第95話 試験までの空き時間
ルキア村ギルド――受付。
「ちょっと聞きたいんじゃが、ワシらってまだDランクじゃろう?」
セイが受付カウンター越しにカレンへ尋ねる。
「はい、そうですね。とはいえ、キラキラ☆おひさま団の皆さんにはすでにBランク級の依頼もお任せしていますが……」
「そこでじゃ! 久々に昇格試験に挑もうかと思うての」
「いいじゃないですか! ぜひぜひ受けましょう!」
勢いよく身を乗り出すカレンに、セイは腕を組んだまま続けた。
「なのじゃが、やはり次はCランク試験から受ける必要があるのか、それを聞きたかったんじゃ」
「なるほど。そうですね……」
カレンは少し考え込む。
「キラキラ☆おひさま団の皆さんの実力なら、Aランク試験を受けていただくのが妥当なのですが……規定上、飛び級での昇格は認められていなくて……」
「そうか。ならば地道に――」
「いえ、一度確認してみます!」
セイの言葉を遮るように、カレンが拳を握って声を上げた。
「セイさんたちの功績なら、特例として認められる可能性は十分にあります! すぐ手配しますね」
「それは助かる。ついでに、次の昇格試験がいつ行われるかも教えてもらえるか?」
「えーっと、少々お待ちください」
手元の資料をぱらぱらとめくりながら、カレンが答える。
「もしAランク試験が認められた場合は、三か月後にギルド本部で実施されます。ただ、事前申し込みが必要なので、可能であればそのまま手続きまで済ませてしまいますね」
「ふむ」
「Cランク試験なら、二週間後に王都で実施予定ですね」
「了解。では頼む」
「分かりました。では本部からの回答があり次第、またご連絡しますね!」
にこやかに手を振るカレンに見送られ、一行はギルドをあとにした。
外へ出ると、セイがぽつりとつぶやく。
「思わぬ時間が空いたな。さて、どうするかの」
「久しぶりに、ゆっくり休むのもいいんじゃないですか?」
エリシアが控えめに提案する。
「えーっ、それだけ? せっかくならどこか行こうよ!」
ミミが不満そうに頬を膨らませた。
「王都まで足を伸ばす、という手もありますね。装備の補充とか……」
リアナが実務的な案を口にする。
「いや、そのあとすぐ、また王都へ行くことになるかもしれんのだぞ……」
セイがすかさず突っ込んだ。
「観光に買い物、甘いもの巡り……選択肢は多いですね」
エリシアが苦笑しながら指を折って挙げていたそのとき、セイが思い出したように声を上げた。
「そうじゃ。そもそもエリシアの目的じゃった泉の呪いの解除、これに行ってみんか?」
「歪みの泉のこと?」
リアナが確認する。
「そうじゃ。今のワシらなら、十分解除できるんではないか?」
「そ、そうでしょうか……。私は、まだ自信が……」
エリシアは視線を伏せる。
「何を言うとる! 今のおぬしなら十分な力を持っとる。それに、ほれ。ワシにはおぬし特化のスキルがあるではないか。あれじゃ、あれ……そう、《ホーリーブースト》じゃ」
「……そうですね」
エリシアは少し考え、ふっと表情を和らげた。
「なんだか、いけそうな気がしてきました」
「そうだよ! エリシアちゃんのやり残した仕事、みんなで片付けちゃおうよ!」
ミミも元気よく背中を押す。
その横で、リアナが急に落ち着かない様子で足踏みを始めた。
「あのさ……その……泉の呪いを解除した後ってさ、時間あるよね?」
「まあ、昇格試験までは予定がないからのう。時間はあるが、どうかしたのか?」
「ほら、あれよ、あれ。最近、少し肌寒くもなってきたじゃない?」
「――あっ!」
ミミがぽんと手を叩く。
「リアナちゃんの言いたいこと、分かったよ!」
「ふふっ。そうですね。あのときは、皆さんと出会ったばかりでしたが……とてもいい思い出です」
エリシアも、どこか懐かしそうに微笑んだ。
話についていけず首を傾げるセイをよそに、リアナはもう隠す気もなさそうに目を輝かせた。
「ってことは……決まりねっ! 温泉。約束だからね、セイ!」
「お、おう……」
女子たちの凄まじい熱量と勢いに圧倒されながら、セイは素直にうなずくのだった。
◇
その夜。
控えめなノックの音が、セイの部屋に響いた。
「セイさん……起きていますか?」
「ん? 開いておるぞ」
扉がゆっくりと開き、申し訳なさそうに顔をのぞかせたのはエリシアだった。
「こんな時間にすみません。その……少しだけ、お話ししたくて」
どこか落ち着かない様子で部屋へ入ってくる。
椅子を勧めると、エリシアは小さく頭を下げて腰を下ろした。
「で、どうしたんじゃ?」
「その……昼間は大丈夫って言いましたけど、やっぱり少し、不安で……」
「歪みの泉か」
「はい……」
エリシアは膝の上で指をぎゅっと絡ませた。
「皆さんの前では、なんだか大丈夫な気がしていたんです。でも、一人になったら、もし失敗したらどうしようって考えてしまって……」
セイはしばらく黙って、エリシアの横顔を見つめていた。
「エリシアよ。おぬしの言う通りじゃ」
「え……?」
「今はワシがおる。ミミもリアナもおる。皆がおるから大丈夫なんじゃ。おぬしは一人ではない」
「……はい」
エリシアは少し俯いたまま、もじもじと指先を動かした。
頬がほんのりと赤く染まっていく。
「あの……ひとつだけ、わがままを言ってもいいですか?」
「なんじゃ? ワシにできることなら聞いてやるぞ」
「その……本当に、少しだけでいいんです」
エリシアは意を決したように顔を上げ、恥ずかしそうに潤んだ上目遣いでセイを見つめた。
「頭を……撫でてもらえませんか?」
「……はあ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げるセイ。
「す、すみませんっ! 今のなしです! 変ですよね、忘れてくださいっ!」
エリシアは顔を真っ赤にして、慌てて立ち上がろうとする。
「いや、待て待て。別に変ではない。ほれ、こっちへ来い」
「……はい」
照れくさそうにセイの隣へ腰を下ろすエリシア。
少しためらったあと、おずおずと頭を差し出した。
「まったく、おぬしというやつは。普段はしっかりしておるのにな」
セイは苦笑を浮かべながら、その髪を優しく撫でる。
エリシアは気持ちよさそうに目を細め、肩の力がすっと抜けていく。
「……えへへ」
自然と笑みがこぼれた。
胸を締めつけていた不安が温かな手のひらを通じて溶けていくようだった。
「ありがとうございます、セイさん。これで私、頑張れそうですっ!」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】47
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(いっしょに温泉行きたい)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。体力はばっちり
- 補足:「何もしない休み」より「みんなでどこかへ行く」のが大好き
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:大好き(温泉の約束が嬉しい)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。早くも温泉のことで頭がいっぱい
- 補足:今回もまた温泉が楽しみでしょうがない。それはもう隠しようがない
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:けっこう高め(よしよししてもらえて満足)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。不安解消モチベーションMAX
- 補足:自分はひとりじゃないということを改めて感じることができた
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