第82話 いざべランドへ
「……行く先は、間違ってなかったね!」
最初に声を上げたのはミミだった。
ぱっと表情を明るくし、周囲をぐるりと見渡す。
「やっぱり、あなたの勇者パワーは本物だったわね」
リアナがそう言って両手をひらひらと振ると、セイは照れ隠しのように肩をすくめた。
「次の目的地が、今回の旅の終着点ですね……」
場を整えるように、エリシアが静かな声で続ける。
「大森林の中にある町、べランド。まずは依頼になっている巡礼者の行方を調べないといけません」
「うん。でもさ」
ミミは首を傾げた。
「賢者の石が何でできているのかって話、かなり意味深だったよね?」
「私も、そこは気になりました」
エリシアがうなずくと、リアナが冗談めかして言う。
「ひょっとして……生贄を捧げないといけない、とか?」
「おいおい」
セイはすぐに眉をひそめた。
「ワシの元の世界では、そういう話もあったから冗談でも笑えん。やめてくれ」
(まあ、アニメの話じゃが……)
「あっ、ごめん……」
リアナが素直に謝る。
少し重くなりかけた空気を変えるように、ミミがぽんと手を叩いた。
「あ、そうだ。大精霊様がセイに会ったことがあるみたいな感じだったのも聞きそびれたよね」
そして、いたずらっぽく笑う。
「もらった精霊石で、もう一回呼び出しちゃう?」
「それは待ちなさい!」
即座にリアナが止めた。
「何度も呼び出して、いざという時に来てもらえなくなったら困るでしょう? 次はべランドに着いてからにしましょう」
「それもそうだね」
ミミが納得すると、セイもうなずく。
「今日はここまでじゃな。明日に備えてしっかり休もう」
こうして話はまとまり、一行はそれぞれの部屋へ戻っていった。
◇
翌朝。
ランベルクを発った一行は、町外れに設けられた大きな門の前へ到着した。
門番は彼らを見るなり、少し意外そうに眉を上げる。
「巡礼か? 最近じゃあまり見かけないな」
「まあ、そんなところじゃ。べランドにも用事があっての」
セイの返答に、門番は一行の顔ぶれを見回した。
「……見たところ、初めてだな?」
「するどいのう。その通りじゃ」
門番は小さくうなずき、森へ視線を向ける。
「《命の神アルマ様》は、この森を千年以上見守ってきたお方だ。くれぐれも無礼のないようにな」
「神なのに……実在しておるのか?」
「まあ、お会いになれば分かる」
それ以上は語らず、門番は重い門を開いた。
低い音とともに、大森林へ続く道が姿を現す。
一行は馬車に乗り込み、その道へと進んでいった。
◇
しばらくは、両脇を高い木々に囲まれた道が続いた。
地面はしっかりと踏み固められており、馬車が行き交うには十分な幅がある。
「大森林の中と聞いて身構えておったが、道自体は整備されとるな」
「ええ。ただ……人の気配はほとんどありませんね」
エリシアは周囲を見回し、森の奥へ視線を向ける。
「ここまで静かだと、逆に落ち着かないわね。なんだか、見られてる感じがしない?」
リアナが警戒するように視線を巡らせた。
やがて森はさらに深くなり、木々の隙間から差し込む光も少なくなっていった。
「キキキッ……臭うね。臭うね」
「クククッ……臭い。聖女の匂いだ」
「いい匂いがするのも、いるね」
「報告しなきゃ……報告しなきゃ……」
森の奥から、耳障りな声が響く。
しかし周囲を見回しても、その姿は見当たらない。
「……なんじゃ、今の声は」
セイが眉をひそめる。
「雰囲気からして、リトルデーモンですね。誰かの使い魔といったところでしょうか」
エリシアも警戒するように森の奥へ視線を向けた。
「んっ? 二人ともどうしたの?」
リアナが不思議そうに振り返る。
「何かあったの?」
ミミも首を傾げる。
「おぬしたち……先ほどの声、聞こえておらんのか?」
「声? 特に何も聞こえなかったけど……風の音以外は」
「……そうか」
セイは短く息を吐いた。
「まあよい。この森、やはり何かありそうじゃな」
エリシアも同意するように小さくうなずいた。
◇
その後も馬車を走らせたが、べランドへはたどり着けなかった。
森の中は日暮れが早く、気付けば周囲は薄暗くなり始めている。
