、お前世界戦争願望なんてあったんだ。意外と性格歪んでるな」

「チトさんまで!?」

「全く、少し油断すると直ぐ空気が散る…どうしたものか」



葵の一言を受け、僅かな沈黙と共に率直な感想を浮かべたオルコス。それを間を開けずに茶化したルシエと、あっさり便乗する長寿組。何度繰り返せば気が済むのか、茶番が始まった小屋の中で葵だけは真っすぐに先程取り出した封印の魔法陣が描かれた用紙を見詰めていた。



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