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第90話 廃都の戦い

 世界のどこか――廃都エルディア。


 セイたちは転がり込むように街門をくぐり、そのまま街の中へ駆け込んだ。

 その切迫した様子に気づいたラグスが、顔色を変えて駆け寄る。


「どうしたんですか、みなさん……?」


 まだ呼吸も整わないまま、セイが答える。


「帰る方法が分かった。すまんが、巡礼者を全員集めてくれんか?」

 

「……全員、ですか?」


 ラグスは一瞬言葉に詰まる。


「それには少し時間が――」


「いや、時間がない。ここへ魔物が向かってきておるかもしれん」


「えっ……それは……」


 短い沈黙の後、ラグスは覚悟を決めたように頷いた。


「……分かりました。では、街中央の広場を集合場所にしましょう。街中へ連絡できる放送装置があります」


「街内連絡か……」


 セイは苦々しく呟く。


「敵に居場所を知らせるようなものじゃが……背に腹は代えられん。頼む」


「お任せください」


 言うが早く、ラグスは中央広場へ向かって走り去った。


 間もなく、街中に緊迫した声が鳴り響く。


『――緊急連絡です。ベランドへ戻る方法が判明しました。

 現在この街に滞在している巡礼者の方は、至急、中央広場へお集まりください。

 繰り返します。これは緊急連絡です――』


 ミミが不安そうに辺りを見回した。


「これで……みんな集まってくれるかな……」


「……敵は、待ってくれそうにないわね」


 空を見上げたリアナが唇を噛む。


「今の放送で、追っ手の進路が変わったみたい。祠じゃなくて、こっちへ――」


「……頼む。早く、集まってくれ」


 セイは祈るように呟いた。



 ほどなくして、巡礼者たちが次々と広場へ集まってきた。

 不安と戸惑いに満ちたざわめきの中、ラグスも戻ってくる。


「……全員集まりました。フェインを除いて」


 セイは眉をひそめた。


「フェイン? どこにおるんじゃ。もう待っておれんぞ」


「警備で街を巡回していまして……放送は聞いているはずです。すぐ戻ると思うのですが……」


 集まった人数は十五名ほど。

 神父から聞いていた人数とほぼ一致していた。


 その時、リアナが低く告げる。


「セイ……タイムアップよ」


 空気が重く沈んだ。


 甘く絡みつくような声が空から降ってくる。


「あら……リフィアが断末魔を上げたからどんな相手かと思えば、脆弱な人間ばかりじゃない」


 セイは歯噛みしながら空を見上げた。


「くそっ……間に合わんかったか……」


「お姉さま……ここは私が――」


「なに言ってるのお姉ちゃん。次は私が遊ぶ番だって約束したじゃない?」


 聞き覚えのある声。


 肌にまとわりつく、蜜のように濃密な香り。


 蜂を思わせる翅を持つ三体の人型魔物が、羽音を響かせながらゆっくりと降り立つ。


「……蜜閃の――」


 セイの呟きを継ぐように、三体が並んだ。


「我らは、蜜閃三姉妹……」


 長姉ヴェリカが一歩進み、セイの顔を覗き込む。


「……ふうん。お前、どこかで見た顔だな」


 三女ティアナが小さく息を呑み、視線をリアナへ向けた。


「ひっ……あの赤髪のポニーテール……」


 その言葉と同時だった。

 次女リゼラの翅が鋭く震える。空気を切り裂き、一直線にリアナへと飛びかかる。

 

「――っ!」


 リアナは半歩前へ出て剣を構え、真正面から迎え撃つ。


「あなたには……借りがあったわね」


「知らないわよ! あなたに貸しを作った覚えなんて、ない!」


 刃を打ち合わせながら、リアナが叫ぶ。


「あなたが覚えていなくても、こちらにはあるの。……よくも妹を!」


 打撃の応酬。剣と爪がぶつかり、火花と金属音が交差する。


 リアナは懸命に剣で防ぐが、翅から放たれる鋭い風の刃までは捌けない。

 肩、脇腹、太腿――致命傷こそ免れているものの、掠めるたびに服と肌が裂かれていく。


「何よ! 妹、生きてるじゃない!」


 リゼラは翅を震わせ、冷ややかに言い放つ。


「でもティアナは、あの後ずっと苦しんだわ」


「そもそも、あなたたちが先に襲ってきたんじゃないっ!」


 踏み込んだ瞬間、右脚に鋭い痛みが走った。

 視界がぐらりと揺れる。


「……っ」


「その程度?」


 見下すような声。リゼラは距離を詰めることもせず、余裕の表情で翅を鳴らす。


 そこへ、息も絶え絶えにフェインが駆け込んできた。


「すまない。こんな時に限って街の見回りなんかを……」


 ミミが慌てて両手を広げる。


「みんなを守るよ……《防御結界》、ぽんっ!」


 淡い光の膜が巡礼者たちを包み込んだ。


 セイが声を張る。


「リアナ! 全員そろった! もうええ、こっちへ来い!」


 リアナは剣を構えたまま首を振る。


「大丈夫……私が押さえとくから、みんなで先に帰ってて」


 わずかに振り返り、無理に笑って見せる。


「ねえ、セイ……後で必ず迎えに来てよね?」


「何言っとるんじゃリアナ! はよう来い!」


 その声を嘲笑うように、前方で翅音が重なった。


「何を企んでいるか知らないけれど、逃がすわけないでしょう」


「ねえ、お姉ちゃん。私がやっちゃっていいよね?」


 ヴェリカとティアナが標的を定めるように視線を向けた――その瞬間。


「《ウォール》」


 エリシアの柔らかな詠唱とともに、轟音を立てて水の壁がそびえ立つ。

 蜜閃三姉妹とリアナ、そしてセイたちの間を強引に引き裂いた。


「っ……!」


 不意の遮断に、リゼラが思わず一歩下がる。


「リアナ、今じゃ! こっちへ来て、ワシの手を取れ!」


 その声を受け、リアナは振り返り、セイのもとへ駆け出した。


「逃がさない。今度こそ逃がさない」


 リゼラの声に迷いはなかった。


「邪魔な壁だわ」


 ヴェリカとティアナが同時に翅を震わせ、無数の風の刃で水の壁を切り裂く。水飛沫が散り、壁はみるみる崩れていく。


 リアナは歯を食いしばり、前だけを見て走り続けた。

 一歩ごとに傷口が開き、血が地面に赤い線を引く。


「セイっ」


「リアナ、手を取れ!」


 けたたましい翅音。ヴェリカ、ティアナ、リゼラが一直線に迫ってくる。


 鋭い爪が、リアナの背を裂いた――そう思えた瞬間。


 リアナの指先が、セイの指先に触れた。


「《空間転移》」


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】47(+2)

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。巡礼者を守る結界を展開し、魔力はさらに枯渇気味

 - 補足:恐怖に負けず健気に多くの巡礼者たちを守り抜く


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てを装備。流した血は多く身体が思うように動かない

 - 補足:ティアナの件で深い恨みを持つリゼラ相手に、満身創痍


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:けっこう高め

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。水の防壁を使って魔力を使い果たす

 - 補足:戦況を一時的に遮断する見事なサポート

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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