「うむぅ……まさか一日で着かんとはのう」
「途中に野営跡がいくつもあったものね」
リアナが周囲を見回す。
「あとどのくらいなの?」
ミミの問いに、セイは顎へ手を当てた。
「そろそろ着いてもおかしくない距離なんじゃがなあ。ただ、この暗さでは無理に進まんほうがよかろう」
「じゃあ、今日は野宿かぁ……」
ミミが肩を落とす。
「しかたあるまい。ちょうどよい場所もあるし、ここでテントを張って休むとしよう」
「……やっぱり、そうなるのね。でも、この前みたいな怖い話は絶対にやだからね!」
この前の怪談が相当こたえたリアナが釘をさす。
「まだ引きずっとったのか」
「当たり前でしょ!」
そんなやり取りを交わしながら、一行は野営の準備を始めた。
◇
焚き火を囲み、夕食を終えた頃。
ぱちぱちと薪が弾ける音だけが静かな森に響いていた。
「そういえばエリシア。《命の神アルマ様》について何か知っておるか?」
セイの問いに、エリシアは少し考え込む。
「名前は聞いたことがあります。ただ詳しいことまでは……。ですが、千年以上この森を見守っている存在という話が本当なら、エルフか魔族の可能性が高いかと」
「魔族?」
リアナが目を丸くした。
「でも、神として祀られてるんでしょ? それなら魔族ってことはないんじゃないですか?」
「……そうだと、いいのですが」
エリシアは断定せず、小さく息を吐いた。
短い沈黙のあと、エリシアは視線を焚き火から外し、ミミのほうを見る。
「ところで、ミミさん」
「ん?」
「……以前の記憶は、まだ戻っていませんか?」
唐突な問いに、ミミは一瞬きょとんとしたものの、すぐにうなずいた。
「うん。まだなんだ」
そう言ってから、少し嬉しそうに続ける。
「でもね。セイには言ったんだけど……。小さいころ、お城が見えるお家に住んでたことは思い出せたよ」
「ちなみに、その城は王都アストリオではなかったようじゃ」
セイが補足する。
「あっ……それとね。そのとき、一緒に遊んでた女の子がいたの。その子が、私のこと“ミミ”って呼んでくれてた……それも、思い出した」
「なるほど。でもお城のある場所なんて、そう多くないですよね?」
リアナが腕を組む。
「まさか、大陸の外とか……」
「どうじゃろうのう」
セイは軽く肩をすくめる。
「まあミミ。前にも言ったが、焦らんでええ。旅をしながら、ゆっくり思い出せばよい」
「……そうですね。また何か思い出したら、教えてくださいね」
エリシアも穏やかに微笑んだ。
「うん!」
やがて焚き火も小さくなり始める。
「……ねえ。怖い話になる前に、もう寝よう?」
リアナの一言に全員が賛成し、それぞれ寝袋へ潜り込んだ。
森の夜は驚くほど静かだった。
聞こえるのは焚き火の残り火がはぜる音だけ。
不穏な気配を残したまま、一行は静かな夜を過ごした。
◇
翌朝。
一行は再び馬車を走らせる。やがて木々の隙間から陽が差し込む昼時、森の奥がふっと開けた。
深い緑に抱かれるようにして佇む町――べランド。
目的地は、ようやくその姿を現した。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】41
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。一日中、馬車に揺られてお尻痛い
- 補足:本当は怪談大会したかったらしい
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(勇者パワーは本物だと実感)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。一日中、馬車に揺られてお尻痛い
- 補足:賢者の石の生成方法の件で、セイに怒られて少しショック
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。日中、馬車に揺られてお尻痛い
- 補足:ミミの過去が少し気になっているみたい
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