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第94話 言えなかったこと

「――さてどうしたもんかのう」


 セイが腕を組んで考え込んでいると、ミミがすぐさま駆け寄り、その腕にぎゅっと抱きついた。


「セイ……帰んないよね? ほんとに、帰んないよね?」


「こら、ミミ。少ししつこいぞ。帰らんと言っておろうが」


 そう言われても、ミミは腕を離そうとしない。

 見上げてくる顔は、今にも泣き出しそうだった。


「……うん。セイが帰らないなら、ミミさん特別マッサージ、毎日してあげるから……

 セイがしてほしいところ、うーんと気持ちよくしてあげる。だから、本当に帰んないでね……」


「……あ、あの」


 控えめなエリシアの声が続く。迷うように、両手を胸の前で組んでいる。


「私も……その……ご奉仕は、得意ですので……」


「エリシアよ……気持ちはありがたいが、その言い方はいろいろと誤解を招くぞ!」


「えっ、あっ……」


 エリシアははっとして頬を真っ赤に染めた。


「い、いえ、その……セイさんの身の回りのお手伝い、という意味で……でも、必要なら……」


 一瞬、微妙な沈黙が落ちた。


「まったく……ワシは別に何かしてほしくてここにおるわけではないんじゃがな……」


 セイは小さく息をつき、話題を切り替えるように言った。


「しかし、準備と言ってものう。何をすればいいんじゃ。ワシらもずいぶん成長はしとるが、まだレオナードにすら勝てる気がせんぞ」


 すると、リアナが頬に指を当て、少し考えるように頷いた。


「そうね。しばらくはレベル上げも兼ねて、ランク昇格試験を受けに行かない?」


「そういえば、キラキラ☆おひさま団って、まだDランクでしたよね?」


 確認するようにエリシアが言うと、ミミが元気よく続ける。


「そうそう! でも、あれからかなり強くなったはずだし、Aランクいけるんじゃないかな?」


「いやいや、さすがに順番に上げていかんとダメじゃないんか?」


「それなら……明日、カレンさんに聞いてみましょうよ」


 リアナの提案に、皆が顔を見合わせる。


「……それが一番、確実じゃな」


 そうして話はまとまり、それぞれ思い思いのタイミングで席を立ち、部屋へ戻っていった。


 ◇


 その夜――


 セイの部屋の扉を、控えめにノックする音が響いた。


 扉を開けると、そこには少し落ち着かない様子のリアナが立っていた。


「ねえ……少し散歩しない?」


「こんな時間にか? まあ、ええじゃろう。雲もないし、星もきれいじゃろうしな」


 二人は家を出て、夜風の中を並んで歩き始める。

 他愛のない話を交わしながら、明かりもまばらな田畑の道を進んでいった。


「こうやって夜にセイと二人で散歩するの、前にもあったよね?」


「ああ。あのときじゃろ? 夜中におぬしがトイレに行きたくなって――」


「違うっ! それじゃないわよ……」


 リアナに怒られ、セイは肩を落としてしゅんとする。


「ほんとにもう……光の洞窟で、みんなが私を助けてくれた夜よ!」


「ああ、そうじゃったな」


「どうせ、覚えてないでしょ?」


「覚えとるよ。あの夜も、星がとてもきれいじゃった」


「……そうね」


 しばらく黙って歩く二人。

 やがて、リアナがぽつりと口を開いた。


「……私ね。本当は、気づいてたんだ」


「何にじゃ?」


「セイが、五百年前の勇者じゃないかってこと……それに、元の世界に帰れるかもしれないってことも……」


「そうか……いつから気づいておった?」


 リアナはふいに足を止めた。


「あの……ダルセナって人に会ったとき……でもね……セイが帰るって言い出すんじゃないかと思うと、怖くて……言えなかった」


 セイも足を止め、振り返る。

 リアナは、その目をまっすぐに見つめた。


「……ごめん」


「何を謝ることがある? ワシはそんなこと、全然気にせんし――おぬしらを置いて帰るわけなかろう。まあ、孫娘の芽衣と過ごす老後は、少し惜しい気もするが……」


 その言葉に、リアナは小さく息をつき、肩の力を抜いた。


「ふふっ。セイって、中身は本当におじいちゃんなのね」


 そう言って、リアナは夜空に視線を向ける。

 きらめく星々を見上げながら、少しだけ頬を緩めた。


「でも、ありがと」


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】47

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:好き(セイがいなくなるのは絶対嫌)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。セイが元の世界に帰ってしまうかもと気が気じゃない

 - 補足:ミミさん特別マッサージは、リアナ、エリシアにも好評である


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:大好き(ずっと言えなかったことを伝えた)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てを装備。セイが元の世界に帰ってしまうかもと気が気じゃない

 - 補足:ミミやエリシアみたいに、自分も何かアピールするか迷ってたらしい


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:けっこう高め(ご奉仕したい)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。セイが元の世界に帰ってしまうかもと気が気じゃない

 - 補足:エリシアは過去教会での経験からご奉仕は得意

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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