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第98話 わたしの誕生日

 歪みの泉から少し西へ入った場所――山の湯。


 ごぽんっ――


 湯面に小さな波紋が広がり、心地よい湯気がゆらりと立ち上る。


「はぁ……やっぱり、何度入ってもいいお湯ですね」


 岩にもたれ、エリシアが小さく息を漏らす。


「うんうん。身体もぽかぽか……なんだか、ふわふわしてきちゃったよ」


 ミミは肩まで湯に浸かり、頬を赤く染めながら足をぱたぱたと揺らした。


「長く歩いた後ですからね。こうしてゆっくり浸かると、溜まった疲れが一気に抜けます」


「分かる~。頭の中まで、じんわりする感じ!」


 ミミの言葉に、エリシアはくすっと微笑む。


「リアナちゃんも、ちゃんと温まってる?」


「えっ……? あ、は、はい。もちろんです」


 リアナは膝を抱えるように湯船へ浸かっていたが、どこか落ち着かない。


「……どうかしましたか、リアナさん?」


 声をかけられ、リアナはびくっと肩を跳ねさせる。


「い、いえ! 別に、何でも……その、ありませんっ」


 そう言いながらも、視線はちらりとミミへ向いていた。


 それに気づいたミミが、にやっと笑う。


「……あっ。もしかしてさ」


 湯をかき分けながら、ミミがじりじりと距離を詰める。


「リアナちゃん、背中……流してほしいとか思ってる?」


「なっ……!? そ、それはっ……!」


「そうだよね~。背中流してあげるって約束だったもんね~」


「……はい。実は、前回ミミさんに背中を流してもらっていたエリシアさんが、すごく羨ましくて……」


「じゃあさ。背中だけじゃなくて――」


 そこまで言うと、ミミはリアナへ身を寄せ、耳元でひそひそと囁く。


 次の瞬間、リアナの顔がみるみる赤く染まった。


「い、いや……やめてください! そんな……想像しちゃうじゃないですか!」


「ふふふっ。リアナちゃんの……えっち」


「ち、違いますっ! ミミさんが変なこと言うからで……!」


 真っ赤になって抗議するリアナに、ミミは楽しそうに笑った。


 やがてリアナが洗い場へ腰を下ろすと、その後ろへミミが膝をつく。

 桶ですくった湯を背中へとかける。しゃあっと流れた湯が、背中を伝って足元へ落ちていった。


「よーし。じゃあ泡立てて背中、流していくよー。こう見えても、ミミさんは泡立て名人なんだからねー」


 ふわりと泡立った布が背中に触れる。


「……くすぐったくない?」


「だ、大丈夫です……」


 時おり湯をかけて泡を流しながら、丁寧にリアナの背中を洗っていく。

 布越しに伝わる手のひらのぬくもりに、リアナの肩から少しずつ力が抜けていった。


「リアナちゃんにはさ、いつも助けてもらってばかりだよね」


「そんなこと……。私だって、ミミさんには回復や結界で何度も助けてもらっていますし。もちろん、エリシアさんにも、です」


「えへへ。そっか」


 背中を洗い終えたミミは布を置き、両手をリアナの肩に添える。


「ミミさん……?」


「頑張ってるリアナちゃんには、ミミさん特別マッサージだよ」


 親指を肩の付け根へ当て、ゆっくり円を描くように揉みほぐす。

 そのまま肩から首筋へと指先を滑らせ、凝りを確かめるように力を込めた。


「うんうん。やっぱり、ここが凝ってるね~、お客さん」


「ちょっと……ミミさん。その設定、完全にオジサンですよ」


「いーの、いーの。こうやって、みんなが仲良く楽しく過ごせるようにするのが、わたしの役目なんだから」


 指先を肩からうなじへと移し、揉み込みながら確かめる。


「んっ……」


「ふふっ。ここ……気持ちいいでしょ?」


「は、はい……ほぐれていくのが分かります」


 リアナは小さく息を吐き、身体の力を抜いた。


 しばらくして、ミミはそっと手を離す。


「はい。おしまい」


「……ありがとうございました。すごく楽になりました」


 リアナは振り返り、微笑んだ。


「はい。じゃあ次は私の番ですね。ミミさん、背中を向けてください」


「えっ、前は洗ってくれないの?」


「もうっ……そういうの、反応に困るんで。早く背中を向けてくださいっ」


 ミミは「へへへ」と照れ笑いし、素直に背を向ける。

 リアナは泡立てた布を手に取り、ゆっくりと背中を洗い始めた。


 しばらくして、リアナが思い出したように口を開く。


「そう言えば、気づいてました?」


「何が~?」


「ミミさんと私が出会って、そろそろ一年になるんですよ」


「えっ。もうそんなになるんだっけ?」


「はい。ってことは、セイがこの世界に来たのも、もう一年前ってことですよね」


「ちょ、ちょっと待って……ってことはだよ、リアナちゃん」


「……お誕生日ですね」


 湯船の向こうから、エリシアが柔らかな声で言う。


「あっ、そうか……」


 リアナは目を見開き、すぐに納得したように頷いた。


「そうそう。セイとわたしの本当の誕生日は分からないから……セイがこの世界へ来た日――わたしと出会った日を、二人の誕生日にしようって決めたんだよね!」


 リアナもふっと笑みを浮かべる。


「……長いようで、あっという間でしたね」


 リアナは湯をすくい、ミミの肩へそっとかけた。


「はい。おしまいですっ!」


「ありがと、リアナちゃん」


 ミミはにこにこと笑い返す。


 三人は再び肩まで湯に浸かり、立ち上る湯気に包まれながら、しばらく静かに温まった。


「ミミさん、今回は男湯に乱入しないんですね?」


 リアナが前回のことを思い出しながら尋ねる。


「当たり前だよっ! わたしだって成長してるんだから。ほ、他にお客さんがいたら……恥ずかしいじゃん……」


 ミミは肩をすくめ、照れ笑いを浮かべる。


「いえ、他にお客さんがいなくてもダメですからね?」


 その返しに、エリシアも思わずくすっと笑った。


 三人は肩を寄せ合い、湯船の中で身を揺らしながら、他愛のない会話を続ける。


「ちょっと、ミミさん。近いですって」


「えー、いいじゃん。湯船広いんだし」


「いえ、広いからこそ、もう少し距離を……まあ、いいです。もうっ」


 リアナが諦めたのをいいことに、ミミはぴたりと身を寄せる。


 そんな二人を眺めながら、エリシアは目を細めた。


「……本当に、楽しいです。皆さんと一緒にいると決めたことは、間違っていなかったって……そう思います」


 少し照れたように微笑み、続ける。


「ミミさん。ルキア村に帰ったら……みんなでお祝いしましょうね」


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】26(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】49

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。身体も心もポカポカ

 - 補足:誕生日のことなんて全然忘れてた。思い出させてくれたリアナに感謝


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:大好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てを装備。身体も心もポカポカ

 - 補足:あっという間の一年だったなぁとしみじみしてる


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:けっこう高め

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。身体も心もポカポカ

 - 補足:ミミとセイのお祝いどうしようかお悩み中

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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