第99話 昇格試験前に(前編)
ルキア村のちょっとはずれ――飲食街。
店先から漂う料理の香りと、楽しげな笑い声が通りにあふれていた。
「いやー、うまかったのう。ルキア村に、こんな美味い店があったとは知らんかったわい」
「ほんと! すっごく美味しかったよ。ありがとね、リアナちゃん、エリシアちゃん」
ミミが振り返り、満面の笑みを向ける。
「どういたしまして。私もエリシアさんも、誕生日をお祝いしてもらえて嬉しかったんです」
「はい。ですから、そのお返しです。改めて……お誕生日おめでとうございます」
リアナは微笑み、エリシアも穏やかに言葉を添えた。
「うんっ! ありがとう!」
ミミが元気よくうなずいた、その隣で――
「いや、ワシはもう、誕生日を喜ぶ歳ではないんじゃがのう……」
「ダメよ、セイ。元の世界ではおじいちゃんだったかもしれないけど、こっちの世界じゃまだ若いんだから」
セイのぼやきに、リアナがすかさず突っ込む。
「そうじゃな。ありがとう、リアナ、エリシア」
「いいのよ。来年も再来年も、ずっと祝ってあげるんだから。いちいちお礼なんて言わなくていいの」
「そうじゃな……」
そのとき、エリシアがそっとセイに身を寄せた。
「セイさん。よろしければ、もう一軒ご一緒しませんか?」
すると間髪入れず、リアナが「待った」と言わんばかりにセイの腕へ抱きつく。
「もう一軒行くなら、私もいいわよね?」
「いや、リアナ。おぬし、酒は飲めんじゃろ?」
「いいの。別にお酒が目的じゃないし。あなたと一緒にいたいだけだから」
ミミは思わず動きを止め、目を丸くした。
「ちょ、ちょっとリアナちゃん! こんなところで愛の告白なんて……」
「ち、違うから! そういう意味じゃないからねっ!」
リアナが顔を赤くして慌てて否定するも、ミミにはもう届いていない。
ミミは腕を組み、満足そうにうなずいていた。
「では、皆さんでもう一軒……行っちゃいますか~?」
エリシアが楽しげに提案する。
「エリシアちゃん。最近お酒飲めなかったからって、ちょっと飲みすぎだよ?」
「ふふっ。そんな日も、あっていいですよね?」
エリシアはミミの心配をよそに、悪戯っぽく笑った。
◇ ◇ ◇
翌朝。
「昨晩は、さすがに飲みすぎたのう……」
セイは頭を押さえ、低くうめく。
「はい。私も少し頭が痛いです……」
エリシアも同じように顔をしかめた。
「そういえば昨日、カレンさんから連絡があったわよ。本部から昇格試験についての回答が来たんですって。このあと聞きに行かないとね」
リアナは身支度を整えながら、ふたりに声をかける。
二日酔いのセイとエリシアとは対照的に、ミミとリアナは朝から元気いっぱいだ。
「ほら、これ! エリシアさんもどうぞ」
リアナはふらつく二人へ、水の入ったコップと錠剤を差し出した。
「なんじゃこれは?」
「酔い覚ましよ。昨日買っておいたの。すごく効くみたいよ」
セイとエリシアは受け取って口にすると、少し楽になったような表情を見せる。
「ありがとうございます、リアナさん。とても楽になりました」
やがて支度を終え、一行はギルドへ向かった。
◇
「で、どうじゃった?」
カウンター越しにセイがカレンに尋ねる。
「ダメでした! ごめんなさい。私が期待を持たせてしまって……」
「いや、別に期待しとらんかったし、大丈夫じゃ」
「それはそれで悲しいのですが……」
カレンは苦笑して目を逸らした。
「まあええ。Cランクの昇格試験は、一週間後じゃな」
「はい。前回同様、現地での登録となります。実施日に余裕をもって移動してください」
「了解じゃ」
そのとき、ミミが後ろから小さな声で尋ねる。
「ねえセイ、王都には知り合いいないんだっけ?」
「ん? なんでじゃ?」
「だって、知り合いがいれば空間転移でぴゅって飛んで行けるんでしょ? だから聞いてみた」
「うーむ。前に行ったきりじゃし、もう顔見知りもワシのことなど忘れとるじゃろうな」
「ってことは、また歩きか……」
「しょうがなかろう。帰りは空間転移で戻れるんじゃから、行きくらいは頑張ってくれ」
「はーい」
元気のない返事を聞き、エリシアが確認する。
「前回は歩いて三日ほどでしたね。となると、余裕を見て……明後日には出発したほうがよさそうです」
「そうじゃな。では、今日と明日は各自自由行動にするかの」
顎に手を当てて考えるセイを見て、リアナが提案した。
「ねえセイ。今日はさ、適当な討伐依頼でレベル上げしとかない? 休息は明日しっかりとればいいしさ」
「うむ。いい考えじゃな。では、手ごろな依頼を探してみるか――」
そう言いながら、セイは依頼掲示板の前へ向かう。
「ねえねえ、これとかどう?」
ミミは真っ先に掲示板へ駆け寄り、一枚の依頼書を勢いよく指差した。
『森の奥で異常発生している発光キノコの採取』
「夜には光ってすっごくきれいなんだって! ほら、挿絵もあるよ!」
「いや、討伐依頼って言っておろうが……」
セイがこめかみを押さえる横から、今度はエリシアが控えめに一枚差し出す。
「こちらなんかは……いかがでしょう?」
『夜間限定・旧墓地に出没する霊体の浄化』
「夜だと疲れが残る。できれば日中にこなせるやつがいいんじゃが……」
その直後。
「じゃあ、これね!」
リアナが掲示板から二枚の依頼書を抜き取り、セイへ差し出した。
「近場で依頼ランクもC。片方は西の森、もう片方はそこから北にある湖畔。移動距離もちょうどいいと思うわ」
内容を確認したセイの口元が、にやりと緩む。
「よし、決まりじゃな!」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】26(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】49
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。誕生日を祝ってもらい幸せ気分
- 補足:王都へ「徒歩移動」と聞いて少しげんなり。でも知り合いいなかったっけ?と首を傾げている
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:大好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。誕生日を祝えて幸せ気分
- 補足:お酒を飲むエリシアに対抗して「一緒にいたいだけ」と自爆アプローチして涙目
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:けっこう高め
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。二日酔いで頭痛い
- 補足:お酒が入ると少々大胆になるようだ
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