第86話 廃都への道
シルヴェリオン地方大森林の中――べランドへの帰路。
木々の隙間から差し込む陽光が、地面に柔らかな木漏れ日の模様を描いている。
穏やかな空気の中、一行は並んで森の道を歩いていた。
「歴史上、悪魔が持つ能力として記録されているものは三つあります」
エリシアはそう前置きすると、指を折りながら説明を始めた。
「人の寿命を奪い、また与える力。
記憶を奪い、また与える力。
そして、感覚を奪い、また与える力です」
「どれも恐ろしい力じゃが……やはりアルマの“寿命を奪い与える力”は、ひときわ異質に感じるのう」
「はい。アルマは“死神”と呼ばれていますが、教典にはこうも記されています」
エリシアは記憶を辿るように続けた。
「致命傷となる怪我や死に至る病を負っていたとしても、寿命を与えられた者は、その寿命を成立させるために――怪我や病そのものが消えていく、と」
セイは感心したように息を吐いた。
「まさに奇跡の力じゃ。アルマが神として崇められるのも無理はあるまい」
だが、エリシアはわずかに表情を引き締めた。
「ただし、これらはあくまで教典や歴史に記録されている範囲の話です」
「ふむ? というと?」
「私たちが知らない力が存在する可能性もあります。あるいは、これから生まれる悪魔が、まったく新しい能力を持っているかもしれません」
「確かにのう」
セイは顎に手を当てる。
だが、すぐに肩をすくめて笑った。
「とはいえ、分からんことを今から考えても仕方あるまい。まあ、その時はその時じゃ」
「ふふふ、そうですね。セイさんらしいです」
そんな話をしているうちに、森の先が開け、べランドの街並みが見えてきた。
「あれ?」
ミミが周囲を見回しながら首を傾げる。
「結局、失踪の手がかりは見つからなかったね?」
「うむ。どうするかのう」
セイは辺りを見渡した。
「そもそも、賢者のカケラの痕跡すら見当たらん」
「あっ、そうだ!」
ミミがぽんと手を打つ。
「大精霊様に聞こうって話、忘れてた! 大精霊様に聞いてみようよ!」
「そうですね。すっかり忘れていました」
リアナも少し照れたように頷く。
「じゃあ、この精霊石で」
ミミは襟元に挟んでいた精霊石を取り出した。
「で、これ……どうすればいいんですか?」
リアナが首を傾げる。
「とりあえず掲げてみればいいんじゃない?」
ミミに言われ、二人は精霊石をそっと掲げた。
すると、ミミとリアナの身体から淡い光が溢れ出す。
光はゆっくりと頭上へ昇り、重なり合いながら無数の粒子へと姿を変えた。
やがて粒子は集まり、二つの小さな人影を形作る。
「やあ。水の精霊は……その様子だと、まだ見つかってないみたいだね」
穏やかな声でそう告げたのは、大地の精霊ミュルだった。
「そうなんです。だから、もう一度大精霊様の力をお借りしたくて……」
リアナが一歩前へ出る。
「いいよ! じゃあ、ちょっと待っててね」
ミュルはそう言うと、光の精霊リュアのもとへふわふわと近づき、その手を取った。
二人はそのまま静かに意識を集中させる。
「うーん……」
しばらくして、ミュルが目を細めた。
「間違いなく近くから感じるんだけど、ここにはないみたいだ」
「もう誰かに見つけられている……ということでしょうか?」
エリシアが尋ねる。
「しかし、近くに感じるんじゃろう? 話が見えんのう」
セイは腕を組んだ。
「賢者のカケラは本来、強い力でその場から動かすことはできません」
リュアが静かに口を開く。
「つまり……どういうことですか?」
リアナが首を傾げた。
「たぶん、場所ごとどこかへ転移させられているんだと思う」
リュアは言葉を選びながら続ける。
「ただ、カケラの強い力が元の場所に留まろうとするせいで、転移先とここを繋ぐ歪み――空間の穴が生まれているんじゃないかな」
「だからボクたちは力を感じるけど、この場所には存在しないってわけだね」
ミュルが補足した。
「なるほどのう……」
セイはゆっくり頷く。
「では、水の大精霊に会うには、ワシらもその先へ行く必要があるということじゃな」
「うん。そういうこと」
ミュルとリュアが声を揃えた。
「それって……」
ミミが一歩前に出る。
「もしかして、巡礼者の人たちがその穴に入っちゃって、戻れなくなってる……とかない?」
「さすがミミさん! きっとそれです!」
リアナが勢いよく頷いた。
「ミミにしては鋭いのう」
感心したように言うセイに、ミミは頬をぷっと膨らませる。
そして、じっとセイを睨みつけた。
「では……その“感じる場所”は、どの辺りなのでしょうか?」
エリシアが尋ねると、ミュルは軽く首を傾げた。
「方角で言うなら、ここから北だね」
「やはり……アルマ様の神殿の方向と考えて間違いなさそうですね」
エリシアは小さく頷く。
ミュルはさらに続けた。
「距離はそれほど遠くないよ。でも、その場所そのものが無くなっているはずだから、見つけるのは大変かもね」
「うむ……まあ、探すしかなかろう」
セイの言葉に、リアナとミミは顔を見合わせ、揃って力強く頷いた。
「大精霊よ。あと聞きたいことがもう一つあるんじゃが――」
しかし、その言葉を遮るようにミュルが口を開く。
「おっと、ごめんごめん。眠くなってきちゃったから、また今度ね。
勇者セイ。君が聞きたいことは、シュナが教えてくれるはずだよ……」
そう言い残し、ミュルとリュアの姿は淡い光となってほどけていく。
光はゆっくりとミミとリアナの胸元へ戻り、精霊石は静かに輝きを収めた。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】41
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。森の中をずっと歩いて少しお疲れ気味
- 補足:セイの「ミミにしては鋭い」という言葉に頬を膨らませる
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。森の中をずっと歩いて(適度な運動で)体も軽い
- 補足:何だかんだでミミの意見に寄せられてしまうクセは直っていない
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:けっこう高め(その時はその時の言葉に少し気が楽になる)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。森の中をずっと歩いて気分転換
- 補足:悪魔ってやっぱり怖いけど、みんなといれば大丈夫そうと思えた
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