第81話 ミュルとリュア
そして夜。
宿の部屋に戻ってひと息ついたあと、セイは椅子から立ち上がった。
「よし。大精霊を呼び出して聞いてみるとするか」
そう言って軽く肩を回す。
「……そういえば、セイ」
リアナがふと思い出したように口を開いた。
「この前、大地の大精霊様を呼び出したとき……最後に『次はほかの大精霊も一緒に呼んでくれたら嬉しい』って言っていなかった?」
「……おお、そうじゃったな」
セイは短くうなずくと、ミミとリアナの前に立った。
意識を集中し、両手をそっとふたりへ向けてかざす。
「――スキル《精霊感応》」
次の瞬間、ミミとリアナの身体から淡い光がじわりと滲み出した。
光はゆっくりと立ちのぼり、頭上で溶け合うように寄り添いながら、やがて柔らかな光の塊となる。
ほどなくして、それは二つの小さな人影を形作った。
ミミの頭上には、彼女をそのまま縮小したような愛らしい姿――大地の大精霊。
リアナの頭上には、幼い少女のようでありながら勇ましい戦士の気高さを纏う姿――光の大精霊。
そして大地の大精霊は、今回も心地よさそうに目を閉じたまま、すやすやと寝息を立てていた。
「……また寝ておるのか」
セイは額を押さえ、小さくため息をつく。
「姿かたちがミミなら、性格までミミそっくりとはのう」
「ちょっとそれ、どういう意味!?」
ミミがむっと頬を膨らませる。
そのやり取りをよそに、もう一方の光の大精霊が控えめに口を開いた。
「……お、おひさしぶりです。みなさん」
「きゃ、かわいい……」
ミミが目を輝かせる。
「リアナちゃんの子どもの頃って、こんな感じだったのかな?」
なぜか隣で、エリシアまで「ええ……」と小さくうなずいている。
光の大精霊は少し困ったように微笑み、視線をもう一方へ向けた。
「あれ……そちらは大地の精霊ですね。もしかして……一緒に呼び出してくれたのですか?」
「ああ」
セイは軽くうなずく。
「前に大地の大精霊を単独で呼び出したときな。ほかの精霊と一緒なら嬉しい、と言っておっての」
「なるほどです。でも……その割には、完全に寝ていますね」
そのやり取りをよそに、リアナは大地の大精霊の寝顔を見つめながら頬をわずかに赤らめた。
そっと近づき、小さな身体をやさしく両手で抱き寄せる。そして思わず、その額に軽く口づけした。
「ちょっと、リアナちゃん?」
「あっ……すみません。あまりにも可愛らしかったもので、つい……」
照れ隠しのように視線を泳がせるリアナを、ミミがじっとジト目で睨む。
「……今のリアナちゃん、ちょっとお顔がいやらしかったよ?」
「い、いやっ……そんなはず……っ」
リアナが慌てて言い訳した、そのときだった。
「ふぁ……」
小さな欠伸とともに、大地の大精霊がゆっくりと目を開ける。
「……んぁ。なんだか、さわがしいなあ」
「あっ、起きた!」
「おお、起こしてすまんの。また聞きたいことがあってな」
セイが軽く頭を下げる。
「おはようございます、ミュル」
光の大精霊がやわらかな声で呼びかけた。
「リュア、久しぶりだね」
ミュルはとろりと目を細め、嬉しそうににっこりと笑う。
そしてセイへ視線を向け、満足げに胸を張った。
「ありがとう! この前のお願い、ちゃんと覚えててくれたんだね」
「もちろんじゃ。じゃが、早速で悪いが本題に入らせてもらおう」
「うん、いいよ。ボクたちも、あまり長くは起きていられないしね」
そう言いながら、ミュルはふわりと宙を漂い、リュアの隣へ寄り添った。
「前回、最後の《賢者のカケラ》の行方は掴めぬと言っておったな。じゃが……おそらく今は、かなり近くまで来ておるはずなのじゃ」
セイの言葉に、ミュルとリュアは視線を交わした。
「そこで改めて、その最後のカケラがどこにあるのかを探ってもらいたくての」
「……なるほど。分かりました」
短くうなずくと、ミュルとリュアはそっと手を取り合った。
目を閉じるふたりの周囲に、空気がわずかに張りつめる。
一瞬の静寂のあと――ふたりを中心に、やわらかな光が溢れ出した。
それは眩しさを主張するものではなく、夜の水面に広がる波紋のような、静かで神秘的な輝きだった。
