表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
88/95

第87話 見たことある景色

大森林の中にある町べランド――その教会。


 事情を聞き終えた神父は、小さく息を吐き、静かに頷いた。


「……なるほど。それでしたら、神殿へ向かう道中に、水の精霊を祀る祠がございます」


 その言葉に、一行の視線が集まる。


「巡礼者の方々の中でも、とりわけ水に恵まれない地方から来られた者たちは、神殿へ向かう前に必ずその祠へ立ち寄るのだと聞いております。旅の無事と、水の加護を願うための場所だそうです」


「……何たる不覚」


 セイは深く息を吐き、腕を組んだ。


「それを先に聞いておれば、無駄な遠回りはせずに済んだものを。まったく、ワシもまだまだ抜けておるのう」


 すぐに神父へ向き直る。


「神父よ。その祠の場所は分かるか?」


「はい。べランドと神殿の、ちょうど中ほどにあたります。神殿への道標が立っている場所があるのですが、その近くに、よく見れば獣道のような細い小道がありまして、そこを少し進むと祠があるはずです」


「そんな道、あったかのう?」


 セイは首を傾げる。記憶の中をざっと探ってみたが、それらしい小道の気配はなかった。


「獣道ですので」


 神父は苦笑した。


「巡礼者が多かった頃は、人々が踏みしめて自然と道になっていたそうですが……今では、おそらく草に隠れているでしょう」


「……なるほどのう。了解した」


 短くそう答え、セイは立ち上がる。


「今日はもう遅い。今夜は宿を取るとしよう。明日の朝、改めてその場所を見に行く」


 教会をあとにした一行は、べランドで宿を取り、ひと晩を過ごした。


 ◇


 翌朝。


 澄んだ空気の中、森は朝露を含み、しっとりと静まり返っていた。

 神殿へ向かう道を進む一行の頭上では、今日も小さな影が行き交っている。


「……今日もリトルデーモンの監視は健在じゃな」


 枝葉の隙間を縫って飛ぶ気配を感じ取り、セイが低く呟いた。


「まあ、これならアルマに勝手に報告してくれるから楽じゃわい」


 やがて、一行は道標の立つ場所へと辿り着く。

 そこから先は、今は人の通らぬ森の奥。踏み分けられた形跡はほとんどなく、伸び放題の草と絡み合う枝が行く手を塞いでいた。


「よし。行くぞ」


 迷いなく言うセイに、ミミが思わず声を上げる。


「えっ、ちょっと待って! ここ道なんてないじゃん! ていうかこれ、入っていいやつ?」


「……確かに、これはちょっと、勇気がいるわね」


 リアナも思わず周囲を見回した。

 足元の草は膝丈まで伸び、絡み合う枝はまるで侵入者を拒むかのように密集している。


「ええい。ワシが先頭で道を作るから、おぬしらはついてくればええ。大事なもんは身体の前に庇っとけよ」


 そう言うが早いか、セイは草を踏みしめ、枝を払いながら森へと踏み込んでいく。

 湿った草が足元に絡みつき、細い枝が腕や肩をかすめた。


「うぅ……草がびちゃびちゃするし枝が当たるし……もうへとへとだよ……」


 少し進んだところで、ミミが肩を落としてぼやいた。

 朝から元気に騒いでいたわりに、消耗が顔に出るのが早い。


「ここまで来ても……祠らしいものは見当たりませんね」


 リアナは周囲を見渡し、小さく首を傾げる。


「……皆さん、少し待ってください」


 エリシアが静かに足を止め、一歩だけ前へ出た。視線を細め、ある一点を見つめている。


「あそこの空間――不自然です。よく観察すると、わずかに歪んでいます。草木の輪郭が、そこだけ噛み合っていない」


 示された先には、確かに何かがあった。背景と馴染まない揺らぎ。

 焦点を合わせようとすると、するりと逃げていく。


「なるほどのう……」


 セイは目を細めた。言われてみれば分かる。だが言われなければ、おそらく素通りしていた。


「ここが、本来祠があった場所というわけじゃな」


「じゃあ、あそこに入ったら、どこかに飛ばされるってこと?」


 ミミが興味深そうに身を乗り出す。疲労はどこへやら、目がきらきらしていた。


「はい。転移魔法に近いものだと思います」


 エリシアが静かに答える。


「……私、転移魔法って知識としては知っていますが、見たことなくて……。正直、少し怖いです」


 リアナはそう言って、胸の前で手を軽く握りしめた。

 声は落ち着いているが、指先が微かに白くなっている。


「わたしもー! でも、なんか……すっごくわくわくする!」


 ミミはそう言いながらも、もう半歩前に出ていた。


「では、行ってみるかの?」


 セイが一歩、歪みへと足を踏み出しながら、振り返る。


「どこへ飛ばされるかは……お楽しみじゃ」


 次の瞬間、視界が引き延ばされるように歪んだ。足元の感覚が消え、重さも方向も失われ、身体が空間に溶け込んでいく。


 ――そして。


 再び目を開けたとき、セイは草原の真ん中に立っていた。


 どこまでも続く緑の大地。穏やかな風が草を揺らし、遠くには水辺がきらめいている。そのさらに奥、小高い丘の上には、城のような建物の影が見えた。


 少し遅れて、リアナ、エリシア、ミミが姿を現す。


 背後を振り返ると――

 草原の一角に、周囲から切り離されたかのように、水の精霊を祀る祠がぽつんと建っていた。


「……どこじゃ、ここは?」


 セイは眉をひそめ、改めて周囲を見渡した。


「平和そうな風景だけど……静かすぎて、なんだか不安になるわ」


 背後から、リアナが小さく続ける。


「うん。でも――なんだか、ここ……見たことある気がする」


 ミミは首を傾げながら、草原の先へと視線を巡らせた。


 一行がその風景に見入っていると――

 ざくり、と草を踏みしめる足音が、静かな草原に響いた。


 反射的に身構えた一行の前に、人影が現れる。旅装に身を包んだ男が二人。こちらを警戒しながらも、声をかけてきた。


「巡礼者の方ですか?」


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】41

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。草や枝に散々絡まれて少し疲労

 - 補足:転移されるのってどんなんだろうとワクワクしていた


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てを装備。転移されるのが怖すぎて精神的な疲労が目立つ

 - 補足:いざ転移されてみると、意外と平気だったしちょっと楽しかった


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:けっこう高め

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。体調・集中力ともに万全

 - 補足:はしゃぎこそしなかったが、初めての転移にドキドキしてた

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