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第91話 手のぬくもり

 ゆっくりと、リアナは目を開けた。


 最初に映ったのは、見慣れない白い天井。

 鼻先をくすぐるのは、かすかな薬草と清潔な布の匂いだった。


(……ここは……)


 体を動かそうとして、びくりと肩が震える。

 全身が鉛のように重く、あちこちが鈍く痛んだ。


 視線だけを横に向ける。


 そこには、椅子に腰かけたまま眠っているセイの姿があった。

 腕を組み、少し頭を垂れたまま、静かな寝息を立てている。


(……セイ……)


 その姿を見た瞬間、胸の中で張り詰めていたものがふっと緩んだ。


 ――ちゃんと、戻ってこられた。


 そう思った途端、今まで押さえ込んでいた疲労が一気に押し寄せる。

 喉の奥が熱くなり、視界がじんわりと滲んだ。


 リアナが布団の上でそっと指を動かす。


 そのわずかな気配に、セイの眉がぴくりと動いた。

 次の瞬間、はっと目を開き、勢いよく顔を上げる。


「……リアナ?」


 焦りを隠しきれない声。


 リアナはかすかに笑ってみせた。


「……おはよう、セイ」


 その一言で、セイは大きく息を吐き、椅子から立ち上がる。


「……無事で、よかった……本当に……」


 絞り出すような声。


 リアナは目を逸らし、小さく呟いた。


「……心配、かけちゃった……かな?」


「当たり前じゃ。あんな無茶をして……」


 言葉を途中で飲み込み、セイは乱暴な手つきで自分の額を押さえる。


「まあ……生きて戻ってこれた。それで十分じゃ」


 胸の奥がじんわりと温かくなる。

 気づけば、頬を涙が伝っていた。


「あの時……本当はね、すごく怖かった」


「ああ」


「先に帰っててって言ったけど……本当は、置いていってほしくなかったんだ」


「あたりまえじゃ」


「でも……もし置いて行かれても、セイなら絶対迎えに来てくれるって……信じてた」


「そもそも置いていくわけがなかろう」


「……いつも憎まれ口ばっかりなのに?」


「ふん。あれを憎まれ口だと思っとるのは、おぬしだけじゃ」


「……そっか」


 胸の奥が、また温かくなる。

 リアナは安心したように、そっと目を閉じた。


「……ありがとう、セイ」


「やけに素直じゃのう。熱でもあるんと違うか?」


 そう言いながら、セイはリアナの額に手を伸ばす。


 その手が触れるより先に、リアナが指先を絡めた。


「……少し……少しだけ、繋いでていい?」


 弱々しい力で、逃がさないように。


「お、おう……構わんが」


 セイの手が一瞬固まり、それからゆっくりと力を返す。


 リアナはその温もりを確かめるように、指を握り直した。


「……すごく、安心する……」


「……そうか」


 短い返事。

 けれど、手は離れない。


 リアナはそっと、セイの手を胸元に引き寄せる。

 触れた指先から、自分の心臓の鼓動が伝わっていく。


「……こうすると、セイにここにいるよって、ちゃんと伝えられる気がするの」


「……まったく、リアナがおることくらい分かっとるわい」


 呆れたように言いながら、セイは小さく息をついた。


 リアナは、少しだけ躊躇ってから口を開く。


「セイ……私ね、セイのこと……」


 言葉の続きを探すように、そっと顔を近づける。

 視線が絡み、吐息が触れるほどの距離。


 その瞬間――


「あー、リアナちゃん、起きたんだっ!」


 ばたん、と扉が勢いよく開き、場違いなほど明るい声が部屋に響いた。


「っ――!」


 リアナは一瞬固まり、次の瞬間、布団を引き寄せて頭まで潜り込む。


 布団の中から、かすかな声。


「……み、ミミさん……今の……見てました……?」


「み、見てない! 今の見てないからねっ!

 リアナちゃんがセイにキスしようとしてたとこなんて絶対見てない!」


 慌てて両手をぶんぶん振るミミ。


「見てるじゃん!」


 布団の中から、即座にツッコミが飛んだ。


 リアナは顔を真っ赤にしたまま、布団の端から目だけを覗かせる。


「ち、違うから……! あれは、その……手を、握ってただけで……! ねえ、セイ?」


「お、おう……そうじゃな」


 セイも咳払いをして、視線を逸らす。


「リアナの容体を確認しとっただけじゃ」


「えー? 容体確認って、あんなに近くで顔を見る必要あるの?」


 ミミは首を傾げた。


「あります!」


 リアナが間髪入れずに即答する。


「ふーん……?」


 ミミは疑わしそうな目を二人に向けてから、ぱっと表情を明るくした。


「じゃあさ、私がセイにキスして、元気かどうか確かめてもいい?」


 その言葉に被せるように、リアナの声が弾けた。


「それはダメ!」


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】47

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:好き(セイとリアナがいい雰囲気になってたのが気がかりでしょうがない)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。見た目は元気

 - 補足:本当は、リアナとセイのやり取りを扉の外で見守っていた。最後だけ我慢できなかったみたい


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:大好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:なんか白っぽい寝巻のようなものを装備。出血多量でまだ体は動かない

 - 補足:目覚めたときにセイが隣にいたことが嬉しかった


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:けっこう高め

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。休養中

 - 補足:覚醒のチカラは他にもなにか色々ありそう

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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