やがて光はすっと収まり、部屋には再び静寂が戻る。
「……分かったよ」
先に口を開いたのはミュルだった。
「確かにこの近くに最後のカケラは存在します」
続けてリュアが補足する。
「ここから北……大森林の中、べランド周辺かの?」
セイが頭の中で地図を思い浮かべながら問いかける。
「うん。そうだね。でも、なぜか位置を座標でとらえられないんだ。まあ、大森林の中にあることは間違いないだろうけどね」
そう言い終えると、ミュルはふっと表情を緩めた。
隣のリュアも同じように微笑み、ふたりは自然と顔を寄せて小声で何かを話し始める。内容までは聞き取れないが、どこか楽しげで、再会を喜ぶような温かい空気が漂っていた。
「うむ、助かった。ありがとう」
セイがそう礼を述べると、リアナが一歩前に出る。
「まあ、べランドに行って、まずは依頼を受けてみる。それが最後のカケラにつながってるのは間違いなさそうね」
エリシアも神妙な面持ちでそれに続いた。
「巡礼者の行方不明……原因が魔物なのか、それとも別の要因なのか。慎重に調べる必要がありそうです」
ミミは肩をすくめて、不敵に笑う。
「だったら、行って直接調べる! それが一番手っ取り早いよ!」
その前向きな言葉に応じるように、ミュルがくるりと宙を舞った。
「ボクたちもね。ミミとリアナのナカで過ごしているうちに、だいぶ体力が戻ってきたんだ」
リュアもそっとうなずく。
「ええ。少しの間なら、実体化して動けます。きっと、水の精霊シュナを探す手助けにもなれるはずです」
そう言って、ふたりはそれぞれの手のひらから、淡く発光する精霊石を生み出して差し出した。
受け取ったミミとリアナの手のひらに、ひんやりとした感触が伝わる。
「いざというときは、この石でボクたちを呼んでね」
ミュルはそこで不意に視線を移し、エリシアをまっすぐに見つめた。
「最後の水の宿り木――それを内に宿すのは……君だね?」
「っ……」
見透かされたような言葉に、エリシアは小さく息をのむ。
間髪入れず、今度はリュアがセイへと向き直った。
「ただし……わたしたち三精霊がそろったあと、本当に『賢者の石』を生み出せるかどうかは――すべて君次第です」
「……カケラを集めるだけでは足りん、ということか?」
セイの問いに、ミュルはどこか困ったように笑う。
「そうだね。君たちは、賢者の石が"何から"生成されるのかを、まだ知らないから」
「……どういうことじゃ?」
セイがさらに踏み込もうとした、その瞬間だった。
「おっと、ごめんごめん! 今回はここまで。水の精霊の居場所で困ったら、またいつでも呼んでよ」
ミュルがひらひらと手を振り、リュアも楽しそうに目を細める。
「続きは、そのときに……ね」
次の瞬間、ふたりの輪郭がふわりと揺らいだ。
名残惜しそうに明滅するやさしい光を残しながら――ミュルとリュアは、夜の空気へと溶け込むように姿を消した。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】41
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。大地の大精霊の精霊石を所持。
- 補足:光の大精霊が可愛くてしょうがない
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。光の大精霊の精霊石を所持
- 補足:大地の大精霊が可愛くてしょうがない。ミミの顔がいやらしかったという指摘はあながち間違いではない
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:かなり高(誕生日のお祝いが嬉しい)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。とにかく体力は万全
- 補足:実は可愛いもの大好き。大地の大精霊も光の大精霊も可愛くてしょうがない。というか精霊にも名前があったことに驚き
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